角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

合併の名残り。

2015年03月17日 | 地域の話
実演席ではお立ち寄りのお客様へ、「お住い」を訊ねるのが日常にあります。明らかに言葉の違うお客様には『どちらからお越しですか?』、秋田弁のお客様であれば『お住いはどちらだんシか?』といった具合です。今日、秋田弁のご夫婦に訊ねてみました。するとご主人のご返答は、『あっ、市内からです』。
これだけを聞くと角館が属する「仙北市」が一般的な理解なんですが、実はこちらのご夫婦は「秋田市」からお越しです。

このケースはこれまで幾度となくありました。「市内=秋田市内」という使い方をされる秋田市民が結構いるような気がします。印象ではやはりご年配者に多いでしょうか。勝手な推論なんですが、秋田市も合併を繰り返して現在の枠組みとなった土地柄です。この言葉の使い方をするのは旧市内、いわゆる繁華街に近い「元祖秋田市」に住んでいる方々じゃないですかね。

今は秋田市になっている、たとえば土崎地区や旧河辺町、あるいは旧雄和町の方が住いを訊ねられたとき、「秋田市です」とは答えても「市内です」とは言わないはずです。秋田市の中で誰かに住まいを伝えるとき、元祖秋田市の方々だけが「市内」と表現するのでしょう。そのため秋田市の外へ出ても、一種のクセのように自然とそういう言葉になるんじゃないでしょうか。

この推論は角館にも当てはまります。白岩・雲然・中川・西長野といった集落はもちろんのこと、町の中心部から少し離れただけの人であっても、中心部に出掛けるときは『町サ行ってくる』と表現するんですね。今の子どもたちこそそんなことはないでしょうが、年配者は今でも確かに使っていますよ。

角館が仙北市となって10年、その前身の角館町が出来て60年にもなります。合併の名残りは簡単に消えるものではないようです。
コメント (2)
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