角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

30人の草履職人。

2006年08月18日 | 実演日記
今日の草履は、7月29日、ネットでご注文の盛岡市の奥様へ発送する草履です。
細かい色指定がありませんでしたので、赤と青を入れた三色使いにしてみました。ピエロっぽくて楽しい草履と思います。

久しぶりに雨が降りました。真夏特有のバケツをひっくり返したような雨です。散策のお客様にはお気の毒でしたが、水分を欲していた植物や人間にも恵みの雨と思います。
『8月に入ってから初めてみたいな雨ですヨ~』と言うと、『あらやだっ、やっぱり私は雨女なんだわ~』とおっしゃる奥様が三名いらっしゃいました。
もちろん偶然と思いますが、本当に雨男や雨女がいたら、おそらくともだちが少なくなると思います。

草履台が完売しました。残り1台をサンプルに飾っていましたが、東京からお越しのお客様がお持ち帰りです。おじさま二人におばさま二人、おそらくご夫婦二組と思います。
奥様のひとりがエラくご熱心で、ご主人もかなり乗り気でした。もう一組のご主人のほうがビデオカメラをお持ちで、ご熱心な奥様の指示で片足を編み上げるまで撮影して行かれました。
予想以上に長い時間滞在したこちらのお客様、お昼を過ぎたので北蔵レストランでお食事です。草履台がレストランの売上にも貢献しました。

昨年の10月から販売をはじめた草履台が、一年を待たず30本売れました。いずれの方も私の実演をご覧になって「趣味」を見つけたのでしょうから、実演というのはなかなか意味が大きいと思います。と同時に、草履職人が全国に展開されていくのが、妙に嬉しかったりもしています。
今日、東京で草履作りに励むお一人から、高度な技術を尋ねるメールが入っていました。少しずつですが確実に進歩しているのが分かります。「東京の布巻草履」の発売も夢ではないかも知れませんね。

草履作りは普通屋外ではしませんから、雨男さんも雨女さんも、どうぞ草履職人のお仲間に入ってください!

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定年後のひとつの生活。

2006年08月17日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ22.0cm〔靴サイズ23cmまで可・・・3000円〕
ピンク基調の綿生地をベースに、緒は薄めの茶色です。茶が強くないせいか、ピンクのほうが引き立って可愛くなりました。先つぼの赤い布地も可愛さを引き出してるようです。
こういう配色は、案外中年の女性に好まれます。

相変わらず残暑厳しい毎日です。8月上旬に梅雨明けしてから、ほとんど雨らしい雨は降ってないような気がします。梅雨中の日照不足は解消されたでしょうが、こう毎日暑いと人間のほうが参ってしまいます。

青森県十和田市からお越しの団体さん、女性ばかり総勢30名ほどです。中の多くが布草履教室に参加したことがあるそうで、私の草履に興味津々でした。
あーでもない、こーでもないがあちこちから飛び交い、10人ほどのおばさまたちが一斉にカメラのシャッターをきります。大勢のお客様から一斉に写真を撮られるのは、ずいぶん久しぶりのような気がしました。もっとも、ファインダーの向きは作っている草履で、おそらく私の顔はほとんど写っていないと思います。

お帰りになってから気がついたんですが、これだけ大騒ぎしたお客様でお買い上げがひとりもいないというのも、ずいぶん久しぶりのような気がします。いえ、別に構わないんですヨ

昨日お越しの高校同期会の団体さん。それぞれ自由行動になったということで、一部のおばさまが今日もお越しくださいました。
『草履屋さ~ん、また来たヨ~』、なんとも明るいおばさまたちです。『ここへ来るとまたお金使っちゃうんだよね~』とおっしゃるので、『見るだけならお金要らないでしょ』と言うと、『それで済んだことあると思う~!?』。
確かにまた米蔵で買い物をしてました。昨日買いそびれたおひとりが草履もお買い上げくださり、この時代なんとも嬉しいお客様でした。

旅の本を執筆していた茨城県のYさんから、刊行したての一冊が届きました。タイトルは「くるま旅くらし心得帖」、新風舎刊です。
本の帯には、『定年後の時間は想像以上に長い。平均寿命を考えただけでも、リタイア後の時間は20年以上もある。この間、生きている証しをなにも実感できない日々を送ることに耐えられる人間など、いるはずがない』とあります。
定年後を車で旅する生活というのは、なんとも言えない魅力を感じます。それはそうした方々を知っているから、なおさらそう思うのかもしれません。
Yさんの奥様がこっそり私に言った言葉、『男のロマンに女のガマン』。でも、そう言う奥様が一番おしゃべり好きだったりするもんです。

「出会いのメモリーコラム」と題した1ページに、「角館人の発見」として私たち家族との出逢いも綴られています。これまでテレビやら雑誌では報道されましたが、こうして個人の刊行本に載るというのは、なんともこそばゆい感じがしています。でも、一番嬉しいかもしれません。
この本にご興味のある方は、私宛にメールをください。Yさんの連絡先をお教えします。

Yさん、ありがとうございました。そしてまたお会いする日を楽しみにしています!

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2006年お盆総括。

2006年08月16日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23.0cm〔靴サイズ24cmまで可・・・3000円〕
新登場「青のいらか」をベースに、緒は同系の紺にしてみました。この手のベース色はどんな色にも合わせやすいので、エンジや茶もOKです。エンジの緒にした草履は、作り終えるのを待って東京の奥様がお持ち帰りです。

2006年、わが家のお盆が終わりました。お盆と言っても、実演は連日行ってますし、カミさんもそういう休暇とは無縁の仕事をしています。お盆でお休みしたのは、夜の草履作りとブログくらいのものでしょうか。

14日の晩は、過去5年間ほど出店した「わらび座夏祭り」に出かけてきました。花火がなかなか見事なイベントです。
5年連続でこの花火を見た娘たちは、私の出店とは無関係に『必ず見るもの』と思い込んでいるようです。
かつての出店仲間といろいろ話をしましたが、私が家族と観客席にいるのが、なんか場違いな感じがするようでした。

15日の晩は「送り盆行事」が開かれました。「ささら舞い」の写真を掲示板に載せています。
昨日も猛暑でしたから、夕涼みがてら街を散策する人で溢れていました。商店会主催の福引コーナーに並んだ娘たち、長女が安藤醸造さんの「おかずセット」なるものを当てました。今日のお昼のおにぎりに入っていた味噌漬は、どうやらその中の一部のようです。

今日の夜は旧中仙町の「ドンバン祭り」でした。今晩から草履作りを再開させたので、私は行きませんでしたが、娘たちはまたまた私の出店とは無関係に、『必ず行くもの』と思い込んでいました。カミさんが三人を連れて行きましたが、三女が帰るなり、『とーさんの店サ、スーパーボールすくい来てらっけ、とーさんの店のほうがカッコイイのになぁ』。
三女にしてみれば、その場所は“とーさんの店”なんでしょう。

お盆の西宮家、いろいろなお客様がお越しの中でふたりの同期生。ひとりは、現在秋田市内の警察署に勤務するSHくん。『ホームページ見だった、やっぱりやってらんだねぇ』。
そりゃあ、やってます。このサイトが全部ウソだったじゃマズいでしょ。
『お盆だどって遊んでねで、藤里町どご早ぐ解決させれで』と言うと、『みんなにごしゃがれでら、オメばりも言うな』。

もうひとりは都内の郵便局に勤務するNAくん。このホームページで草履を知り、密かに注文しようか迷っていたとのこと。
お買い上げのMサイズは、もちろん奥様へのお土産と承知しておりますヨ。

今日の西宮家、千葉県船橋市からお越しの女性、20歳代前半とお見受けしました。大館市のご友人を訪ねる途中、角館へ下車とのこと。しばしの一人旅を愉しんでおられました。
武家屋敷通りの散策を愉しんだ帰り道、再度お立ち寄りくださいました。『どうしても草履が気になって‥』とオーダーのうえ、記念写真を撮って握手してお帰りです。
初角館は気に入っていただけたでしょうか。

群馬県桐生市からお越しの奥様。当町の「鮎釣り」に参加するご主人のお伴で、この時期に角館をお訪ねになるのが15年連続とのこと。私は8月の実演が今年はじめてですから、今日が初対面でした。草履オーダーありがとうございます。

県内の某高校を卒業し、現在東京に暮らす方々の同期会とおっしゃる団体さんがお越しです。こうした集まりも、いかにもお盆という気がします。草履オーダーありがとうございました。

そんなこんなで、今年のお盆も終わりました。お盆が過ぎると、角館はお祭りに向けてにわかに忙しなくなります。
実演席隣りで流しているお祭りビデオには、ときおり夢中になってご覧のお客様がいます。これからしばらくは、草履の話にお祭りの話題が加わりそうです。

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出迎えは笑顔で。

2006年08月12日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23.0cm〔靴サイズ24cmまで可・・・3000円〕
白地に黄色模様の浴衣をベースに、緒は桜うさぎグリーン、真中にエンジのいらかでアクセントを入れてみました。
このベース生地を見たとき、上空から見た「木立」をイメージしました。緒を緑にし、「森の風景」の出来上がりです。
この草履は、秋田市からお越しくださった母娘さんの、娘さんのほうがお持ち帰りです。

暑さのピークが過ぎた感じです。「暑いといってもお盆まで‥」の通り、今日の午後少し雨が落ちた後は、風がハッキリ変わりました。
夏バテもほぼ解消です。西宮家で出逢うお客様に私の体調は無関係ですから、いつでも笑顔でお迎えしたいものです。

夏季実演開始から一ヶ月以上が経過しましたが、県内在住のお客様のご購入が目立ちます。過去に一度もしくは数度実演をご覧になって、いよいよお買い上げというパターンが多いです。

お隣り大仙市からお越しのご家族、お母さんはこれまで数回実演をご覧になっていたそうです。今日は、ご主人と千葉県に暮らす娘さんご夫妻、そしておばあちゃんと5人でお越しくださいました。
娘さんが草履を気に入ってくださり、早速オーダーをお決めになりました。するとすかさずお母さん、『私も注文して行こう!』。
これまでずーっと気になっていた草履を、娘さんも気に入ったことで安心したんでしょうか。帰り際、『○○(娘さんの名前)、ありがとう、これでスッキリしたわ!』。

「若き人形師」の作業が順調です。一日半ほど早い進捗と言ってました。掲示板に写真を掲載していますので、どうぞご覧ください。
それにしても他人の仕事というのは、こちらに責任がないせいか、実に気楽に眺めていられます。人形作りをまったく知らない私は、ひとつひとつの作業がとても新鮮です。実に面白いもんです。

8月12日、25年前からこの日が特別な日になっています。25年前、工業高校建築科を卒業した私は、東京・高田馬場にある建設会社に就職しました。一級建築士を志した第一歩を、池尻や多摩ニュータウンの現場で四ヶ月暮らしました。お盆休暇を故郷角館で過ごすため、友人とその姉夫婦の車に便乗して東京を出発したのが、今日8月12日の夜でした。

渋滞の高速道路、途中仮眠をとって角館に到着したのは、翌13日の朝でした。当時ケータイはありませんし、道中は深夜だったため自宅へ一度も連絡を入れていません。
わが家へ着いてみると、玄関に異常な数の靴が並んでいました。一番に私を見つけたのは母の姉です。叔母はすぐさま母親を呼び寄せ、母親からことの真相を聞かされます。それは父の死でした。

12日の夜から体調が思わしくなかった父親に、母親は何度も医者へ行くことを勧めたそうです。頑として受け付けない父親も、間もなくどうにもならない痛みが襲い、救急車で病院へ運ばれます。そしてそのまま帰らぬ人へ‥。
遺体がわが家へ戻り、親類縁者に急死が伝えられ、近くの親戚が集まってしばらくしてからの私の帰宅でした。
そんなことなど予測の欠片もない私は、四ヶ月ぶりの家族との再会ばかりを楽しみに玄関へ入ったわけです。貼られた「忌中」の札など、目に入るはずもありません。

それまでの18年間の人生で、これほどの「精神的落差」を感じたことはありませんでした。それからの私は、「明日の身は誰も分からない」と「世の中どんなことでも起こりうる」を、無意識のうちに覚悟するようになった気がします。先日の江原さんの言葉、「込めて生きる」もそんな教えに聞こえるわけです。

茨城に暮らす私の姉とその息子が、墓参のため15年ぶりに故郷角館へ帰ってきます。今ごろは高速道路をひた走っているでしょう。特に甥っ子が私に会いたがっているとのこと、幸せばかりではなかった23歳の甥っ子を、明日の朝、私は元気な顔で迎えます。

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「込めて生きる」。

2006年08月10日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ24.0cm〔靴サイズ25cmまで可・・・3000円〕
8日の草履と同じベース生地に、緒を唐草で仕上げてみました。どうしても紺系が人気の今の季節、いろいろな組み合わせでバージョンを増やしています。この組み合わせも「和」の感じが活きた仕上がりになりました。

8日のブログを簡単に済ませ、昨日は一日ブログをお休みしました。夏バテ克服の手段として、風呂上りに冷たいビールを飲んで、早々に床へ就きました。二日続けたら、体力の回復がハッキリ分かります。やはり人間は睡眠が重要です。

8日の晩、久しぶりにテレビを眺めていると、霊能者の江原さんの番組をやっていました。かねてより、江原さんの能力は素晴らしいと思っています。霊の「力」を現世を生きる者の「力」に替える、物凄い人助けだと感じています。

『込めて生きる』。番組の中で江原さんが言った一言ですが、これが頭から離れません。死して家族を心配するよりも、生きている今を後悔しないという意味にとりました。
7月15日のブログにも共通するこの『込めて生きる』を、しばらくは私のテーマにしたいと思います。

「込めて」いる人が、西宮家のお隣りにもいます。「若き人形師」が、着々と作品作りを進めています。掲示板をご覧ください、17歳年下の若人に、純真無垢なモノ作りを教えられています。

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夏バテ気味です。

2006年08月08日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ24.0cm〔靴サイズ25cmまで可・・・3000円〕
紺基調の浴衣をベースに、緒は青です。せめて草履くらいは涼しさを求めたいと、日に1足は「青」でまとめた草履を作っています。やはり足も早いです。

今日も最高気温が35℃まで上がりました。米蔵スタッフが温度計を持って直射日光の当たる場所に立ったところ、5分ほどで37℃に達したそうです。気が滅入るだけなので、もうしないと言ってました。

今日8月8日は私の「独立記念日」、つまり沙佳屋の誕生日です。いろいろな想いがあるのですが、夏バテを感じる今日は思考回路がショート気味です。またの機会に11年目を考えたいと思います。
また明日、頑張ります。
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「町の元気」に出来ること。

2006年08月07日 | 実演日記
今日の草履は、7月22日、大阪府摂津市からお越しくださったおばあちゃんのオーダー草履です。
『風呂敷が大好き!』とおっしゃるこちらのおばあちゃん、オーダー草履も『紺の風呂敷一色で作って~!』でした。
大変遅くなりましたが、本日の便で出発しています。

今日も暑い角館、フーフー言いながら結構たくさんのお客様がお越しになりました。昨日で竿灯祭りが幕を閉じ、今日からは平日です。お客様は少なめを予想してたんですが、夏祭りばかりでなくそれぞれに夏の東北をお楽しみのようです。

これまでいくつかのブログでもご紹介しましたが、サラリーマン生活15年のほとんどを営業畑で過ごしました。稼働日数のおよそ半分がホテル暮らしという、出張三昧の生活です。
角館にお越しになる全国のお客様の中には、かつて出張コースだった懐かしい土地からのお客様も少なくありません。そんなお客様との会話の中に、「都市の空洞化」があります。『○○デパートは廃業したのよ~』とか、『郊外に大きなお店がいっぱい建ったからね~』といった話題です。
今日お越しの北関東からのお客様。『○○市はぜんぜん元気がなくなったわ~』、かつて数件のお得意先があった馴染み深い地方都市です。

この「都市の元気」、わが角館はどうでしょう。年間250万人とも云われる観光地でありながら、その中心部に「元気」はあるんでしょうか。もはや「商店街」とは呼べない通りもあって、どうひいき目に見ても「活き活きしている」とは言えません。

7月31日のブログでご紹介した「若き人形師」。翌日、缶コーヒー片手に訪ねてくれました。彼なりに、希望と不安があるのがよく分かります。
今日の夕方、また彼と少し話をしました。『もっと話聞ぎでんシ』とのことで、近々一献交わしながらお互いの想いを話し合うことになりました。

「角館の元気」に私たち作り手が貢献できること。26歳の人形師と43歳の草履職人、想いの接点は必ずあるはずです。

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「商人」と「職人」。

2006年08月06日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23.0cm〔靴サイズ24cmまで可・・・3000円〕
お馴染みの「桜うさぎ」に、グリーンバージョン新登場です。緒は、エンジ基調のいらか模様を合わせてみました。タイトルは「夕焼けの草原を駆ける桜うさぎ」、配色は「優しいお母さん」といった印象でしょうか。

昨日の丁内会行事も無事終わり、一日置いてまた実演再開です。今日の角館も暑かったです。岡山市からお越しの女性、『東北は涼しいとばかり思って来たのに‥』。対して名古屋市からの男性、『名古屋はこんなもんじゃないよ、東北は過ごしやすいんじゃない!?』。
30℃を超す炎天下も、人それぞれ感じ方が異なるようです。

大阪市からお越しのご家族、お父さんにお母さん、そして小学1年の男の子です。例の通り男の子が草履実演に興味津々、お父さんとお母さんは子どもに付き合って‥という感じで実演に見入っていました。
15分もご覧になったでしょうか、一番早くお買い上げの意思を固めたのはお母さんでした。『う~ん、三千円か~と思ってたけど、作っているところを見るとなるほどよね~』。次にお父さんもご購入のお手を挙げ、最後はお母さんが『○○(子どもの名前)も欲しい?』。
あらあら、最初から関心があったのは男の子だったんですけどねぇ。ご家族分3足のオーダー、ありがとうございました。

盛岡市からお越しのお母さんに娘さん、お母さんは50歳代前半とお見受けしました。草履を見つけた瞬間から大変に高い関心をお寄せです。『何日かかっても欲しい!』、今の私にこれほど嬉しい言葉はありません。

実は今朝のこと、米蔵スタッフと実演日程について少し話をしました。展示パネルには在庫と言えるほどの草履はすでにありませんし、これまでのオーダー数も5月ほどではないにしてもたまり気味です。これから夏場のフリー旅行、お盆の帰省、大曲の花火など、まだまだご来客の峠はいくつもあります。どこかで一度実演を休止して、製作に集中する期間が必要かナという会話でした。

こちらの盛岡からの母娘さんにこの話をしました。お母さんは、『たとえ二ヶ月待ちとか三ヶ月待ちになっても、ここにいて欲しい』。
励まされました、大いに励まされました。私だって、出来るものなら一年中実演をしていたいと常々思っています。それが、かつての「商人」としての気性か、長くお待たせするのは「罪」と思っている部分があります。これがはじめから「職人」であれば、おそらくそういう気持ちは少なかったろうと思うんです。

ここは盛岡のお母さんのお言葉に甘えて、もう少しだけ「職人」に近づきたいと思います。

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命を削るのが「作品」。

2006年08月03日 | 実演日記
今日の草履は、7月21日、お隣り大仙市からお越しくださった奥様のオーダー草履です。
『紺系でシックに、帯は細めで‥』がこちらになります。二週間のお約束ギリギリになってしまいましたが、本日の便で出発しています。

今日も引き続き暑かった角館。それでも、昨日の暑さが記憶に新しいためか、「予測能力」が働きます。暑さに慣れるということは、この力かもしれません。

朝一番のお越しは大阪からのご夫婦、揃ってオーダーくださいました。
『これから竿灯見物ですか?』とお尋ねすると、『いえいえ、できるだけ賑やかなところは避けたいんです』。
青森ではねぶたが始り、秋田では竿灯も幕を開けました。普通はそれらを目指して一挙東北へ‥という感じなのですが、いろいろなお客様がいらっしゃるものです。

展示パネルに飾ってあるひとつの草履を指して、『うわ~、この配色素敵!日本の祭りが表現されてる感じがイイわ~』。
そういう誉め方をされた経験が少ないことを伝えると、『あ~、一応私も絵描きだから、やっぱり配色が気になるのよね~』。
なんとこちらは女流画家さん、ゼネコンの業界紙に載せる「日本の建造物」の挿絵を担当してらっしゃる方でした。
「画」と言えば、もちろん私の後ろに飾られた「ふたつの分身」。この画の話を教えると、『ん~、イイわね~、あなたは素敵な仕事してる。私にもその草履頂戴!』。

こちらの女流画家さんとのおしゃべりで、共通したある想いを発見しました。
画家さんは二年に一度、銀座で個展を開かれるそうです。そのために出品する作品はおおむね30点、この四分の三がご売約となるそうですが、売れる喜びの反面、なんとも言えない寂しさがあるとおっしゃいます。
『作家って、命を削って作品を世に出しているんだと思うの。売れていく作品は、すべて私の命なのよ』。

この言葉、妙に共感する部分があるんです。朝6時から草履作りをはじめて、西宮家で9時間、その後自宅で2時間程度は作ります。それでも出来上がる数はそう多くありません。それが、お客様の多い日は半日で売り切れます。これを商売にしているわけですから、売れなければ死活問題です。素直に喜べばいいものを、心のどこかに僅かな寂しさがあるんですね。そう、双六ゲームで「振り出しへ戻る」に当たったような‥。

まぁ、こういうのは作り手の「わがまま」のようなものでしょうから、明日から西宮家にお立ち寄りのみなさま、どうぞご遠慮なくお買い上げください。もっとも、展示してある僅かな在庫からで恐縮なんですが‥。

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祭りより草履作り!?

2006年08月02日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23.0cm〔靴サイズ24cmまで可・・・3000円〕
エンジ基調のいらか模様をベースに、緒は濃い青にしてみました。これまでもそれぞれに使用していた生地ですが、今日はじめて合わせてみました。ご年齢を選ばない草履になったと思います。
この草履は、作り終えるのを見届けてくださった、大潟村からお越しのお母さんがお持ち帰りです。

暑かったです、ただただ暑かったです。梅雨明けが発表されたようですが、そんなことはどうでもイイです。冷房の届かない米蔵イベントホールに、この暑さはキツいです。

今日も子どもを含むご家族連れで賑わいました。
北海道苫小牧市からお越しのご家族、お父さんにお母さん、小学2年のお兄ちゃんと保育所に通う弟さんの4人旅です。

例の通り、子ども二人だけが実演ベンチに座っています。近年高校野球でその名を轟かす苫小牧ですが、お兄ちゃんが一生懸命野球の話をしてくれました。
『ふ~ん、じゃあ君も野球やってるんだ?』と尋ねると、少し声が小さくなって『やってない‥』。
間髪入れず弟が口を挟みます、『ピアノなんかやめたいんだよねぇ』。するとお兄ちゃん、『ピアノも塾もみんなやめたい』。
会話の途中からお母さんが子どもたちの後ろを歩いてましたから、おそらく最後の言葉は聞こえたと思います。苦笑いでもしているかと思いお母さんの顔を見上げると、その顔には笑顔の欠片さえありませんでした。もちろん私に対してなんのアクションもなく、子どもたちを連れて米蔵を後にしました。
大きなお世話はできませんが、小学生の今、好きなことをさせずにどうするんでしょう。

夕方近くにお越しの奥様、秋田市からおひとりでお見えです。
『陶芸をはじめたいと思って、関心があった窯元を訪ねたんだけど、道が分からなくなって角館に来ちゃった』と笑っておいででした。今度は、偶然出逢った私の草履に興味津々です。
『私、これ作りたい!』とおっしゃり、即決で草履台のお買い上げです。見本の草履と1足分の材料をお持ちになり、いそいそお帰りになりました。
帰り際、『今晩からでも作るんシか?』と尋ねると、『もちろんやりますヨ!』。

明日から秋田市では「竿灯祭り」がはじまります。今年も多くの観光客が、その芸とお囃子に酔いしれることでしょう。
そんな祭りの喧騒をよそに、自宅の一室で黙々と草履作りに励む奥様を、私はむしろ尊敬したいと思います。
角館のお祭りの夜に草履を編むなど、私には到底真似ができませんから。
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