晴れ、ときどき映画三昧

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『ザ・ヤクザ』 75点

2012-12-23 11:05:30 | 外国映画 1960~79

ザ・ヤクザ

1974年/アメリカ

<義理・人情の世界>を美徳と感じた米映画

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★☆☆70点

日本通であるレナード・シュレイダーの原案を弟のポールとロバート・タウンで脚本化し、シドニー・ポラックがメガホンを撮った米映画。日本の<義理と人情の世界>を真面目に理解しようと描いた抒情感溢れる異色任侠映画。
主演は元進駐軍兵士で旧友の娘が日本のヤクザに誘拐されたのを取り戻すため20年振りに来日したハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)。元恋人・英子(岸恵子)の兄でヤクザの田中健(高倉健)の助力を得ようとするが...。
東映のヤクザ映画を観て感傷的なところが好きだというシュレイダーのお気に入り俳優は鶴田浩二。本作も鶴田をイメージしたところが多分に見えるが、東映のエグゼクティブ・プロデューサー俊藤浩滋がキャスティングしたのは高倉健だった。また、監督は主演にロバート・レッドフォード起用を考えていたが若すぎるということでR・ミッチャムに決まった。こうして異色の日米競演となったが、クライマックスのアクションもショットガンのミッチャムと長ドスの健さんでは<義理・人情>を身体ごと演じてみせた健さんに軍配が上がる。
日本・日本人を描いた米映画は首をかしげるシーンや映像が数多くあるが、本作は任侠道と武士道の混在はあるものの日本の様式美描写は銭湯での映像以外は(鯉の水槽・女湯が透けて見える)奇異な感じは見られなかった。これは日本で撮影した成果だろう。新宿歌舞伎町の雰囲気や新幹線・京都・鎌倉が随所に映り、日本の美しい風景がドラマを盛り上げる。
ただ、ヤクザの指詰めは日本人にとっても奇異な儀式なのに重要なテーマとなっていて誤解のもとにならないといいが。
シドニー・ポラックにとって失敗作だが、その後の作品に少なからず好影響を与えたに違いない。その後シナリオを書いたP・シュレイダーは「タクシー・ドライバー」でブレイクしているし、高倉健は寡黙ながら筋を通す男のイメージが確立した作品でもある。