rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

欲望の資本主義2021 & 特別編 感想

2021-05-07 22:16:40 | 社会

I.   欲望の資本主義2021「格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時」

やめられない、止まらない、欲望が欲望を生む、欲望の資本主義。コロナが拡大させる格差。問題の本質は?出口は?BS1恒例の異色教養ドキュメント。

世界で進む格差の拡大、固定化。その潮流が今日本を飲みこむ?低所得世帯の割合が上昇、中間階級は消滅するとの予測もある。中間層の喪失がもたらす社会の混乱は?脱工業化へと変わった、富を生むルール。私たちはどこで間違えたのか?経済の葛藤が、社会不安を引き起こす。今、何が起きているのか?資本主義の変質を捉え、社会構造の問題を解剖する。不透明な世界情勢の中、世界の知性とともに、社会の閉塞感を解く旅が始まる。(NHK番組サイトから)

2016年から始まり、毎年はじめに「欲望の資本主義」と題して、前の年からの経済状況を分析し、新しい年にどう展開してゆくかの展望を描くシリーズですが、内容も濃く、いつも見ごたえのある番組です。グローバリズムの矛盾による格差拡大や、個人生活の無機質化を浮き彫りにして当代一の経済学者の解説を交えて分かりやすく問題点を明らかにしてゆく過程が良いと思います。

 

今回の2021年版では、「新型コロナウイルスによるパンデミックが社会の歪みと格差拡大を浮き彫りにした。」としているが、格差が拡大していることはそれ以前からの傾向で、コロナ禍の経済自粛によってその格差が助長されたというのが正確な所だと思う。

 

 この格差拡大を招いた要因は、グローバリゼーションに基づく新自由主義経済が行きつくところまで行って、経済規模が拡大しつつある段階では富の再配分によって貧しい人にも恩恵が広がっていたものが、地球全体に広がった事で経済拡大の恩恵が一部の富裕層のみに還元され、固定化されるシステムになってしまった事が原因である。

 

1980年頃から資本主義は、実体経済から金融経済へ、有形資産から無形資産へと変化した。これは、富を生むルールの変更であり、コンピューター技術の発展が無形資産へのシフトを後押しした。また現在は、株価が企業の現実を表すものではなく、欲望に基づく投資家の期待値となってしまっている。つまり、株式市場が欲望の資本主義そのものを表している。

 

以下に番組内で提言された事項で将来良い方向に向かう指針になるかもしれない、印象に残ったものを備忘録的に記しておきます。

 

〇 社会主義経済が消滅してしまった現在、資本主義の悪を改める(経世済民になっていない)には資本主義のアンチテーゼを探すのではなく、どの資本主義が望ましいかを選択する必要がある。つまりグローバリズム(新自由主義的)、国家資本主義、北欧型の大きな政府、リバータリアリズムの小さな政府など。

〇 経済は成長が必須という固定観念にとらわれる必要があるか(特別編でも触れられた中世的経済の見直し)

〇 新型コロナ感染症はロックダウンによる「仮想の現実化」を促したが、一方で輸送の停滞に伴う原材料不足や医療・ワクチン供給といった物質主義に基づく実体経済の重要性を再認識させた。

〇 AIはヒトと競合してヒトの存在(仕事)を奪う方向で発達したが、あくまでヒトに協力する形で発達させなければならない。

〇 GAFAMは物質以外の価値(情報)を数少ないプラットフォームが独占する事でそれが生み出す利益までも独占してしまったが、物質以外の価値を独占する事への禁止(情報の独占禁止)がこれからの経済発展(利益の均霑化)に必須である。

〇 人々の想いを無視した政策は必ず失敗する。(Deep stateは肝に銘ずるべし)

 

 

II.   欲望の資本主義 特別編 「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」

 

「息切れ倒産」も徐々に露呈、苦境にある業種と回復に向かう企業の違いが鮮明になりつつあるコロナ2度目の春。企業情報のプロの動きを追い、生き残りの現実を追う。一方バブル以来の高値の株式市場は?アメリカも200兆円の経済支援で急回復への期待が高まるが、同時にバブル崩壊の足音が聞こえるとの指摘も。緊迫する米中関係も相まって、複雑化する日本、世界。コロナ後の世界を観測、世界の知性たちとともに考察する。逆転の発想は? 

 

(出演)

◆ダロン・アセモグル(マサチューセッツ工科大学教授/政治経済学)

◆アンドリュー・W・ロー(マサチューセッツ工科大学教授/金融学)

◆エスター・デュフロ(マサチューセッツ工科大学教授/開発経済学)

◆レベッカ・ヘンダーソン(ハーバード大学教授/経営コンサルタント)

◆早川英男(エコノミスト/元日銀理事)

◆小幡績(慶應大学准教授/元大蔵省)

◆澤上篤人(独立系ファンド会長/投資家)

(NHKの番組サイトより)

コロナ感染症で大きく落ち込んだ経済はコロナ後回復するが、内容は2極化してゆく

 

今回のキーワードとなっているK字回復とは、番組にも出演しているレベッカ・ヘンダーソン氏が提唱する「コロナ後の世界で経済回復する中で、伸びる業種とそのまま衰退する業種に分かれてゆく(図)」とするもので、この現実を踏まえて我々はどう対応するべきか、が問われます。

 

慶応大学の小幡氏は「弱い会社を救うのではなく、弱い個人を救え」と説きます。それは北欧型の福祉につながるもので、ゾンビ企業は潰して個人を経済的に援助した上で新たな職で働けるように社会として企業をscrap & buildしてゆく事が大事と言います。

 

一方でMITのロー教授やアセモグル教授は、今までの様な「目先の利益」のみを追求する資本主義ではなく、20-40年先を見据えた経済学の必要性を説きます。それは1990年代に日本の経済学者 宇沢弘文氏が提唱した「社会的共通資本」の概念に通じるものであり、教育や医療、公共衛生、文化保護といった直接利益に結び付かないが社会の維持や将来の豊かさに必要な共有財産に積極的投資価値を見つけてゆくことがコロナ後の社会で人々が豊かになるために必要だろうと言います。

格差拡大と経済成長は両立しない、マクロ経済学が成功しないのは「ヒトの心、想い」がそこに含まれないからである。次世代のノーベル賞に値するマクロ経済理論は「ヒトの心を加味した経済理論」となるだろう。(番組ではそこまで明言はしていませんでしたが)

 

この最後の結論は強くうなずける内容です。


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