晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「サクラ サク」(14・日)60点

2017-09-26 16:20:55 | 日本映画 2010~15(平成23~27)


・ 下諏訪・福井への旅は家族再生のロードムービー。




さだまさしの短編小説を小松江里子が脚色、「精霊流し」(03)、「利休にたずねよ」(13)の田中光敏が監督した家族再生へのロードムービー。

認知症のため日常生活に支障をきたし始めた父親・俊太郎と、家族を顧みず仕事に没頭していたエリートサラリーマンの息子・俊介とその家族は、いつしかバラバラになってしまっていた。

俊介は初めての家族旅行を思い立ち、長野・下諏訪への温泉旅行を実践する。渋々同行する妻・昭子とフリーターの息子・大介、高校生の娘・咲子の子供たち。
俊太郎はだんだんと記憶が途切れるようになっても、幼いころ福井で暮らした思い出だけは忘れていなかった。

一家は、70年前の父親の記憶を呼び戻すため福井へ足を延ばす。

仕事・家庭・老い・将来それぞれ内面に抱えている不安や葛藤を、長野県下諏訪、福井県福井・勝山・美浜への旅で、バラバラだった家族がまとまり理解・共有できるのだろうか?

今どき三世代同居家族は珍しいが、祖父の家に息子家族が同居する都会で暮らす裕福な一家に起こる問題は概ね想像できる。

俊介は仕事人間で、出世コースに邁進し、上司・部下との信頼関係も厚く取締役推薦が内定している。3年前単身赴任していた仙台で不倫して以来妻とはギクシャクした間柄。イイ人がお似合いの緒形直人が演じている。

昭子(南果歩)は、庭いじりが唯一の慰めで、夫との間だけではなく義父である俊太郎への対応も一線を画し、失禁・脱糞には夫へ電話するほどで一切関わらない。

俊太郎(藤竜也)は、自身の記憶が途切れることが多く、日記でその不安を書き記しているのが切ない。言葉遣いも丁寧でスーツをパリッと着こなす姿は紳士そのもの。そんな紳士が起こす非日常が痛ましい。ダンディな藤竜也が演じているので尚更だ。

家族旅行のキッカケは<人を褒めるには、その人のことを一所懸命見つめなければいけない>という俊太郎の言葉から。

リアリティはないが、下諏訪の秘湯、福井勝山の平泉寺・白山神社、瑞林寺など日本情緒豊かな背景に家族はこうありたいという願望が込められている。

エンディングに流れる、さだまさしの主題歌「残春」<若さを呪わず、老いを恨まず>という言葉が全編に流れる作品だった。