緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

今年の抱負2017(2)

2017-01-08 00:11:28 | 音楽一般
1.合唱(続き)

昨年も高等学校のNコンブロック大会(関東甲信越)と全国大会の両方を、生演奏で聴くことができた。
この両大会の感想は以前記事にしたが、ここで振り返ってみたい。

関東甲信越地区のブロック大会であるが、Nコンのホームページでこの大会の動画を見ることが出来、何度か再生してみた。
動画を見て、また演奏を聴いて、やはり生演奏で感動した学校は改めて聴いてもその感じ方に間違いはなかったことに気付く。
今年の課題曲はあまり聴き応えがなかった。
詩も曲も若い方の手によるものであるが、やはり力に欠ける。残念ながら長く何度も聴き続けるだけの力量に欠けていると感じた。
各出場校の課題曲の演奏を聴いたが、差異が付きにくく、演奏の評価が難しかった。
いい曲は、演奏の良し悪しの差異が大きく表れるものだと思う。
しかし自由曲は聴き応えのある曲、演奏があった。
ブロック大会直後の記事でも紹介したが、次の3校の演奏が強く印象に残ったし、素晴らしい演奏だった。

①演奏順2番目:長野県伊那北高等学校
 自由曲:混声合唱のための「どちりなきりしたん」からⅣ

②演奏順位8番目:東京都府中西高等学校
 自由曲:O Heiland reiβ die Himmel auf(おお 救い主よ、天を開いてください)

③演奏順位12番目:山梨県立市川高等学校
 自由曲:O magnum mysterium(おお、大いなる神秘)

①の千原英喜作曲、混声合唱のための「どちりなきりしたん」からⅣ、はとてもいい曲だ。
テノール独唱による聖書の一節(ラテン語?)で曲が始まる宗教色の強い曲。
長野県伊那北高等学校の演奏は地味であるがとてもいい演奏だ。
本当に素朴で心に染みる演奏だ。地味で純粋な演奏でないと聴き手を感動させられない。
演奏人数30名ほどで少ないが、音量は大きい。
この音量は力任せに力んで出した音量ではない。無理のない自然な「強い音」という感じだ。
「大きな音」ではない。
今回の大会も、力任せに大音量で歌っている学校がいくつかあったが感心しない。
合唱での「大音量」は迫力感を与えられるが、それ以上のものはない。
聴き手の心を突き抜けるような「強い音」が欲しい。
この「強さ」とは、物理的な音の大きさではなく、「感情」の強さだと思う。
この「感情」の強さは、歌い手の普段の心の在り方によるものではないか。
「感情の凝縮」、「感情の強さ」と「美」とが融合しないと、聴き手を感動させられない。
とくに長野県伊那北高等学校の女声にそのような要素を感じ取ることができた。

②のO Heiland reiβ die Himmel auf(おお 救い主よ、天を開いてください)は難曲だ。
今回の審査は外国語による演奏に対し、厳しい評価をしたようだが、難しいことへチャレンジしたこと、完成に至るまでのプロセスに対し、もっと評価すべきだ。
母国語ではない異国の言葉、それも古い時代の言葉を歌って、母国語と同等の発音を期待するのは高校生にとっては無理。
昨年の夏に、日本の五木の子守唄をフランスの有名な少年少女合唱団が歌う録音を聴いたが、日本語の発音はさずがに不明瞭な部分はあったものの、曲の核心は十分に伝わってくるものであった。
このような審査をすると、曲に対する選択肢が狭まり、チャレンジすることに及び腰となり、無難な演奏をするようになりかねない。
東京都府中西高等学校の演奏、特に女声が力強く透明で、説得力があり、よく伸びる音だ。いい歌声。
(人数も女性は男性の2倍ほどの構成だ)
しかし決して背伸びした歌い方をしない。高校生らしい自然な歌い方にほっとする。
このような宗教的な曲を、成人のような大人びた音色でヴィブラートを掛けた歌い方をする学校があるが、いいとは思えない。
生演奏を聴いた時にも感じたが、聴き終わった後も、繰り返し聴いていたい、という気持ちを起こさせるような演奏だった。

③のO magnum mysterium(おお、大いなる神秘)も表現の難しい曲だ。
冒頭の、いろいろな音程の音が交錯する部分はまさに幻想的。
女声の中でも、最低音のパートと最高音のパートとのレンジの幅が広く、曲のハーモニーに厚みを与えている。
何度も聴かないとこのハーモニーの素晴らしさは伝わってこない。
よく聴いてみると、この山梨県立市川高等学校の演奏レベルが凄く高いことが分かる。
上手いのに損していると思う。上手いだけでなく、表現力も多彩、豊かで、しかもそれが隠し味のようになっているところが素晴らしい。あまりにも自然な表現なので、なかなか気づかないのだ。
こういう曲は1回聴いただけでは真価を理解できない。

今回聴いたブロック大会で印象に残った3校の指導者は、見る限り、生徒たちには音楽の素晴らしさを感じ取ることを最優先していると感じた。
賞なんかより、まずそれが一番。音楽をみんなの手で最高に素晴らしいものに完成させる、その気持ちだけを持ち続けるだけで十分なのだ。

(Nコン全国大会の振り返りは後日にします)
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