角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

喜べないご利益。

2013年07月26日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
魚ヘンプリントに茶の唐草を合わせてみました。ちょっと楽しい、粋な草履に仕上がったと思います。24cmは男女どちらもいますから、案外粋な女性がお選びくださるかもしれませんね。

町内にお住まいで、たびたび西宮家にもお越しくださるおばさま。漏れ聞くに、長く海外に暮らした経歴をお持ちとのことで、言葉も標準語です。今年の3月でしたか、いつもはおひとりなのに、珍しくご主人と共に草履コーナーへお立ち寄りでした。

おばさまは前から欲しいと思っていたのか、その日は「ミニ草履」の前から離れなかったんですね。トイレに飾るおまじないを知ったご主人は、『そういうことなら、可愛いのをひとつ飾ろう!』と、ご夫婦仲良くひとつのミニ草履をお選びでした。

そして昨日のこと、おばさまがひとり草履コーナーへお越しです。
『話すと悲しくなっちゃうから今日まで言わなかったんだけど、主人ね、4月に亡くなったの。ちょっと体調が悪いって言ってから、三日後だった。主人がミニ草履を買ってすぐトイレに飾ってくれたから、見ると思い出しちゃうのよね』。

世の中には最愛の人を一瞬で亡くすケースがたくさんあります。東日本大震災などはその最たる例でしょう。「ちょっと体調が悪い」などは誰にもあることですから、三日後に帰らぬ人になるというのは、一瞬で亡くすにほぼ等しいんじゃないでしょうか。

ミニ草履をトイレに飾るおまじないは、「寝たきりにならない」を意味しています。こちらのご主人が寝たきり生活を回避したにしても、それで良かったと言える話じゃないですね。
コメント
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