皇帝円舞曲
1948年/アメリカ
B・ワイルダーのオペレッタとテクニカラー
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 85点
「失われた週末」のビリー・ワイルダー監督・脚本とチャールズ・ブラケット製作・脚本コンビによるオペレッタ。モノクロが主流だったこの時代にカラー、それもわざわざテクニカラーと銘打ったのは、ストーリーよりも映像美にこだわった所以だろう。
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世(リチャード・ヘイドン)の愛犬のお見合い犬の持ち主ホレニア伯爵(ローランド・カルヴァ)と令嬢ジョアンナ(ジョーン・フォンテーン)父娘。アメリカからきた電機蓄音器のセールスマン、ヴァーシル・スミス(ビング・クロスビー)がジャマに入るという設定自体が突拍子もないハナシ。
B・ワイルダーは尊敬していたエルンスト・ルビッチを真似てこの映画に取り組んだらしいが、はっきり言って失敗作。それでも見どころが随所に見られたのは当時のパラマウントの余裕というべきか?
その魅力のひとつはB・クロスビーの魅惑の歌声。なかでも「奥様お手をどうぞ」は不滅のバラードとしてスタンダード・ナンバーとなっている。オペッレッタといいながらヒロイン、J・フォンテーンは唄わない。それでも東京生まれの美人女優は、「レベッカ」などで魅せたモノクロとは違うカラーで観る衣装とともに輝きがあった。ウィンナ・ワルツで踊るシーンも見逃せない。
出演陣に負けない演技を見せたフォックス・テリヤとフレンチ・プードルが愛犬家には見どころかもしれない。
チロルの風景をカナディアン・ロッキーで撮影。百合や松ノ木を大量に植えたり、白いひな菊4000本をコバルト・ブリーにしたり道路をペンキで塗り替えたり、僅か2分だけのカットに人工の島を浮かべるなどトコトンこだわりの映像美に執着したという逸話が残っている。B・ワイルダーの唯一のミュージカル風コメディとして貴重な作品である。