ブログ 「ごまめの歯軋り」

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ソマリア沖海賊 捉えてさて誰が裁くの?

2011年03月10日 | 時事問題
asai.com 2011年3月10日3時2分
言葉の壁・証拠集め困難…海賊事件の審理、難航予想
 アフリカ・ソマリア沖で商船三井のタンカーが海賊に乗っ取られた事件で、日本政府は9日、米軍が拘束した4人を逮捕する方針を固め、具体的な移送手続きの検討を始めた。外国政府や軍からの身柄引き受けは海賊対処法の「想定外」で、政府関係者は手探りの対応を強いられている。裁判員裁判になる可能性もあるが、加害者も被害者も外国人。通訳の確保はおろか、被告の年齢の特定すら困難を極めそうだ。

国際司法上の困難な問題はさておき、上の図を見て、被害総数が2008年より急増する中、日本の被害だけは一貫して少ないことに気がつく。自衛隊護衛艦派遣は09年3月で、そのころが海賊行為のピークであった。自衛隊護衛艦派遣が抑止力でなかったことは確かである。誤差かもしれないがむしろ派遣によって若干増えている。武力で押さえつけないで、それまでタンカーや商社は現場で通行税をはらっていたのではないか。そして被害届は出さなかったと見るべきか?原因が海岸沿岸住民の貧困にあり、それで納得するならよっぽどそのほうが安くつくようだ。

文藝散歩 興膳宏著 「漢語日暦」 岩波新書

2011年03月10日 | 書評
漢語の季節感 第4回

俳句でいえば「季語」にあたる本書の漢詩文の「漢語日暦」は、一つ一つ味わい深いものがあるが、本書は、漢詩の季節を現す言葉から始めて、殆ど和語に相当する言葉、江戸時代に流行した「狂詩」の言葉(漢語には無い言葉を漢詩文のなかで用いる)、現代日本語(漢字で書いた)まで幅広く音読みの漢字語も収集している。肩が凝らないように、いろいろな漢語を集めているが、著者の引用した漢語の由来をあたって見ると、全365語のうちベスト10の引用回数は、唐の白居易が22回、唐の杜甫より20回、周・春秋時代の「詩経」より17回、清末期の駐日大使黄遵憲の「日本国志」より11回、南宋の陸遊より11回、唐の李白より9回、六朝の陶淵明より9回、北宋の梅堯臣より8回、南宋の楊万里より8回、北宋の蘇軾より7回、戦国の「論語」より6回、「荘子」より6回というところが多い。
滅多に読まれることが無い日本の漢詩人では、江戸の柏木如亭より7回、幕末明治の成島柳北より5回、明治の鈴木虎雄より4回、江戸の菅茶山より4回、平安時代の嵯峨天皇より3回、江戸の市川寛斎より3回、江戸の良寛より3回、江戸の寺門静軒より3回、江戸の舘柳湾より2回、江戸の広瀬旭荘より2回、江戸の藤井竹外より2回、江戸の梁川星巌より2回、江戸の頼山陽より2回、平安時代の源順より2回、江戸の草場船山より1回、江戸の祇園南海より1回、昭和の中島棕陰より1回、江戸の北条霞亭より1回、江戸の恥庵より1回、明治の大沼枕山より1回、江戸の太田南畝より1回、江戸の新井白石より1回、江戸の江馬細香より1回、平安時代の菅原道真より1回というところである。
明治以降の小説家では、夏目漱石より8回、永井荷風の「断腸亭日乗」より8回、森鴎外より2回、土井晩翠より1回、中島敦より1回、草野心平より1回、正岡子規より1回、北原白秋より2回、三好達治より1回、太宰治より1回というところである。
(つづく)

読書ノート 近藤宣昭著 「冬眠の謎を解く」 岩波新書

2011年03月10日 | 書評
シマリスから冬眠特異的蛋白質(HP)の発見への道 第5回

 「チャンネル」が開くと細胞内外のイオンの濃度差(浸透圧)によって、イオンの流入・流出がおこなわれる。例えば細胞内のナトリウムイオンと細胞外のカリウムイオンはNa+・K+ATPアーゼによって交換され、細胞内のカルシウムイオンはCa2+ATPアーゼにより運び出される。その際ミトコンドリアから供給されるATPという高エネルギー化学物質の助けが必要で、多くのエネルギーを必要とする仕事である。その他ナトリウムイオンとカルシウムイオンを交換する相互に交換するNa+・Ca2+交換蛋白質もある。通常細胞内はマイナスに荷電していて心臓細胞では-90ミリボルトほどになっている。このように、心臓や神経、筋肉などの興奮性細胞は、エネルギーを消費することにより細胞膜を隔ててイオン濃度の差を作り出している。心筋細胞が収縮・弛緩を繰り返して血液を送り出し吸い込むポンプ機能をもっているには、イオンによる筋肉の刺戟収縮作用によるのである。まず最初ナトリウムイオンを通すチャンネルが開くと細胞内の電位は一気にマイナスからゼロに上がる。この電位変化が引き金になってカルシウムイオンチャンネルも開いて、一瞬電位は+になると、心筋細胞はカルシウムイオンの増加によって収縮淡白が活性化され、ATPを消費して収縮力を高める。カルシウムチャネルは直ちに閉じて今度はカリウムK+チャンネルが開くことで細胞内電位は-に低下してゆく。細胞内に過剰となったカルシウムとナトリウムイオンを減らし、減ったカリウムイオンを取り込むため、Na+・K+ATPアーゼやNa+・Ca2+交換蛋白質が活躍する。このような心筋細胞のイオン交換が周期的に活動することがシマリスでは1分間に450回の心臓の拍動を生むのである。全身の細胞に酸素と栄養分を送り、老廃物と炭酸ガスを排出することで代謝活動が営まれている。この心筋細胞は低温状態でミトコンドリアの破壊が進行し、細胞が壊死して収縮力が次第に低下する。この低温死は必然的である。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「雨日野景」

2011年03月10日 | 漢詩・自由詩
留取暗香梅樹陰     暗香を留取す 梅樹の陰

煙沾春色雨中深     煙沾い春色 雨中に深し

園林桃杏花涵玉     園林の桃杏 花玉を涵し
 
麦隴和風松鼓琴     麦隴和風 松琴を鼓す


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(韻:十二侵 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 「フランス クラリネット曲集」

2011年03月10日 | 音楽
「フランス クラリネット曲集」
①サンサーンス「ソナタ」作品167 ②ショーソン{アンダンテとアレグロ} ③ドピュッシー「ラプソディ」 ④ミヨー「ソナチネ」 ⑤ミヨー「デュオコンチェルタント」 ⑥プーランク「ソナタ」 ⑦オネゲル「ソナチネ」
クラリネット:ポール・メイエ ピアノ:エリック・ル・サージュ
DDD 1991 DENON

フランス近代のクラリネット作品を集めたオムニバス