・ あんたはビジネスマンなのか?ニュース屋なのか?
人気報道番組・プロデューサーが大手たばこメーカーの不正を糾すために元重役にインタビュー。番組をそのまま、流すために局内で上司に喰って掛かる。
実話をもとにマイケル・マンが描いた渾身の実録社会派ドラマで、CBC「60ミニッツ」プロデューサー、バークマンにアル・パチーノが扮し、B&W社・元重役ワイガンドにラッセル・クロウが演じている。
バークマンは看板ジャーナリストであるマイク・ウォレス(クリストファー・プラマー)とともに人気番組を背負っている。自らの信念に忠実であろうとするため、上層部の意向でスクープが骨抜きで放送されることを善しとしない熱血プロデューサーは正にはまり役。
ワイガンドはB&W社の研究開発部門副社長というポストに高給で迎えられたことで、喘息の娘の医療費を賄い瀟洒な家を持つことができたが、自社製品に発がん性のあるクマリンが含まれていることで板挟みになる。
2人の立場は働く人間には誰にも思い当たる節がある話だけに、どう対処すべきかはとても緊迫感がある。結局この2人は相応しい行動をする報酬が退職による減収という歯切れの悪さが付きまとう。
なかでもワイガントは踏んだり蹴ったりで退職金カット、医療保険解約、家族への脅迫、旧悪を暴きネガティヴ・キャンペーンで証言差し止めを迫られる。
それでも州を超えてミシッピー州で証言することで、告訴を取り下げることができたが、家族は離散してしまい、大きな代償を負ってしまう。
映画はメディアの在り方を問いかけるテーマでありながら、寧ろそれに関わった人の犠牲が浮き彫りとなていく矛盾が際立ってしまったという現実が印象的になってしまった。
日本にいたことがあるワイガンドは箸を上手に使い「ちょっと、おねえさん。」というシーンが親近感を持たせてくれる。実在のワイガンドは01年5月27日来日し、WHO世界禁煙デー記念特別講演会で公演している親日家。
たばこと健康被害の歴史は何十年も繰り返され漸く今日があるが、何人もの犠牲があったことを思い出させてくれる作品だ。
本作はオスカー7部門にノミネートされながら、受賞はならなかった。何らかの圧力があったのでは?と勘繰るのも不思議ではない。