マルタの鷹
1941年/アメリカ
J・ヒューストン初監督、H・ボガート出世作の探偵ドラマ
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 75点
音楽 75点
ダシール・ハメットの探偵小説をジョン・ヒューストンが、3度目の映画化に挑戦し見事成功させ、<ハードボイルドのひな型>として後世に名を残した。彼の初監督作品であるとともに、主演したハンフリー・ボガートの出世作ともなった。当初予定のジョージ・ライトが断ったため廻ってきた主演作をものにして、翌年の「カサブランカ」でその地位を不動のものとした。
SFの私立探偵サム・スペードのところへ妹を捜索して欲しいと依頼に来たワンダリーと名乗る女性がいた。相棒のマイルズ・アーチャーが引き受けるが、その晩射殺される。スペードはその真相を探るため女性を訪ねるが行方不明。<マルタの鷹>とはマルタ島の騎士団がスペイン皇帝に献上した純金の彫刻像のこと。像を巡り怪しげな男が現れるが、サムは相棒の妻と不倫の仲で警察に殺害容疑を掛けられる。
脚本家であるヒューストンは原作を忠実に踏まえシナリオを書き映画化しただけあって、原作の持つ独特の文体を反映した映像化にエネルギーを注ぎ込んだ。ドライで女好きながらどこか男の美学を感じさせる雰囲気が漂う主人公。H・ボガートは従来の悪役イメージを背負いながら演じたのも幸いして新しいヒーロー像が構築された。まさにスタイリッシュなボギーの世界はこれが原点となる。
サムを囲む女優は、謎の女にハリウッドきってのスキャンダル・女優のメアリー・アスター。同僚の妻にグラディス・ジョージ。秘書でお相手でもあるエフィにリー・パトリックが扮している。絶世の美女はいないがサムを巡る女たちとしては色とりどり。むしろ<マルタの鷹>を狙う怪しげな男たちが個性派揃い。小柄な洒落男のジョエル・カイロ役にピーター・ローレ。その雇い主で得体のしれない大男・ミスターGことガットマンにシドニー・グリーンストリート。その用心棒に一見冴えないエリシャ・クックJR。それに2人の刑事ワード・ボンドとバートン・マクレーンが絡む。
ハラハラ・ドキドキ感はないが、この事件の行方とともに<サムの男の世界>にどこまで浸れるかが見どころだ。