緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

弦高は12F上だけでなくローフレット上も確認したい

2024-07-21 21:54:38 | ギター
ギターの弾きやすさを決める要素としては、弦長、弦の張力、ネックの太さ、弦高などがあるが、最も影響度が大きいのは「弦高」だと思う。
弦高が0.1mm変化しただけで弾きやすさの感じ方が変わってくる。

やっかいなのは、製作された時点での弦高がその後ずっと同じ高さを維持し続けることは稀であり、変動の幅に差異はあるものの、大抵は時の経過に伴い変化してしまうことである。
これは木材という天然の素材が環境変化や使用状態により収縮したり曲がったりする性質を持っているためなのであるが、弦高が変化する原因としてあげられるの次の2つであると思う。

1.湿度や温度の変化による変動
2.弦の張力による変動

1と2の要因が連動して弦高が変動することもある。
私の持つ楽器の経験からすると、上記1による変動としてありうるのは次の3つである。

①高温多湿の環境に置かれた場合で、指板の黒檀とネックのセドロ(マホガニー)の収縮率の違いでネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。
②同じく高温多湿の環境に置かれた場合で、ブリッジが持ち上がる、表面板が脹らむことで弦高が上がる。
③しばらくの間(数か月)高温多湿の環境に置かれた楽器を、冷房や暖房で急激に湿度の低い環境に置いた場合、ネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。

以前、ネックを順反りさせてしまった楽器は、①のように6月、7月の高温多湿期においてたまたま張力の強い弦を張ったときに生じた。
また関東圏の冬場でも室内が結露で多湿(湿度70%くらい)の部屋で数カ月過ごした楽器を帰省先の北海道の実家に持って行ったときに、暖房により極度に乾燥(湿度30%くらいか)する部屋にしばらく置いたときにも順反りさせてしまった。ただしこの場合、元の環境に戻してから順反りは解消したと記憶している。
また最近、フレット浮きを修理した楽器が、梅雨時の多湿期を過ぎ、エアコンをフル稼働するようになってから順反りしてしまった。これも梅雨時の室内の湿度が70%くらいだったのが、エアコン稼働時に40%くらいまで急激に低下したことが原因と思われる。
加湿器を入れて何とか対策しているがそれでもなかなか湿度は上がってくれないものだ。

ネックが順反りしてしまうと弦高が上がるので当然それまでよりも弾きにくくなる。
とくにローポジション付近は弦の張力が強いので、押弦しにくくなるというわけだ。セーハがきつくなって、アレッ変だって感じて順反りに気が付くことが多い。

今回順反りしてしまった楽器の弦高を⑥弦の1F、3F、5F、12F上でそれぞれ測定してみた。
また、他の所有楽器数台とどの程度差異があるかも調べてみた。
測定結果は以下のとおり。

ギターA:1F上1.0mm、3F上2.0mm、5F上2.5mm、7F上3.0mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターB:1F上0.6mm、3F上1.6mm、5F上2.2mm、7F上2.8mm、12F上4.2mm、ネック:ストレート
ギターC:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.1mm、7F上2.6mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターD:1F上0.5mm、3F上1.4mm、5F上2.1mm、7F上2.5mm、12F上4.0mm、ネック:やや順反り
ギターE:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.0mm、7F上2.6mm、12F上3.6mm、ネック:やや順反り

ギターAはフレット浮きを修理した楽器であるが、修理後のネックは完全にストレートだった。その時点での12F上の弦高は3.9mmであった。
弦高が0.2mm高くなってもかなり弾きづらく感じるものである。
ギターAのローフレット上の弦高が他の楽器に比べて高い。よく見てみるとナットの高さが他の楽器に比べて高かった。フレット交換時に指板を調整したためであろう。
ただこの楽器は張力が弱いので弦高を低くするとローポジションで弦がびりついてしまう。そのためナットを調整するとしたらわずかしか出来ないだろう。

こうやって測定値を見てみると、1Fが0.5mm、3Fが1.5mm、5Fが2.0mm、7Fが2.5mmというのがある程度の標準的な高さなのかもしれない。
ちなみに弾きやすい楽器はギターCとギターDである。これらの楽器も当初はネックはストレートだったが、時の経過に伴いやや順反りした。
ギターBのネックは殆ど変化が無い。安定しているし、若干反ったとしてもまもなく元に戻る。

ちなみにギターを弾かないときに弦を緩めるかどうかについてであるが、私は必ず緩めている。緩めても楽器に影響は無い(影響があるという製作家もいますが)。
現代ギター社や有名楽器店で出している取扱い説明書には、楽器を弾かないときは必ず弦を緩めるように記載してある。
多くの楽器を扱ってきた楽器店の方も、弦を緩めるように勧める方が多かった。
私の場合、張力の強い弦を張ってネックを反らしてしまった経験があるので必ず緩めている。
湿度、温度の変化が大きい時期に、弦の張力が加わってネックやブリッジ付近が変化することがあるので要注意だ。

蛇足だが、今日ギターCで弾いた曲を録音してみた。

スペイン舞曲第5番アンダルーサ 2024年7月21日 夕方


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境界線を持つことの重要性

2024-07-15 21:37:32 | 心理
今から35年くらい前だったであろうか。
うつ病、対人恐怖で苦しんでいた20代半ばの頃に読んだ加藤諦三氏の著作の中に、「他人の不快感情の責任を持つ必要はない」という一文があったのだが、その言葉が何故かずっと心に残り続けてきた。
他の内容ことは殆ど記憶に残っていないが、何故だか分からないけど、ある言葉だけが記憶にずっと残り続けることがある。
そういう言葉というのは今から考えると、自分にとってとても重要な意味を持ち、必要であることを知らせてくれるものではないかと感じるのである。

今日たまたま、Youtubeでこの「他人の不快感情の責任を持つ必要はない」という言葉の意味を腑に落とさせてくる投稿に出会った。
投稿者は橋本翔太さんという方。
見た投稿は「相手の機嫌や感情に振り回されしまう人の解決策。HSP、相手の怒りや感情に反応してしま人の境界線の作り方」というタイトルの投稿。

橋本さんは、幼少期からの親との問題を乗り越え、大学院で臨床心理学や音楽療法を学び、公認心理士として多くの悩める方の問題を解決してきた方だ。
この動画の冒頭で彼が言っている言葉に強い感情が沸き起こってしまった。
ずっと心に引っかかっていた冒頭の言葉の意味が本当の意味で分かった。

彼は言う。
「相手の機嫌が悪いことに対してあなたは責任をとる必要はないし、そこで責任を取ろうというのはある意味相手をコントロールしようとすることでもあるんです。
相手の機嫌が悪い、ブスッとしている、怒っている、口をきいてくれないというのは相手が選んでやっていることなので、そこから先私たちはその相手に対して踏み込む必要はないし、踏み込んではいけないんです。
そのくらいの気持ちを持たないと境界線が弱い人はあっという間にここ(心)が侵食されてしまうのです。」

幼少期に不機嫌な親に育てられた人は、親の不機嫌の原因が自分であると解釈してしまう。
自分に何ら落ち度も責任もないのに、何の悪意もないのに、たまたま起きた出来事に対し他人が示した不快感情の原因が自分にあるという反応が無意識的に出てしまうのである。
不機嫌だけでなく、嫌み、中傷、冷遇、叱責、嘲笑など、そのような人の不快感情の発生原因を自分に結び付けてしまい、自分の責任と感じ、自分を傷つける。
自分のせいだと受け止めても何故か釈然としない気持ち、モヤモヤ感が残る。
この「釈然としない気持ち」というのが重要な感情だ。
釈然としないというのは、間違った受け止め方をしているということを教えてくれているということなのだ。

相手のマイナス感情の真意を見極め、客観視する。それが境界線を引く、ということであろう。
他人の心理に対し、境界線を引くことが出来なければ、早晩、心を病むことになるに違いない。自分がそうであったように。

この考え方ってものすごく重要だと思う。
人間心理は諸刃の剣である。
人生を穏やかに幸福に生きていくために、最重要な考え方のひとつだと言える。
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ペネロペ・クラウフォード演奏、ベートーヴェン作曲ピアノソナタ第32番を聴く

2024-07-13 22:43:11 | ピアノ
1週間ほど前に、Youtubeでベートーヴェン作曲ピアノソナタ第32番のいい演奏を見つけた。
ベートーヴェンのピアノソナタの中でもこの第32番や第31番はなかなかいい演奏に巡り合うことがない。
私が今まで聴いた中では、マリヤ・グリンベルクの1961年録音のメロディア盤(後で全集に収録されたものとは別の録音。トリトンというレーベルからCD化された)と、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの1988年のライブ録音の2つが最高の演奏だ。
この2つの演奏に出会ったときの衝撃は忘れられない。

今回Youtubeで出会った演奏は、アメリカ人の女性ピアニストで、ペネロペ・クラウフォードという方であった。
経歴を調べたが、殆ど情報を得ることが出来なかった。
Musica Omniaというレーベルからシューベルト、ベートーヴェンやモーツァルトのピアノ曲を収録したCDが数枚出ているようだが、全て現在では廃盤、中古品もモーツァルトのピアノソナタ集以外は探し出すことが出来なかった。

今回のベートーヴェン作曲ピアノソナタ第32番は第30番、第31番とのカップリングで2010年4月に録音されたもの。
注目すべきは、ベートーヴェン自身が作曲当時に使用していたウィーン製のコンラート・グラーフを使用して録音されたものであることだ。
この事実は後で調べて分かったのだが、はじめて聞いた第31番第3楽章の演奏において、何か音の立ち上がりが鈍い感じがして、違和感を感じたのである。

確かに音のサスティーンや立ち上がりの速さや反応の鋭さといったものは現代のピアノに軍配が上がるが、低音の、底から響いてくるような重厚な音や和音、和声の多層性といった要素においては現代のピアノには無いものを持っている。
そういえばこの当時のピアノを使って、エリー・ナイもピアノソナタ第32番を録音していた。この演奏はなかなかのものだったと記憶している。

ペネロペ・クラウフォードの演奏はかなりハイレベルだ。テクニックも音楽表現も優れている。
第2楽章の後半に現れるトリルの処理などは他の奏者を抜きんでている。
残念なのは第2楽章アリエッタの変奏で下記の箇所のリズムがやや甘かったことだ。



この部分のリズムと音楽性の両方を完璧に表現しているピアニストはマリヤ・グリンベルクとアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリしかいない。
しかしペネロペ・クラウフォードの演奏は単にテクニックの凄さというレベルを超え、今までこの曲の演奏で聴こえてこなかった音の交錯、豊かな低音の響きと中、高音部との音の分離といったものを感じさせてくれた。
とにく注目したいのは最後のトリルが続く部分。



あの幻想的な、人生で苦悩した人間が最後に悟りを得、幸福感に包まれ、光の粒子を浴びながら昇天していく様を描いたような箇所の、各々の音の独立性と音と音とが織りなす美しさの表現はこれまで聴いたピアニストの演奏には無いものであった。

録音が少ないのが残念であるが、もっと高く評価されてしかるべき奏者だと思う。

下記にYoutubeの投稿を貼り付けさせていただく。

Piano Sonata No. 32 in C Minor, Op. 111: I. Maestoso - Allegro con brio ed appassionato


Piano Sonata No. 32 in C Minor, Op. 111: II. Arietta: Adagio molto semplice e cantabile





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全身に猛烈な汗をかいた後に弾いたアルハンブラ

2024-07-07 22:08:12 | ギター
夕方、エアコンを付けていない部屋の温度が33度に達した。
その部屋で掃除機をかけたら全身汗だくに。
掃除が終わった直後に、全身、猛烈な汗が噴き出た状態でアルハンブラを弾いてみた。
ギターのバックの汗の水滴が付く。

前回録音したときよりトレモロの状態はやや甘いか。トレモロは爪の状態も大きく左右されるので、いい状態に巡り合うのは自分の場合殆ど無い。
しかしテンポはなかなかいい。
このテンポがもしかするとベストかもしれない。

全身に猛烈な汗をかいた後に弾いたアルハンブラ 2024年7月7日(日)夕方 使用楽器:フロートフレッツ
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久しぶりのアンダルーサ録音

2024-07-07 21:57:15 | ギター
昨日、今日もマンドリン合奏の個人練習で殆どの時間を費やす。
金曜日の夜には仙台の友人にzoomに演奏を聴いてもらったりした。

夕方に気晴らしに久しぶりにアンダルーサを録音した。例のごとく手に夥しい汗をかいた。
後半に旋律のうちの1音が抜けてしまったのが残念。

ひさしぶりのアンダルーサ 2024年7月7日(日) 七夕の夕方。使用楽器:フロートフレッツ





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