緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

何回も繰り返し聴きたくなる演奏(録音)を選んでみた

2012-08-17 23:21:12 | 音楽一般
こんにちは。
会社の夏休みも明後日で終わりです。でも今日は半日だけ仕事にでなければなりませんでした。
今日は私が音楽を本格的に聴き始めた中学1年生の時から数十年を経て、これまで聴いてきた膨大な演奏(録音)の中から、何十回、何百回と繰り返し聴いてきて、またこれからもずっと聴き続けたい、私のお気に入りの演奏を選んでみました。
ジャンルはクラシックに限定します。
何故何度も何度も同じ演奏を聴いてしまうのか、という問いには明確な答えがあるわけではありません。理屈や頭で考えての結果ではなく、私の本能が欲するから聴くんだ、という感じでしょうか。
しかしこれから紹介する演奏は私の生き方、感じ方、物事を判断する力などに決定的な影響を与えてくれたことは間違いありません。もしこれらの曲や演奏に出会わなかったらどんな人間になっていたやら。もしかすると今生きていなかったかもしれません。
こうして改めて考えてみると音楽や芸術っていうのは凄い力を与えてくれんだな、考えてしまう。まあ人によっては音楽ではなくスポーツだったり、旅行だったりするわけですけど。
前置きが長くなりましたが、種類ごとに選んだ演奏を紹介していきます。

1.クラシックギター
私のメインの音楽。演奏もしますが、よく聴きます。

①マヌエル・ポンセ作曲 ソナタ・ロマンティカ
 演奏:アンドレス・セゴビア 1964年録音 使用楽器:ホセ・ラミレスⅢ世
 20世紀のクラシックギター界の大巨匠であるセゴビアの超名演。これを超える演奏はありえないほどの演奏。特に第3楽章は凄い。





②アレクサンドル・タンスマン作曲 ポーランド風組曲
 演奏:アンドレス・セゴビア 1965年録音 使用楽器:ホセ・ラミレスⅢ世
 この録音もセゴビア以外の演奏は考えられないくらいの超名演。使用楽器であるホセ・ラミレスの表面板が杉に変わってからの録音で、セゴビアのラミレス時代の録音の中では一番楽器が良く鳴っている。





③フェルナンド・ソル作曲 練習曲op6-11
 演奏:ナルシソ・イエペス 録音1962年 使用楽器:イグナシオ・フレタ(?)
 ギターを始めて間もない頃の中学2年生の時に初めて買ったクラシックギターのレコードに収められていた曲。このレコードを1日何回聴いたであろうか。家で聴くだけでは物足りなく、テープに録音して学校に持っていって掃除の時間にカセットで聴いていました。
この曲は収録曲の中でも目立たない小曲ですが、非常に美しい名曲です。作曲者ソルの内面を映し出した単純そうで深い曲。この曲の運指はセゴビアのものが有名ですが、私はイエペスの運指の方が優れていると思います。使用楽器はイグナシオ・フレタの表面板が松のものだと思いますが断定できません。





④フェデェリコ・モンポウ作曲 歌と踊り第13番
 演奏:ナルシソ・イエペス 録音1972年 使用楽器:ホセ・ラミレスⅢ世(10弦)
 この曲は元々ピアノのために書かれた連作なのですが、イエペスの依頼によりこの13番だけはギター曲として作曲された。「歌」はカタロニア民謡の有名な「鳥の歌」を素材にしている。歌も踊りも素晴らしい曲。イエペスは原曲を部分的に変更し、10弦ギター用に手直ししています。その演奏は超名演です。この曲は演奏難易度が高く、特に和音の持続性を保つのが至難な曲なのですが、イエペスの演奏は演奏の困難さをはるかに超越した演奏。この演奏もこれ以上の演奏は現れないでしょう。
楽器は、パウリーノ・ベルナベが10弦ギターの製作を開始する前のホセ・ラミレスⅢ世の10弦ギターを使用している。





⑤アグスティン・バリオス作曲 大聖堂
 演奏:ナルシソ・イエペス 録音1989年 使用楽器:パウリーノ・ベルナベ(10弦)
 大聖堂は3楽章あることが知られていますが、元々は第2楽章と第3楽章の2部構成の曲でした。第1楽章のプレリュードは単独で作曲されたものを後から大聖堂に組み入れられたと言われています。バリオスの自演レコードでは第1楽章は弾かれていません。
イエペスも第2楽章と第3楽章のみの演奏ですが、第2楽章「宗教的アンダンテ」と第3楽章「荘重なアレグロ」をこれほど厳密に表現し得た演奏を他に聴いたことがありません。特に第3楽章のテンポはこの曲のベストだと思います。この第3楽章をテクニックをアピールすることを目的にやたら速いスピードで演奏する奏者がたくさんいますが、これは曲をぶち壊しています。このような演奏者はこの曲の意味が全くわかっていないのでしょう。イエペスの演奏は的確なテンポと正確な技巧で大聖堂の荘厳な雰囲気を感じ取って作曲したバリオスの気持ちをよく表現しています。
なおイエペスはこの曲の演奏を3弦を半音下げた変調弦で行っているのではないかと思われます。





⑥ホアキン・ロドリーゴ作曲 アランフェス協奏曲
 演奏:ジョン・ウィリアムス ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 録音1964年? 使用楽器:イグナシオ・フレタ(松)?
 この曲を始めて聴いたのが中学2年生の時。ギター協奏曲で凄い曲があるらしいといううわさを聴いていたが、ギター曲に全然興味のない友だちがその曲をたまたま録音したことを聴いて、早速ダビングしたが、最初の出だしが録音されずカットされてしまった。しかも音がすごく悪い。でもこの録音したテープを何回聴いたかわかりません。後でこの曲がアランフェス協奏曲であり、演奏者がジョン・ウィリアムスだと分かりました。
アランフェス協奏曲の録音は数多くありますが、このジョン・ウィリアムスの初めての録音がこの曲のベストだと思います。特に第2楽章のイングリッシュ・ホルンの響きの良さや、カデンツア前半のギターの響きと超絶技巧、カデンツア最後のラスゲアードのスピードと激しさは他の奏者の追随を未だに許していません。
このユージン・オーマンディ指揮の初回録音はその後何度かCD化されましたが、輸入版は音が小さく録音されてしまい、LP時代の原盤より聴きにくくなり迫力を感じなくなってしまいました。また10年くらい前に出た国内版のCDは原盤の音を加工してしまい、オリジナルの音が失われています。この録音はギターの音を小さく加工してしまったようですね。ギターを知らない技術者が加工したと思われます。なのでこのユージン・オーマンディ指揮の録音を聴くのであればLPか下の写真のCD(駅のスタンドで確か千円で買ったもの)がお勧めです。但し下のCDは楽章と楽章の間に別の音楽がかすかに聞こえるので神経質な方は気になるかもしれません。









⑦エンリケ・グラナドス作曲 詩的ワルツ集
 演奏:ジュリアン・ブリーム 録音:1982年 使用楽器:ホセ・ルイス・ロマニリョス(1973年製)

 原曲はピアノですがブリーム自身がギターのために編曲。全曲ではありませんが、ギターの演奏に適した曲のみを選んで編曲している。
 編曲の素晴らしさもさることながら演奏はピアノ以上のもの聴かせてくれる。アルベニスやグラナドスのピアノ曲のギターへの編曲物は大抵、ピアノの演奏と比べると聴き劣りするのですが、ブリームの演奏は全く逆です。ピアノを弾く方も是非聴いてもらいたいですね。
 ブリームが交通事故で怪我をする直前の録音で彼の最盛期の演奏です。





⑧アグスティン・バリオス作曲 最後のトレモロ
 演奏:バルタサール・ベニーテス 録音:1976年 使用楽器:イグナシオ・フレタ(表面板:松、1956年製)

 この曲を最初に聴いたのは1984年ごろだったであろうか。兄がラジオからの録音したテープを聴いたのがきっかけです。とにかく凄い衝撃を受けました。この曲の美しさに惹き込まれただけでなく、演奏者であるバルタサール・ベニーテスの音楽性に感嘆した。トレモロが1本の糸のように途切れることなく、乱れることなく奏でられます。トレモロ奏法に対する認識が彼の演奏で開眼させられ、強い影響を受けました。トレモロがただ美しいだけでなく、曲の解釈や音楽の自然な流れ方が素晴らしく、間違いなくこの曲のベスト盤です。
就職で東京に出てきてから間もなくしてこのレコードを永福町のアンドー楽器店でやっと見つけました。
バリオスのワルツ第3番と第4番も収録されていますが、この曲の演奏も超名演です。この曲のベストの録音と考えて間違いありません。
バルタサール・ベニーテスはその後、バッハとスカルラッティ、ピアソラのアルバムを出しましたが、その後は録音を出したという情報は聞きません。素晴らしい演奏家なのに実に残念です。





2.ピアノ曲

①ガブリエル・フォーレ作曲 夜想曲第1番
 演奏:ジャン・フィリップ・コラール 録音:1973年

 歌曲、室内楽、管弦楽、ピアノ独奏など幅広いジャンルで膨大な曲を作曲したフランスのフォーレ。ピアノ曲としては組曲「ドリー」が有名であるが、意外に共に13曲からなる夜想曲や舟歌の存在は知られていない。
しかし夜想曲と舟歌こそフォーレの作曲家としての真骨頂を知ることができる。
この夜想曲第1番はフォーレの夜想曲の中で最も美しく夜の静けさを感じ取ることの出来る名曲です。私の最も好きなピアノ曲です。
この夜想曲は今までかなりの数の録音を聴いてきましたが、第1番で名演と呼ぶにふさわしい演奏はなかなかありません。私が数多く聴いてきた中で最も感動を得ることの出来る演奏は、ジャン・フィリップ・コラールのものに他なりません。
音の使い方、テンポ、解釈などどれを取っても素晴らしい演奏で、これ以上の演奏はありません。超名演です。





②ガブリエル・フォーレ作曲 夜想曲第6番
 演奏:ジャン・ドワイアン 録音:1970~1972年 使用楽器:ベーゼンドルファー

 コラールと同じくフランスのピアニストで1907年生まれだから、ジェルメーヌ・ティッサン・ヴァランタンとほぼ同世代である。マルグリット・ロンに教えを受け、ロンの後任としてパリ音楽院のピアノ科教授にまでなった人である。
 ドワイアンの演奏は正統的な解釈でありながらものすごい感情エネルギーを感じることがあります。この夜想曲第6番の演奏はマルグリット・ロンの影響を受けていますが、夜の静かな時に聴いているとその感情エネルギーが伝わり脳が覚醒してくるのがわかります。
この第6番も第1番と同様数多くの演奏を聴いてきましたが、これ以上の演奏はありません。





③ガブリエル・フォーレ作曲 舟歌第1番
 演奏:ジャン・ドワイアン 録音:1970~1972年 使用楽器:ベーゼンドルファー

 フォーレで初めて聴いたピアノ曲がこの舟歌第1番。演奏はジャン・フィリップ・コラールのものでしたが、後でジャン・ドワイアンの録音を聴き、この曲がますます好きになった。
 比較的シンプルな曲ですが、舟歌の雰囲気を良く出した美しい名曲です。短調と長調の対比が素晴らしく、特に長調へ転じてからの高まりは凄いです。ドワイアンは正統的ともいえる演奏法を土台にしながら、よく晴れた海の上での喜びや幸福感を非常に上手く表現しています。この曲もドワイアンの演奏を聴いていると脳が覚醒してきます。





④フェデリコ・モンポウ作曲 歌と踊り第2番
 演奏:フェデリコ・モンポウ(作曲者自演) 録音:1974年

 ギター曲の所で紹介しましたが、スペインの作曲家でピアノの詩人と言われ、スペインの音楽を素材にして数多くのピアノ曲を作曲した。その曲は華麗なものは一切なく、シンプルで素朴でありながら深い詩情を湛えたものである。
 この歌と踊りはモンポウの代表作ですが、私は第2番が最も好きです。しかも作曲者自身が81歳の時に録音した自演によるものです。
 モンポウの演奏は凍った心を溶かすほどの力を持っています。ピアノでこれほど聴く人の心に入っていける演奏は他にないのではないでしょうか。





⑤チャイコフスキー作曲 ピアノ協奏曲第1番
 演奏:アルトゥール・ルービンシュタイン、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮、ボストン交響楽団 録音:1963年

 この曲を初めて聴いたのが小学校3年生くらいの時かな。たいして音楽好きでもない父親が珍しく買ってきたクラシックのレコードがこの曲でした。当時小学生だった私はこの曲の良さが分かるわけがなく、最初の出だしだけしか覚えていない。
 しかし中学3年生の時にふいにこのレコードをかけて聴いてみて感動し、瞬く間にこの曲のとりこになりました。家族が寝静まった深夜に、居間に置いてあったステレオにヘッドフォンをつなぎ、よく聴いていました。
 その後アルゲリッチやリヒテル等の演奏も聴きましたが、やはりルービンシュタンの演奏が私のベスト盤です。ルービンシュタンの第1楽章の出だしが好きですね。強すぎず、優しく優雅なタッチが素晴らしい。



3.マンドリン・オーケストラ

①藤掛廣幸作曲 スタバート・マーテル
 演奏者、録音年:不明

 マンドリン・オーケストラの曲はオリジナル、編曲ものを合わせても膨大な数になります。私は大学時代にマンドリン・オーケストラに所属し、それなりの曲を演奏してきましたが、鈴木静一や藤掛廣幸の曲は名曲といえる曲がかなりあります。
 この藤掛廣幸作曲のスタバート・マーテルは私の最も好きなマンドリン・オーケストラ曲です。
 藤掛廣幸の曲には他に、グランド・シャコンヌやパストラル・ファンタジーなどの名曲があります。
このスタバート・マーテルは学生時代に演奏していた時はあまり印象に残らなかったのですが、10年ほど前にふいに藤掛氏の曲を聴きたくなり、数枚のCDを入手して聴いた中で一番感動した曲でした。
 この曲を聴いていると途中で旋律や和音や下降していく部分があるのですが、この部分を聴くと70年代の私が中学生だった頃を思い出します。今までの人生で一番良かった時代、夕暮れ時の美しい景色が浮かんできたり、ギターやバレーボールに熱中していた自分がよみがえってきます。
 この曲のギターパートは伴奏が殆どで、和音やアルペジオの繰り返しですが、それでも演奏することに満足が得られますね。今も時々譜面を出して弾くことがあります。





4.合唱曲

①石田衣良作曲、大島ミチル作詞 あの空へ~青のジャンプ~
 演奏:愛媛県立西条高等学校 (平成21年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部 全国大会)

 合唱曲といってもNHKや全日本合唱連盟主催のコンクールでの高等学校部門の演奏です。
 今までこれらの合唱コンクールの演奏を数多く聴いてきましたが、この「あの空へ~青のジャンプ~」の西条高校の演奏が最高の演奏です。私の聴くあらゆるジャンルの音楽の中でも最も聴く回数の多い演奏です。
 これほど聴く人に力を与えてくれる合唱曲の演奏は他に聴いたことがありません。この曲を聴くと、西条高校の生徒たちがものすごい集中力で演奏していることがわかります。そしてその演奏はひたむきで無心そのものです。彼らから伝わってくるのは歌うこと、演奏することの喜び、そして真っ直ぐな気持ちです。全く凄いとしかいいようがない演奏です。この演奏に出会えて本当によかったと思っている。







②千原英喜作曲 近松門左衛門作詞 混声合唱のための「ラプソディ・イン・チカマツ」から壱の段
 演奏:愛媛県立西条高等学校 (平成21年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部 全国大会)

 この自由曲の演奏も素晴らしい演奏です。「青のジャンプ」と共に最も聴く回数の多い演奏です。技術的にも音楽的にもハイレベルの演奏です。
 この演奏も演奏者たちの音楽に対する真っ直ぐな気持ちが伝わってきます。テノールが素晴らしいですが、私は女声が好きです。西条高校の女声は独特のものを感じます。広いホールの奥まで突き抜けていくような力があり、艶があり澄んでいて、繊細な情感も表現できている。
 この演奏を聴き終わるとまたすぐに繰り返し聴いてしまいます。





③三善晃作曲、谷川俊太郎作詞、混声合唱のための「地球へのバラード」より、沈黙の名
 演奏:北海道立札幌北高等学校 (平成12年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部 全国大会)

 三善晃の素晴らしい合唱曲であり、素晴らしい演奏です。聴いていてこれほど心を揺さぶられる演奏はありません。心の奥底からしまいこまれていた感情が湧き出てきます。
 北高の女声は澄んでいて聡明感があります。男声は気持ちや感情を臆することなくストレートに表現してくる。高い技術力に裏づけられなければ出来ないことだけど。
 この録音は手に入れることができず、東京へ用事で出かけたときに東京文化会館の資料室で聴かせてもらっています。なんとしてでも録音を手元に置いて聴きたい。

④大熊崇子作曲 石垣りん作詞 この世の中にある
 演奏:福島県立安積女子高等学校(現安積黎明高等学校) (平成11年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部 全国大会)

 この演奏は安積女子高等学校や安積黎明高等学校の過去の演奏の中でも非常に素晴らしいものだと思います。
 合唱曲の演奏の真価は、奇をてらったような現代的な曲を上手く歌うことではなく、このような素朴で短い曲を作曲者、作詞者、演奏者、そして聴き手が一体となり気持ちが深いレベルで共有できるレベルまで演奏できることにあると思います。
 この安積女子高校の演奏を聴くと気持ちが洗われてくるのがわかります。聴き終わると何かほっとしたようなやすらぎや安心感のようなものを感じます。それは演奏者達のもつ真の感情が聴き手の心の奥に伝わるからなのです。

4.交響曲

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