・ M・フリーマン、D・キートン初共演!味わい深い夫婦の物語。
モーガン・フリーマンとダイアン・キートンの熟年夫婦が住み慣れたブルックリンのアパートを住み替えることになり、慌ただしい週末を過ごすハートフル・コメディ。監督は「リチャード三世」(95)などのリチャード・ロンクレイン。
アメリカの代表的な俳優二人が、初共演というのが驚き。プロデュースしたM・フリーマンがジル・シメントの原作<眺めのいい部屋売ります>を映画化するにあたり相手役にD・キートンを指名して実現した。
居心地が良く40年も住んでいた家を売る動機とは?エレベータのない5階のため、夫・アレックス(M・フリーマン)の足腰を心配した妻・ルース(D・キートン)が言い出したもの。
内心気が進まないアレックスだったが、10歳の愛犬のためにも妻の気遣いには逆らえなかった。ここで人一倍張り切ったのが姪で不動産エージェントのリリー(シンシア・ニクソン)。
本作で新聞で告知して内覧会を開き、オークションするという不動産売買方法を知った。
長いキャリアで幅広い役柄をこなしてきたM・フリーマン。その誠実な人柄を反映した「許されざる者」(92)、「ショーシャンクの空に」(94)、「ミリオン・ダラー・ベイビー」(05)などが筆者のお気に入り。
D・キートンは「アニー・ホール」(78)、「恋愛適齢期」(04)で2度のオスカーを手にしていてコメディ主体のラブ・ストーリーはまさにはまり役。メガネがキュートな元教師役は彼女のためにあるような役柄だ。
この2人が結ばれたのはまだ黒人と白人の結婚が30州で禁止され20州で嫌悪されていた時代だというのもアクセントになっている。
貧乏画家だったアレックスはモデルとなったリリーに好意を持ち、人生に張りと勇気を感じさせてくれるパートナーの大切さを知る。
さりげなく若い頃の2人の逸話を織り込みながら、理想の住み替えができるか?というこのドラマは、愛犬ドロシーの病気とブルックリンとマンハッタンを結ぶ橋のタンクローリー事故が絡み、慌ただしくなる。
「空飛ぶヒーローではなく、老夫婦の物語を作りたかった」というM・フリーマン。こんな素敵な夫婦は現実ではなかなか難しいが、夫婦でアパートに40年住んでいる筆者と似ているので身近なお手本として少しでも見習いたいと思いながら鑑賞した。