晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『人生の特等席』 85点

2012-12-10 12:09:17 | (米国) 2010~15




人生の特等席


2012年/アメリカ






予定調和の素晴らしさを満喫





プロフィール画像

shinakamさん


男性






総合★★★★☆
85



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
90点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





「マディソン郡の橋」(95)以来クリント・イーストウッドの黒子として映画づくりに関わってきたロバート・ロレンツの初監督作品。イーストウッドが「グラン・トリノ」以来4年振りの出演はファンとしても嬉しい。大リーグA・ブレーブスの老スカウト・ガスが失明の危機にもめげず、ノースカロライナのハイスクール・スラッガーを指名するか見極める旅に出る。上司で長年の友人でもあるピートが心配して、父の様子を観るように言われ娘・ミッキーはシブシブ同行する。
父と娘の修復は?スカウトの仕事は?娘の恋の行方は?それぞれの距離感がとても自然で、お約束ごとながら誰もが心がほっとする優しさが溢れるハナシの展開と期待を裏切らない予定調和の素晴らしさを満喫した。
原題は「カーブに難がある」でズバリだが、その裏にはガスやミッキーの<人生の曲がり角における困難さ>を意味するのだろう。邦題はローカル球場で観戦する場所が2人にとって居心地の良い特等席だったというミッキーの台詞からとったもので悪くない。野球好きでイーストウッドのファンである筆者にとって一番後ろの中央で観たこの作品は至福のひとときで、まさに題名とリンクしていた。
日頃映画は疑似体験と思っている筆者には、イーストウッドの老いたりといえども一人暮らしの頑固一徹な老人ぶりは自分にはない理想の老人像。肉体の衰えを隠さず、演技に活かした<暴走老人ぶり>はイーストウッドの適応力と相まってまさに独壇場だ。
マネーボールの大リーグ経営が趨勢であることは間違いないが、敢えて経験と五感を働かした人間の能力も必要なはずだと示唆していて、現代社会への警鐘も忘れていないところにオールドスタイルへの郷愁が窺える。
娘・ミッキー役のエイミー・アダムスの愛憎が交錯しながらも父への想いが見え隠れする演技には好感が持てた。筆者も一人娘の親だが、こんな娘がいたら最高だと思わせる。ほかにも旧友ピートのジョン・グッドマンは最高の友人だし、肩を壊しスカウトに転身したジョニー役のジャスティン・ティンバーレイクも性格の良い男だし、敵役ながらマシュー・リラードのマネーボール派のスカウトもハマり役だった。
心地良い111分を過ごしたあとも「ユー・アー・マイ・サンシャイン」が耳に残っったままシネコンを後にした。