角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

三方悪しき。

2015年11月25日 | 地域の話




今日の草履は、横浜市栄区の女性のオーダー草履です。ご希望配色は「赤系おまかせ」でしたので、燃えるような真っ赤な草履にしてみました。かねてより赤の草履は人気が高いです。それは赤が「元気」「エネルギー」の象徴であるうえに、「厄除け」「災い除け」の意味もあるからなんですね。
来年の申年にあやかって、某ショッピングセンターでは赤い下着コーナーが開設されていました。私も2016年は「赤い草履」をテーマに掲げるつもりでおります。

数ある都道府県ランキングの中で、秋田県に嬉しい一位はさほど多くありません。まず小中学校の学力テストあたりが少ない自慢でしょうか。案外知られていませんが、NHK受信料、国民年金保険料、学校給食費などの納付率、あとは選挙の投票率が全国平均を上回っているはずです。つまり秋田の県民性は一言で真面目ですよ。かねがね私はこれを、隠れた自慢に思っていました。

先般全国ニュースでも伝えられた、農業肥料メーカー太平物産の成分偽装事件。こういう事件を聞くとなんともやりきれないと言いますか、ガクッと肩が落ちる思いにさせられます。以前も価値のない廃鶏を比内地鶏と偽って販売した業者が摘発されました。全国的に名前が売れてきた時期でしたから、同業他社の落胆と憤りはいかばかりと思いましたよ。

今回の事件も罪は重いです。化学肥料を極限まで抑え、有機肥料を利用した米作りが県内各地で行われています。それらは「特別栽培」として補助金の対象となったり、市場では高値で取引されたりしています。その稲作に使用されていたのが太平物産の肥料というわけですが、その成分に偽りがあったのですからどうしようもありません。信頼はガタ落ち、出荷は停止、即ち生産者の収入に直結しています。関係者の怒りは推して知るべしでしょう。

このブログでたびたび引用する近江商人の「三方良し」。いわゆる善き商いというものは、「売り手」「買い手」「世間」の三つに利がなければいけないという教えです。お客様を騙して商いをしたら、「売り手」だけに利が生まれたのか。いや、結局は「三方悪しき」になったのが明白でしょう。
「真面目だけが取り柄」という言葉がありますが、真面目がなくなったら秋田県民は寂しいものです。来年は「赤」で元気に参りたいところ、「真っ赤なウソ」ではいけませんね。
コメント (2)
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