晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「ジャージー・ボーイズ」(13・米) 80点

2017-12-09 13:35:46 | (米国) 2010~15

・ 50~70年代カルチャーを映像化した84歳C・イーストウッドの豊かな感性。




60年代「シェリー」などのヒット曲で一世を風靡したポップス・グループ「ザ・フォーシーズンズ」。4人の栄光・挫折・再生をリード・ボーカルのフランキー・バリ(ジョン・ロイド・ヤング)を中心に描いた人間ドラマ。この年84歳の御大・クリント・イーストウッドがブロードウェイ・ミュージカルを題材に映画化している。

「シェリー」「君の瞳に恋してる」しか知らず、ミュージカル音痴でもある筆者にも、充分楽しめる万人向けの作りで、<人はどう生きるか?>というテーマであらゆるジャンルに触手を伸ばすイーストウッドの若々しい感性とその技量に感服した。

米国東部ニュージャージー州、イタリア移民の街育ちのトミーとニックは、ファルセット・ボイスのフランキーを入れ<スリー・ラバーズ>というバンドを結成。
その後シンガーソング・ライターのボブ・ゴーディオを誘い、地元マフィアのボスであるジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)が後見人となるが、なかなか芽が出ない。
プロデューサーのボブ・クルーに拾われるがバック・コーラスの仕事ばかり。 一念発起してシングルを自費出版したのが「シェリー」だった。

それからはトントン拍子でヒットを連発するが、御多分に漏れず仲間割れの危機も。最大の危機はリーダー・トミーの莫大な借金でデカルロの仲介も及ばない・・・。

イーストウッドは彼らの成長物語をヒット曲とともにテンポよく運び、ポップス満載の青春群像ドラマ化にしている。そのためミュージカルの映画化を期待していたファンには不評だったようで、本国での評判は今ひとつだったよう。
日本では筆者のような御大のファンも多く、この舞台をほとんど観ていない観客にとって「ドリーム・ガールズ」(シュープリームス)や「Rey レイ」(レイ・チャールズ)同様、「ザ・フォーシーズンズ」の音楽ドラマとして受け止められた感があり、ネガティヴな要素がなかったのでは?

わずかな行き違いからグループの解散という宿命は人気グループによくあること。借金を返済するためどんな仕事でも引き受けたフランキー。その代償は家族の崩壊、そして一人娘を失う悲劇へと進んで行く。

そんな時、ボブ・クルー作詞でボブ・ゴーディオが作曲したのが「君の瞳に恋してる」だった。ファルセットで歌わなかったフランキーの逆転ホームランとなる。

この曲で思い出す映画は「ディアハンター」。本作でボス役である若き日のC・ウォーケンがバーで歌うシーンが印象に残っている。

エンドロールで彼らの半生が振り返られ、全員が踊るカーテンコールで幕を閉じるのは爽やかさ満載だ。
映画は疑似体験という持論の筆者だが、84歳でこの感性にはとても及びそうもない。