緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 月光 を聴く(2)

2013-02-11 21:03:09 | ピアノ
こんにちは。
今日は冷たい北風の吹く、とても寒い1日でした。
せっかくの3連休ですが2日間は仕事でつぶれてしまいました。
年が明けてからピアノ曲を聴く機会が増えてきました。もともとピアノ曲を聴くことは好きな方でした。フランスのフォーレやスペインのモンポウ、アルベニス、グラナドス、そして有名なショパンなど限られた作曲家の曲を中心にこれまで聴いてきました。
しかし今年はベートーヴェンやモーツアルトなどの作曲家の曲をじっくり聴いてみたいと思うようになりました。
まず手始めに聴いたのが以前ブログで紹介したベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番Op.27-2 月光」です。
手持ちの3枚のCDを紹介しましたが、その後更に何人かの演奏家の録音を聴きました。
私は好きな曲、気に入った曲はどうしても聴き比べをしてしまいます。そして自分にとって最高の演奏が見つかるまで色々探し求めてしまいます。
この月光も随分とCDを買ってしまいました(多くが中古ですが)。
さて今まで聴いた演奏は下記です。

①ゲザ・アンダ(1921~1976、録音:1955年)
②エミール・ギレリス(1916~1985、録音:1970年、ライブ)
③アナトリー・ヴェデルニコフ(1920~1993、録音:1974年)
④フリードリヒ・グルダ(1930~2000、録音:不明)
⑤アルトゥール・シュナーベル(1882~1951、録音:不明)
⑥ウラジミール・ホロヴィッツ(1904~1989、録音:1972年)
⑦グレン・グールド(1932~1982、録音:1980年)
⑧ヴィルヘルム・バックハウス(1884~1969、録音:1952年)
⑨ルドルフ・ゼルキン(1903~1991、録音:1941年)
⑩ヴィルヘルム・ケンプ(1895~1991、録音:1965年)
⑪ヴァルター・ギーゼキング(1895~1956、録音:1956年)
⑫アルフレッド・ブレンデル(1931~、録音:不明)
⑬ソロモン・カットナー(1902~1988、録音:1951年)

この中で最も印象に残り感動が得られたのは次の3枚。

①ゲザ・アンダ



③アナトリー・ヴェデルニコフ



⑬ソロモン・カットナー



この3人に共通しているのは原典を極めて尊重した演奏をしていることです。
有名な第1楽章、Adagio sostenutoの3人の演奏は速度の差はあるものの、終始静かな深い夜から生まれる鼓動を乱れることなく刻んでいます。
一説によるとこの第1楽章は葬送の曲を表していると言われていますが、作曲者が何かの折に聞いた音楽の形式的側面に閃きを得ているとしても、主題は暗黒の夜から生まれる静かな時の刻みや、夜のしじまの中で湧き出てきた幻想的な霊感にもとづいていると私は考えています。
だからこの第1楽章は速すぎず、強すぎず、常にテンポは崩さず、静けさを保つ必要があると思います。
楽譜を見ると常にピアノもしくはピアニッシモであることを要求しているし、曲の途中で速度を変化させる指示は出てきません。



第1楽章、Adagio sostenutoの速度のとらえかたは奏者によって驚くほど違いがあります。
因みに一番短いのはグールドの4分11秒、一番長いのはソロモンの8分26秒。実に2倍の差があります。グールドの速度は常軌を逸していると思う。
またバックハウスのように特定の音を強調したり、テンポを速めたりするのは好きではないですね。
下の譜面の箇所をクレッシェンドで徐々に大きくしていく奏者もいますが楽譜の指定にはないです。上記の3者はさすが、原典どおりに静かに弾いている。



第3楽章は30歳のベートーヴェンのほとばしる情熱や、若さゆえの苦悩や葛藤が表現された演奏が好きだ。その点アンダとソロモンは聴いていて非常に気持ちが高揚してくる。技巧も超一流です。
ヴェデルニコフは一聴すると地味に感じますが、じっくり聴くと実はそうではないことに気づかされます。感情を内包したような表現というか。
ヴェデルニコフの演奏は極めて楽譜に対し誠実で、一切の手抜きをしない素晴らしいものです。

この3人の中で1枚を選ぶとしたらゲサ・アンダですね。好みもありますが私は感覚的にアンダを一番聴いてしまいます。
自分にとっての最高の演奏を探し求めることはお金も時間もかかりますが、貴重な財産になると思っています。探し求めて得た最高の演奏は一生何度でも聴いてしまうにちがいありません。
コメント