晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『サラの鍵』 80点

2012-01-07 13:20:41 |  (欧州・アジア他) 2010~15

サラの鍵

2010年/フランス

語り継がれることの大切さ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ナチス占領下のフランスがユダヤ人迫害をした「ヴェルディヴ(冬期競輪場)事件」をテーマにした作品では「黄色い星の子供たち」が印象に残っているが、原作はタチアナ・ド・ロネのベストセラー。
10歳の少女サラが辿る過酷な運命と60年後真実を明らかにすることで自分の人生を見つめてゆく雑誌記者ジュリアを交錯させながらミステリータッチのような切り口で描いている。
42年パリで行われた一斉検挙の朝、サラは咄嗟の機転で弟を納戸に隠し鍵をかける。すぐ帰れるはずが親子が離れ離れとなり収容所送り。それでもサラは弟が心配で脱走を試みる。
フィクションなので現実にはありえないのでは?というシークエンス(収容所の監視員、命懸けで助けてくれた老夫婦)があるものの、フィクションだからこそそうあって欲しいと願わずにはいられない。サラを演じたメリュジーヌ・マヤンスの大人を凝視する真っすぐな眼差しは、何よりも心を揺さぶられる。
NY生まれのジュリアがパリで取材を始めたヴェルディ事件は若い同僚にはスペルも分からないほど存在が風化しつつあって歴史を紡ぐことの難しさを感じる。これは今の日本人にも言えることで決して他人ごとではない。人種問題も無縁ではなく、明治以降の在日外国人への対応は大同小異では?
ジュリアは45歳で身ごもり、新しい命に胸を躍らせるが夫は望んでいない悩みを抱えながらNY、フィレンツェへと憑かれたように取材を重ね14歳の娘を心配させてしまう。夫は中国との商談で家族は離れ離れとなるなど現代の家族の在り方が絶妙なスパイスとなっている。ジュリアを演じたクリスティン・スコット=トーマスの悩みを抱えながら凛としている抑えた演技はもっとも得意なジャンルで、ここでも女性の共感を誘う。少し45歳の役には老けて見えたのは酷な注文か?
<真実を知ることの是非はジャーナリズムの本質を問うこと>だが、自身や周囲を傷つける代償を払わなければならない。ジュリアは他人の生活に立ち入り傲慢だったという反省とともに自身の人生にも区切りをつける。
37歳のジル・パケ=ブランネル監督は’95シラク大統領の演説でユダヤ人迫害があったことを知る。語り継がれることの大切さを再認識させられた作品でもあった。