晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「ジュリエッタ」(15・米) 75点

2017-05-20 17:54:37 | (米国) 2010~15


  ・ エモーシャルな度合いは少なくなったが、アドモドバル節は健在。


    

 「オール・アバウト・マイ・マザー」(99)、「トーク・トゥ・ハー」(02)、「ボルベール<帰郷>」(06)・女性賛歌3部作でお馴染みのスペインの巨匠・ペドロ・アドモドバル。

 カナダのノーベル賞作家アリス・マンロー「ラナウェイ」の短編<チャンス><すぐに><沈黙>3篇をひとつのストーリーに脚色して、ある女性の贖罪を描いている。

 マドリードに住むジュリエッタは、偶然出会った娘の親友だったベアから12年前突然姿を消していた娘の消息を知らされる。

 それを知ったジュリエッタは恋人とのポルトガル行きを取り止め、娘には伝えていなかった夫・ジョアン(ダニエル・グラオ)との出逢いと別れについて、手紙形式の日記で書き綴って行く。

 ジュリエッタに扮したのは、艶やかな強烈な赤の衣装のエマ・スアエス(現在)と鮮烈な青の衣装のアドリアーナ・ウガルテ(過去)で二人一役。現在と過去が交錯するが、二人一役の不自然さは感じさせない。

 全体に抑制が効いた作風だが、愛とともに不安や嫉妬・悲しみや喪失感がついて回る展開はミステリアス。

 若いジュリアンは愛にひたむきで、自分の行為が他人を傷つけることに気づかなかった。それが愛する娘との離別を呼んだことになるとは、夢にも思わなかったことだろう。

 それに気付いた人がいる。意識不明だった先妻を亡くし傷心のジョアンに心を寄せる家政婦マリアン。初対面からジュリエッタが疎ましい存在であることを態度で示していて、その予見通りの結末となる。

 演じたロッシ・デ・パルマは初期のアドモドバル作品に登場していたが、特異な風貌からその存在感は半端ではない。

 夫・ジョアンの古くからの友人で、浮気相手でもあった彫刻家・アバ(インマ・クエスタ)は、このドラマのキイを握っている。ジュリエッタとも親交が深く、晩年まで親友だった微妙な立ち位置の女性で、ふたりの友情は複雑だ。

 アドモドバルらしいコッテリとした満腹感はないが、強烈なカラーと洗練されたアートと美しい風景で繰り広げられるジュリエッタの半生は、希望の光が射して幕を閉じる。