晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『天切り松闇がたり(五)ライムライト』

2019-12-15 | 日本人作家 あ
基本、テレビはニュースと旅番組、自然や動物のドキュメンタリー、あとは体の健康系番組はたまに見たりしますが、楽しみにしているといえばもっぱらBSプレミアムの火野正平さんの「こころ旅」と、「グレートトラバース」の再放送。

先日の夜、テレビをつけて地上波をザッピングしてたのですが、あまりに自分の見たい内容や趣味に合わず、消してネットで音楽聞きながら本を読んで
いました。あ、(つまらなかった)わけではありません。そのテレビを見て(面白かった)と思った方がいらしたらそれはそれで、あくまで個人の感想で。

さて「天切り松」シリーズの五巻です。まさか出ていたとは知りませんでした。

説明しますと、時は大正時代、松蔵という少年が、盗賊集団の仕立屋銀次の子分、通称「目細の安吉」に預けられます。そのいきさつは一巻にあります。

「目細の安吉」一家には「説教寅」こと説教強盗の寅弥兄ィ、、「黄不動の英治」こと夜盗の英治兄ィ、「振袖おこん」こと女掏摸のおこん姐ェ、そして「書生常」こと詐欺師の常次郎兄ィがいます。

で、今やすっかり白髪のおじいさんになった松蔵が、ふらりと警察署に寄って、留置場にいる人に、あるいは若い警察官だったり、自分が見聞きした一家の(武勇伝)を「闇がたり」といって、六尺四方にいる盗賊どうしにしか聞こえないヒソヒソ声で話して聞かせるのです。

一~四巻を読んで、もう涙、涙。電車の中や病院の待合い時間に読んでると「なにこの人泣いてんの」と思われたら恥ずかしいので、まだ未読という方は、なるべく自分の部屋、ひとりになれる場所で読んだ方がいいですね。

六作の短編です。

安吉親分の親分、松蔵にとっては大親分の仕立屋銀次が収監先の網走刑務所で亡くなったという知らせが。そこで安吉一家はかつての仕立屋一門に銀次の葬式のお知らせをしてまわることに。その葬式とは、大晦日に通夜、告別式が正月、場所はなんと・・・
という「男意気初春義理事」。

拘置所にいる女のもとに、白髪の坊主頭の老人が。その老人つまり(天切り松)が話し始めます。なんと松蔵の姉貴分のおこん姉ェがプロポーズされるのです。そのお相手は慶應義塾ご卒業でアメリカ留学帰りという若き財閥の当主なのですが・・・
という「月光価千金」。

寅兄ィはかつて日露戦争に出征し、かの二百三高地での生き残り。しかし部下は全滅し、終戦から二十年以上過ぎても、寅はかつての部下の家に行き線香を立て、相手が恐縮する額の香典を置いてまわり続けています。寅と松蔵は関東大震災の後に実家に戻ったという未亡人を探しに汽車で信州へ。すると寅が「箱師がいるぞ」と。箱師とは列車内専門の掏摸のことなのですが・・・
という「箱師勘兵衛」。

とある外国人女性が「人を殺しました」と警察署に自首します。その女性に天切り松が語り出したのは千代子という女性の話。千代子は教会のステンドグラスを眺めることで心が救われています。千代子を匿っている教会の神父は、近所に住む安吉に相談をします。じつは千代子は愛人を殺害して逃げているのです。しかもその愛人というのが口入れ稼業の大親分・・・
という「薔薇窓」。

(黄不動の英治)の義父は大工の棟梁。その棟梁が「一世一代の仕事をした」と。その仕事とは「花清」こと花井清右衛門の隠宅。じつはその清右衛門というのが英治の実の父親なのです。なぜ義父の棟梁が英治にそんな話をしたのかというと、息子の稼業は知っており(夜盗)、病気で休業中の英治に「俺の建てた家に忍び込めるもんならやってみろ」と・・・
という「琥珀色の涙」。

昭和七年、喜劇王チャップリンが来日します。浅草の映画館の映写技師の娘は父親が出征していて、きっとチャップリンさんは新作を持ってきてくれたので、お父さんもじきに帰ってくると信じています。それを聞いた寅は、帝国ホテルに(東京帝大教授)になりすまして住んでいる弟分の百面相こと書生常に頼むのですが・・・
という「ライムライト」。

「天切り松シリーズ」の四巻だったかな、当ブログで「浅田次郎さんの時代小説と暴漢(ピカレスク)小説がとりわけ面白く、このふたつが合わさったこの作品はいわば(面白くないわけがない)」と生意気にも評したのですが、全作ヤバイです。もちろん肯定的な意味ですよ。特に「薔薇窓」はもうヤバくてさらにズルイ。
コメント
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