・ S・ソーダーバーグ最後?の作品。
スティーヴン・ソダーバーグが50歳の若さで、劇場公開映画から引退を声明。これが最後の作品となった。
彼の作品でおなじみのジュード・ロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタムが顔を揃え、ルーニー・マーラが初出演した豪華キャストのサイコ・サスペンス。
NYのエリート金融マンと結婚したエミリー。夫がインサイダー取引で刑務所入りして彼女の人生は一気に暗転し、うつ病に悩まされてしまう。
4年後出所した夫を迎え新しい生活が始まった直後、自殺まがいの事故で入院するが、夫の元へ帰りたいというエミリーの願いを聞いた精神科医・ジョナサンは主治医となることで退院を許可する。
殺傷事件が起きるのはプロローグの室内に流れる血の跡で暗示されるので、それが何時/何処で/誰が/誰を/何故・・・という謎解きがあるとインプットされている。
ヒロインのエミリーが絡んでゆくのは間違いなさそうだが・・・。
始まって60分ほどで事件の経緯が判明すると、医薬業界の裏面を抉る社会派サスペンスを思わせる展開だっだのが、終盤で急旋回して観客のミスリードを楽しむようなストーリーだ。
主演したJ・ロウは上昇志向のある医師で、美しい妻と可愛い一人息子と暮らすため奮闘するが、新薬の臨床に協力することで5万ドルの報酬を得ようとする。思いもよらぬ転落を余儀なくされるなど、等身大の人間であるところに落とし穴があった。
ヒロイン・エミリーを演じたR・マーラはうつ病に悩む薄幸な若い妻役を演じながら、彼女の演技次第でこの作品の評価が大きく変わる重要な役を背負っていた。当初キャスティングされたブレイク・ライヴリーが降板したのは難役に感じたからだろうか?
「ソーシャルネットワーク」(10)、「ドラゴンタトゥーの女」(11)と両極の役柄を使い分けできる彼女ならではの役ともいえる。
K・ゼタ=ジョーンズの精神科医とヒロインの夫で出演したC・テイタムは、ソダーバーグの引退作品でなければ引き受けない役だっただろう。
先進国ならではの薬漬け人間が金を目当てにおこなった犯罪が、<一事不再理>という法律で裁かれるこのストーリーを、クールに俯瞰するようなトーマス・ニューマンの音楽とソダーバーグのカメラが引っ張って行く。
事件は終盤でテンポアップして106分という短さでエンディングを迎えるが、だいぶ編集でカットした省略部分があるようで、筆者にはスッキリしない不条理さが残ってしまった。
まるでソダーバーグの引退宣言のように・・・。また、復活して納得できる作品を見せて欲しい。