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緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

渡部康夫著『愛と栄光のハーモニー』を読む

2012-05-05 23:05:06 | 合唱
こんにちは。
ゴールデンウィークの連休も明日(6日)で終わりです。
夜になると虫やかえるの鳴く音が聞こえるようになってきました。
今日、東京都内にある大きな図書館に行って来ました。元々仕事に関係する事について調べごとをする計画だったのですが、朝から頭がボーとしており、仕事に関する本を読む気になれなかったこともあり、何か別の本を読もうかと思案しているうち、前から読みたいなと思っていた『愛と栄光のハーモニー』(1989年出版。現在絶版)のことを思い出しました。
そして蔵書検索するとこの本があることがわかり、早速閲覧を申し込みました。
この本は合唱好きの方であれば殆どの人が知っていると思いますが、福島県立安積女子高校(現安積黎明高校)の合唱部を全国一になるまで育て上げた故・渡部康夫さんの著作です。
昭和50年代半ばから昭和60年代初めにかけて、全日本合唱連盟主催の合唱コンクール全国大会で7年連続金賞受賞に導き、今日までの安積女子高校や共学となった安積黎明高校の輝かしい活動の礎を作った方です。たしか全日本合唱コンクール全国大会では30回以上も連続金賞を受賞し、昨年度は金賞と共に文部科学大臣賞も受賞したことは記憶に新しい。
昭和50年代というと私も高校生だった時期です。
今日、この本を借りて半分近く読みましたが、感動しました。久しぶりに本を読んで感動しましたね。残りの半分も近いうちに読みたいところだ。
渡部さんの音楽にたいする実力も大変なものなのですが、それ以上に教育者として非常に素晴らしい方であることに感動したのです。
本の中で「深夜のパニック」と題する節があり、渡部さんが生涯忘れることのできないコンクールとなったという昭和52年の東北支部大会での出来事が書かれていました。
以下その内容を要約します。
当時東北支部大会では、参加人数により、A(51名以上)、B(31~50名)、C(30名以下)の3区分に分けていたのだが、安積女子高校の修学旅行が丁度この支部大会の時期に重なり、2年生が大会に出れなくなった。そこで渡部さんはパート要員数のバランスなど考え悩んだ挙句、全員参加できず3名出場できないがB区分で申し込んだ。うまく支部大会を1年生と3年生で乗り切れば、全国大会に出場でき、そうすれば2年生も含め全員で参加できるという期待もあったからだ。
しかし3名出場できないことを1日延ばしに延ばし、とうとう大会前日の夜まできてしまった。そして出場者をくじ引きで決めた結果、3名が抽選から洩れてしまったのである。この3名は普段から人一倍練習熱心だったという。
大会のために宿泊していた旅館の部屋で、火事かと思うくらいの泣き叫ぶ声が響き渡り、渡部さんは生徒たちの部屋に駆け込んだ。
出場できない生徒も出場する生徒も先生もみんな泣いたという。
このときの心情を渡部さんは、「私にとって、毎日一緒に練習してきた生徒のなかから、何人かを切るということは耐え難い行為だった。」、「勝敗にこだわらずに『A区分』で出るべきだった、と後悔しながら、私はリーダーに人選を委ねたのだった。私は、自分の卑怯さ、ずるさに身をさいなまれる想いだった」と述べている。
ここで感心するのは、渡部さんが生徒たちに自分のどうすることも出来なかった気持ちを正直に出したということです。また自分のことよりも生徒たちが喜ぶ姿を第一に考えているんだなと思います。そして部員が100名を超えるのに全員で大会に出ることを何よりも望んでいるということ。
大会で今まで頑張って練習に耐えてきた全員が出場できないなかで、金賞なり優勝しても本当の喜びは得られないのではないだろうか。スポーツのように定員が完全に決まっているのは仕方が無いだろうが、文化系の部活動は全員参加できることに意義があると思う。
合唱コンクールではNコンは定員が決まっているが、全日本合唱コンクールのBグループは定員の上限がなく、130名くらいで参加する学校もある。
渡部さんはNコンのように人数に上限がある大会に出場する生徒の人選にも苦労したようです。公平を期すために、近距離通学者や必修クラブ選択者を優先して選んだり、定員数が3年生の人数とたまたま同じで、パートバランスも問題ないから3年生だけ選んだりと、随分工夫したようだ。
色々な考え方があって当然ですが、私は一生懸命練習を頑張ってきたのに一度も大会で歌うことができないということはあってはならないと思う。全員が一生懸命練習してきたことが前提であるが、全員参加で一丸となって歌った体験の方が、精鋭だけに限定して賞を得ることよりもはるかに大きな喜びを勝ち得ることが出来るのではないでしょうか。
やはり全員で感じてこそ本当の喜びですよ!(社会に出たらもうそのような体験はできないし)
他にも色々感動的な体験が書かれているのですが、別の機会に紹介したいと思います。
とにかく驚くのは部員数が多い時で130名くらいもいるのに、脱落して退部した生徒たちも含めて一人ひとりのことを考えているということが伝わってくることです。
また偉業を成し遂げたのに謙虚で自分が凄い人間だと思っていないところがいい。常に生徒たちの努力を讃えている。
私もこのような先生に出会いたかったですね。以前のブログで述べましたが、安積黎明高校合唱部の生徒たちを見ていると真面目だし、素朴で謙虚さが伝わってきますね。渡部さんが作り上げた伝統を引き継いでいるのだと思います
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