rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

EU離脱は本当にポピュリズムか

2016-06-25 14:11:08 | 政治

英国がEUに留まるか離脱かを問う国民投票は僅差でEU離脱が多数を占め、2年後の離脱に向けて準備に入ることが確定されました。英国のEU存続派を含め、日本を含めた諸外国の反応としては、EUからの離脱はEU圏内からの人の移動が自由であるため、貧しい地域からの移民が増加して地域社会が対応しきれなくなってきたことから、大衆が移民を拒否する、また民族主義を正面にかかげる右派、ポピュリズムの主張によるものであると批判しています。一方でグローバリズムの精神に則り、世界を受け入れてゆくことが理性的であり世界の経済にも有益であるとそれが規定の正しい姿であるがごとく上から目線で語る評論家が目立ちます。しかし私はそのような決め付けには違和感を抱かざるを得ません。

 

理性で煩悩を克服できるというのは既に否定された共産主義的思考である。

 

私有財産を否定し、計画経済で物を管理すれば全てうまく行くと考えた共産主義の実験は既に否定されました。人間は理性のみで生きてゆくことはできないのです。個々人の価値観や生き方が違うように、地域、民族によって社会のありようは異なります。それを統一した経済社会体制にしようというグローバリズムの考え方でうまくゆくはずはありません。結局うまくゆかずに末端の人達が苦労をする事に対しては力で押さえつけるか、「皆のために理性で我慢しろ」と強いることになります。

「世界は原始共産制に向かって進んでいる」というかつての愚かな信念と同じく「世界はグローバリズムの統一した価値観、経済観に向かって進んでいる」という宗教のような信念を恥ずかしげもなく語る学者がいます。そんな勝手な信念を押し付けられてはたまりません。世界は多様であり、多様性を保つことが進歩や予想外のカタストロフィーから人類滅亡を防ぐ担保になるのです。これは自然界における真実ではないでしょうか。共産主義経済と市場に任せれば全てうまく行くといった拝金資本主義経済は対極にありながらも、ともに理性を万能と考える類似した片手落ちの思想であり、どちらもその原理主義的な状態では人類全体の幸福につながることなどないのです。

 

ユーラシア大陸の両端にある政治経済共同体

 

ユーラシア大陸の西の端には、二つの大戦を経て力による統合ではなく、協調による経済統合を目指したEUおよびユーロ圏ができました。一方大陸の東の端には二千年前から力による多民族の統合を成し遂げた中国という政治経済共同体があります。ただし支配者はたびたび変わっており現在は漢民族が主体の共産党が支配しています。中国というのは中央権力がめちゃくちゃ強い欧州共同体のようなものと言えるのではないでしょうか。その中でEUにおける英国の位置は中国と日本の関係に似ていると私は思います。米国との強いつながりも同様でしょう。

 

今日本が中国を中心とするアジア共同体に属していて、人の移動が自由であり、チベットやウイグルから言葉の通じない移民たちが続々と日本国内に越してきて住みだしたとしたら明らかに困りますし、「共同体などに入らなくても日本は日本だけでやって行けます」となるのではないでしょうか。そこで諸外国から「理性的な判断をして中国経済圏にとどまれ」とか「移民を受け入れないのはエゴである」とか言われる筋合いはないと普通考えると思います。

 

ギリシャがEUやIMFの命令を聞かない政権を選挙で選ぶのはポピュリズムであると批判されます。フランスにおける移民排斥を訴える政党は超右翼とレッテルを貼られてやはりポピュリズムであると批判されます。米国の大統領選挙もトランプはポピュリズム、若者に人気のあるサンダース候補も人気のないクリントンと比較されるときはポピュリズムに分類されて批判されていました。国民が日々の生活に本当に困って「何とかしてくれ」という声に応えようとすることを「ポピュリズム」といって批判するのは誤りです。一部の既得権益者が金融支配を持続できるグローバリズムの発展だけが正しいことであるような幻想は否定しないといけません。またグローバリズムを阻もうとする勢力を「ポピュリズム」と言って一段下の問題であるように批判するのは民主主義の否定でしかありません。今世の中で問題になっている事のほとんどは1%の既得権益層が推進するグローバリズムと99%の一般民衆の日常生活を守ろうとする戦いであるように見えます。


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