虚偽や良心に反する事態を知りながら、あえて知らない事にする「欺瞞」は実社会においてある程度は「大人の対応」として認められると思います。すべてを綺麗事で通す事はかえって社会を混乱させます。しかし、明らかな「犯罪の隠蔽」や「多くの人が苦しむ」事が分かっていながら虚偽を通す、あるいは欺瞞を人に強制する事は「悪」であり「大人の対応」などではありません。
芸能界における枕営業(これはハリウッドを含む世界中であった)や、今回のジャニーズのペドフィリア問題は、昔からある程度認識されていたものの「大人の対応」として「問題化しない」事になっていました。本音では「良くないだろう」とずっと思っていたけど、「大人の対応」で黙殺していた事が一度「大いに批判すべし」という具合に「戒め」が解かれると、社会は一斉に非難の嵐が起こります。それどころか避難の嵐に同調しない者を「悪を許すのか?」と逆に批難し、「今まで大人の対応を取ってきた集団」の分断化さえ起こります。今回のジャニーズ問題はそれが顕著に表れている様に見えます。今まで本ブログではメディア批判を多く取り上げてきましたが、この「欺瞞の強制と分断」は現在の全ての社会問題について、メディアが抱える宿痾であると思います。
言論と表現の自由について発信するOmanのヤヒヤアル・ラービ氏の言語的、非言語的欺瞞に関するまとめによると、「欺瞞」とは故意に情報を操作して完全な事実でないもの(半事実を含む)を他人に信じ込ませる行為とされます。そして「欺瞞」には5つの形式があるとされます。
- 嘘 明らかに事実でない情報を与えて騙す。
- 隠蔽 都合の悪い情報を隠匿する。
- 改ざん 都合の悪い情報の中身を、問題の矮小化、あるいは良好な内容に変える。フィクション化。
- 誇張 主張したい内容を必要以上に強調する。「話を盛る」
- 曖昧化 都合の悪い内容を明確にせずごまかす。真実が苦痛でしかも虚偽作成ができない場合。
氏は対人欺瞞理論(Interpersonal deception theory : IDT)として、言葉(verbal)による伝達での欺瞞の見分け方と、態度(non-verbal)による伝達における欺瞞の見分け方について論じていますが、ここではメディアについて言葉による伝達の場合の欺瞞を象徴する表現例を示します。
- 非直接的あるいは非合理性: 欺瞞を試みる者は部分的に関連する情報を提供するが、合理性に欠ける内容である場合。注意深く検討すると突っ込みどころ満載の記事が相当します。(Burgoon、Buller、Guerrero、Afifi、&Feldman.、1996)。
- 明確さの欠如: この方法では、欺瞞を試みる者はわざと不明瞭で曖昧な言葉を使用して、複数の解釈が可能になるようにします。情報は受信者にとって明確さを欠いています(Burgoon et al., 1996)。
- 非個人的(非個人化): この方法では、欺瞞を試みる者は、表現内容に個人の主張ではなく、まるで一般論であるかの様な回避的なマナーを使用します。そうすることで、個人の主張としての責任を回避します。(Burgoon et al.、1996)。
このような議論を踏まえて、以下に最近のメディアの欺瞞性を検証してみます。
1) NHKの反省文
9月7日にジャニーズ事務所の記者会見を受けて、今まで問題をあえて見過ごしてきたNHKは社としてのコメントを発表しました。その中で「多くの未成年者が被害にあう中で、メディアとしての役割を十分に果たしていなかったと自省しています。より深く真実に迫ろうとする姿勢を改めて徹底し、取材や番組制作に取り組んでまいります。」と明確に記していますが、メディアとしての役割、つまり「市民の目として権力や悪の真実に迫る姿勢を徹底する」というのはかなりハードルが高い事を述べたものだと感心します。こう宣言したからには、米国でも有力者が多く関わっていたために深く追求されなかったジェフリー・エプスタイン事件について、特番を組んでより深く真実に迫ってほしいものです。
BBCの2020年の記事から たまたま現在のジャニーズの記事紹介も隣に
2)「支援疲れ」という曖昧表現
9月23日の東京新聞国際面には、国連総会に出席し、米国首脳や議会に直接支援を求めたものの、良い結果を得られなかったウクライナ・ゼレンスキー大統領の記事が載っていました。2022年2月以降米国は6兆3500億円にものぼる米国民の血税をロシアとの代理戦争であるこの戦争につぎ込んだにも関わらず、ウクライナ兵40万人を失い、勝利の兆しも見えないこの出鱈目な戦争に、正気な米国民から「もう止めよ」という声が上がるのは当然であるのに、まるで自然災害へのボランティア活動を続けているような「支援疲れ」といいう表現は何を意図した「欺瞞」なのでしょうか。ウクライナに不利な表現をすると「ロシアの味方」と非難されることをガタガタ震えながら恐れ、「若者と市民が犠牲になる戦争を一刻も早く止めよ」という正論さえ封じる東京新聞の記者たちに忸怩たる思いはないのでしょうか。
3)温暖化欺瞞にも利用される「ナッジ」「ナラティブ」
前回のブログでも紹介した様に、心理学を応用した行動経済学的手法が、メディアの欺瞞に多用されています。「最近の異常気象は地球温暖化が原因」「温暖化の原因は二酸化炭素の増加」「二酸化炭素増加は人類の経済活動」「SDGsが地球を救う」は全て真実として報じられていますが、これもナラティブを活用した欺瞞、サイエンスを「SDGsという新たな経済活動を行うため」民衆を従わせる手段に用いているに過ぎません。宝島社新書 地球温暖化「CO2犯人説」の大嘘 2023年刊、 は日本の著名な科学者8名の共著による金儲けや補助金獲得にとらわれない立場からのSDGsの虚妄を暴いた好著です。温暖化に疑問を抱く様な検索をかけると、SDGs推進派の論客たちのサイトに誘導されて、あたかも温暖化に疑問を抱く事が科学的に否定されているような一見科学的な記事に行き当たりますが、彼らの特徴は地球の温度変化をせいぜい1000年以内でしか説明していない事、2010年以降の温度変化停滞は無視していること、平均気温の測定法の曖昧さは無視していることなど多くの都合がよいナラティブに偏っている事が指摘されます。彼らは世の中の論文の97%は温暖化二酸化炭素原因説を前提にしていると豪語しますが、コロナワクチンの副作用論文が採択されるにはワクチンの必要性に触れないとレビュアーと編集者にrejectされるという現実と同じで、そうしないと論文が載らないからそうしているだけ、注意深く読むと原因は別にあることが指摘されていたりする事は敢えて避けています。東京工業大学名誉教授の丸山茂徳氏によると、昨今の異常気象は北極の偏西風の蛇行によるもので、降水量の増減も周期的なものと説明されます。二酸化炭素よりも化学的環境汚染の方がはるかに問題が大きいと警鐘を発しています。