『シェルブールの雨傘』の音楽をCDで聴く。
90分近くの映画の完全なサウンドトラック盤である。
若い頃、この映画をNHKで見たときに、眼からウロコが数枚はがれた。
ストーリー自体は単純だけれども、その色彩の鮮やかさと、何よりも、すべてのセリフがメロディであり(それでも、ミュージカルとも、オペラとも違ふ)、見初めて数分、その夢うつつのやうな世界に引きずり込まれた。
何と声と容姿の美しい女優だらうか!、と二十歳代の小生は驚愕し(当時、ドヌーヴの名前は知らなかったし、実は声優による吹き替へだったことも知らなかったー)、その哀切きはまる雪のラストシーンに感動したものである。
声優だけによるこの2枚組のCDでストーリーを追ふと、やはり、すべての音楽を創り出したルグランのとてつもない才覚と、リカーリの美しい声がこころに響き残る。
そして、あのラストシーンも、改めて聴いてみると音楽は意外にも淡々としてゐて、それぞれが互ひに幸せを求めた二人の一瞬の邂逅は、何を生むでもなく、かつての情熱と悔恨を降りしきる雪の中に押し殺すやうに別れて行くさまが彷彿と浮かんできます。
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