戦後体制において初めての本格的政権交代となった昨年までの民主党政権についての総括は種々の所で行われていると思われますが、その多くはマイナス点に大きく傾くものとなることは日本人全てのほぼ一致した見解と思います。鳩山・小沢を中心とした政権前期と菅・野田らによる政権後期に大きく分かれますが、私は前期については政権を追い落とそうと企む不自然で執拗なマスコミと米国CIAの下部組織でありながら日本人の税金で給料を得ている地検特捜部の「政治と金」の攻撃があり、気の毒に思いましたが、後半については地震の影響もあるとはいえ、あまりにも情けない政権運営に点数を付ける気にもなれません。
私はどんなに妨害工作があっても民主党首脳部が国民の付託によって選ばれた鳩山・小沢体制を死守堅持して頑張り続けていたらと思う事がしばしばです。じっと始めの体制を維持できれば霞ヶ関の官僚も根負けして最後には従うでしょうし(予算が成立しなくなって一番困るのは官僚ですからサボタージュにも限界があり、その辺も折り込み済みで小沢氏は行動していたはず)、アメリカも副大統領のバイデン氏や保守派の一部と十分共闘して普天間基地をグアムなりサイパンなりへ移設することで粘り抜いていれば、基本的に下記ニュースにあるようにアメリカは「兵を国内へ撤退」の方針なのですから異なった結果が出たはずなのです。要は管、野田、前原らの民主政治を無視した自己利権のみを考えた売国クーデターが民主党政権失敗の原因だと考えています。選挙による国民の選択だけが意味のある民意の選択であって、当時マスコミが頻繁に行っていたインチキな捏造世論調査など自信を持って無視しておけばよかったのです。
(日経引用)
在沖縄海兵隊のグアム移転費を復活 米議会合意 2年ぶり計上へ
2012/12/19 10:31
【ワシントン=芦塚智子】米上下両院の軍事委員会は18日、2013会計年度(12年10月~13年9月)国防権限法案で、在沖縄海兵隊のグアム移転関連費の計上を承認することで合意した。12会計年度は全額削除しており、2年ぶりに復活することになる。
(以下略)
当時日中の貿易額は双方ともに米国との貿易額を抜いて最大の貿易相手国になっており、2012年からは貿易決済はドルでなく双方の通貨で行うようにしようという合意もなされていました。この状況を最も不快に思っていたのは基軸通貨としての価値が下がる米国であり、海保船激突問題では何とか穏便に対応し小康状態になっていた状況を売国奴の石原らを使って現在のどうしようもない日中関係にまで悪化させた米国の手腕は敵ながらあっぱれとしか言いようがありません。
民主党政権は外国人参政権やら、人権保護法案やら危なっかしい法案を通す危険性もあった事は確かですが、発足当時は国民新党の亀井氏が入閣してましたから、ぎりぎりの所で大丈夫だったと思います。後半に至ってはその亀井氏も追い出され、国際関係、経済、国政も全て危うい方向に向かっていたのですから、自爆テロ解散をしてくれたことは、ずっと継続されるよりはましだったようにも思います。
さて、とある医師会系雑誌に、民主党のブレーンとして「生活が第一」などのスローガンを提唱した北海道大学法学部教授の山口二郎氏の「民主党政権の総括」に相当する講演要旨が載っていました。以下に私なりにそれを簡略にまとめて紹介します。
1) 民主党はルールに基づいた中負担中福祉を求めた。
北欧などの高負担・高福祉、アメリカの低負担・低福祉で自己責任中心を両極端とすると、日本は中負担中福祉にならざるを得ないが、自民党が官僚や政治家による裁量的な福祉の中身を決定してきた事に対して、民主党は透明性のあるルールに基づく福祉の決定を目指した。結果的に利権を失う人が増えて、高校無償化や子供手当のように誰にでも分かりやすい内容にしたことで「バラマキ」という批判が出た。しかし恣意的な裁量による福祉の決定よりもよほど良かったはずである(官僚や政治家の裁量を経ないで金が国民に渡る福祉は不評という事)。
2) 経済は横ばい、失業率はやや改善したが、格差は拡大した。
図に示すように、21世紀に入ってから企業の収益は上がっているのに、雇用者報酬は下降していて、年齢別の生活保護基準未満の所得の人の割合も、1993年に比べて若年者と中年者で増加している(これは民主党政権前までの状況ですが)。rakitarouが追加した図を加えると、民主党政権内において就業者数は横ばいながら完全失業率はやや低下(昨年また上昇しましたが)。雇用の内訳としては製造・建設従事者が減り続けて、医療福祉、販売が継続して増加しています。
生活保護基準未満の所得の人の割合(1994年と2004年の比較)左軸は%を示す。
3) 安定財源の確保には失敗した
事業仕分けなるものもショーとしての意味以上の効果はなく、経済停滞の中で増税を求めた時点で国民からそっぽを向かれてしまった。官僚的思考(はじめに枠ありきで枠からはみ出るものは切り捨てる思考法ーこれを氏はギリシャ神話のプロクラテスのベッドを例に説明していますが割愛)という発想に取り込まれたのが結果的に官僚の言いなりの施政になった。
4) 今後の日本のありかたについて
21世紀中頃の日本のあり方を見据えて制度を作って行かないといけない。国家、政府というのは国民のためにあるのであって、自己責任では対処できない大きなリスクに対応するため、また放っておくと強者が勝ち抜き弱者が淘汰されてしまう現実(米国の所得全体のうち上位1%の人がどれだけを占めるかの図参照、大恐慌前も現在とほぼ同じ状態であり、この後の世界の展開を考えれば現在の資本主義経済のあり方が誤りであることが明瞭)を是正し、富を再分配するため、そして市場において金で売り買いできる物と売買の対象にならないものの線引きをしっかりする、宇沢弘文氏の提唱する社会共通資本の領域を守るために、国家や政府が存在することを認識する必要がある。議論は省略し、独裁的なリーダーに決断は白紙委任し、国家は国民のためにあるのではなく、国民が国家にいかに奉仕するかが問題、というような政党(どこの党の主張かは明確ですが)が政権を摂る事が決してあってはならない。
— 以上 —
私は4の日本のありかたについては全く同意見ですね。
やはり,『医師会系雑誌』などには,こうした水準の記事があるのですね。
いつも視野を広げさせて頂いております。
『月刊 看護の科学』にも原子力発電所災害についての本田成親氏エッセイ「日本列島こころの旅路」を読むことができます。