本人が気付かないうちにある一定の方向に思考や行動を仕向けることが出来れば、大衆をコントロールしやすくなります。知らず知らずのうちに、現代は行動心理学などを駆使したそのような術に溢れていると言えそうです。社会の混乱や争いを少なくするという面では必ずしもそういった技術は「悪」とは言えませんが、権力者が大衆を容易にコントロールする手段として用いているならばそれは忌むべき物であり、我々はその巧妙な詐術を見抜く必要があります。そのような技術の例を備忘録的に記しておきます。
I. ナッジ
ナッジの基本的考え方とナッジ(内発的動機付け)を実際の行動や経済活動に結び付ける構造設計
ナッジ(nudge)とはシカゴ大学リチャード・セイラー教授が提唱した行動理論で、「ある行動をそっと促す」ことによって、強制を伴うことなくある行動を自ら行うようにする技術を言います。例えばスーパーのレジに並ぶ間隔を図示するだけで、social distanceと整列の両方の目的を達成できることが実証されています。
身近なナッジの例(悪いことではないですが)
1) ナッジには以下の6つの要素があると説明されています。
(1)インセンティブ 行動をするメリットを与える(ポイントを付与するとか)
(2)マッピングの明確化 行動(選択)の結果を理解しやすくする
(3)デフォルトの設定 初めから決まった形を提示すると抵抗がなく受け入れやすい
(4)フィードバックの付与 「良いね」や「閲覧数」の様に結果を「見える化」して受け入れやすくする
(5)エラーの回避 フェイルセーフやフールプルーフで考えなくても間違いを防ぐことでの安易化
(6)選択の簡略化 値段毎のコース料理メニューの様な「お勧め」を提示する(サブスクの手法)
2) ナッジを応用した「行動経済学」では「ヒトは理論でなく感情で動く」を前提に以下の様なテクニックが紹介されています。
(1)コミットさせる プロモーションの段階で「参加」を促す(アンケート記入とか)
(2)現状維持バイアス活用 お試し期間の設定でそのまま購入に持ち込む
(3)選択的意思決定 自分で選択したものは正しいと思いたい心理による(ナラティブの手法)
(4)後悔回避 これが最後のチャンス(閉店セールとか)などと売り込む
(5)松竹梅 選択肢を2つから3つにすることで、本当に売りたい商品を選ぶ人が増える(梅が一番だが、松はみすぼらしいから竹を選ぶ人が増えて、結果梅も増える心理)
(6)アンカーリング 高い商品をはじめに多く見せてから値引き品を見せると売れる
(7)気質効果 失敗の言い訳をこちらから用意して提示すると容易に受け入れる
(8)フレーミング効果 同じ内容も提示の仕方で受け入れが異なる
(9)権威への服従効果 いわずもがなの大衆の安心感取得の方法
(10)繰り返し(ザイオンス)効果 視聴する回数が増えるほど違和感がなくなる(嘘も百回聞くと本物に)
(11)返報性原理 おまけを付ける事で恩義を感じさせる
これらは日常的に使われている手法で、つい「いらないものを買ってしまう」「余分に買ってしまう」行動につながっている様に見えますし、ある意味「ナッジの悪用」とも言えます。
3) コロナワクチン施行に用いられた「ナッジ」の例
人類どころか、生物全体において使ったことも成功した例もない「正常細胞への遺伝子導入」によるワクチンを全人類に実施するにあたって、政府権力者側はこの「ナッジ」をフル活用して臨んだと言えそうです。例えば、ワクチンパスポートや旅行支援の条件に入れる(インセンティブ、マッピング、フィードバック)。職場接種やワクチンセンターの設置(デフォルト化、エラー回避)。家族や皆のための接種と強調(コミットや現状維持)。感染予防に失敗しても重症化予防と言い換え(選択的意思決定、気質効果)。無料期間の明示(後悔回避)。新しいワクチンの抗体増加程度が対数目盛である(フレーミング効果)などなど多数。
4) 疑惑の多い事象にわざと虚報を流して全体を虚報にみせる
危険な山道に登山者が入り込まない様に、導入口にわざと土砂崩れを起こしておくと、その先全体も危険だろうと判断して入らなくなります。これもナッジの応用と言えるでしょう。同じ手法で、疑惑だらけの事象の分析にわざと虚報を混ぜて「虚報である」とファクトチェックで証明することで、疑惑全体を虚報だと思わせる手法もよく見かけます。最近ではマウイ島の火災で市街地の消失具合が異常である疑惑に対して、空からのレーザービーム照射の偽写真をSNSで拡散させて、大手メディアがそれを虚報であると証明、大きく報ずることで公式発表以外を陰謀論であると印象付けようとした例があります。
BBC、NHKゴールデンのニュースでも異様に強調された「フェイクに注意」の映像(目的があってわざとフェイクを流したか)
II. ナラティブ
医療において、エビデンスに基づいて治療方針を一方的に説明し、説得するよりも、患者さん側の気持ちや立場に立って一緒に治療方針を決める方が治療意欲や方針の受け入れが良くなる事は当然です。自分で選択して決めた事項であれば、結果が悪くても納得がゆきます。正解を押し付けるパターナリズムよりも、患者も治療方針決定に参画する医療が望ましいことに異論はありません。特に高齢者が増加する先進諸国においては、60歳までの1回目の人生に生きる人を対象とした「行きの医療」と、還暦を過ぎて2度目の人生を終焉に向かって生きる人を対象とした「還りの医療」で「違いを設ける」をつける事は当然と考えます。これはnarrative based medicine(NBM)の望ましい例と思いますが、ナッジと同様いかにも患者さんが自ら選んだ様に仕向けて、医療者が望む治療を行い、結果がどうであっても「患者が納得してしまう高等技術」としてNBMが使われる例もあります。
ナラティブの基本的考え方と医療における応用
医療のみでなく、最近のブログで取り上げている様に、温暖化問題やウクライナ戦争、差別撤廃における「ポリコレ」の強制にも断片的事実を並べてもっともらしいストーリーを作って規定の真実とするナラティブの手法が使われていると感じます。多くの批判、検証を経て確立した客観的なエビデンスに基づかない権力者に都合が良いストーリーが余りに多いのが現代です。これらの似非真実の特徴はSNSなどへの「反論を封じる」、反対意見に「陰謀論」などのレッテルを貼るといった「特徴的対応」で明確に区別できます。
また根拠の弱いナラティブは立場が変わる事で容易に異なるストーリー、整合性に欠ける内容になる傾向があると思います。以下に例をあげてみます。
1) 911をアルカイダ(ビン・ラディン)の立場から見る
ブレジンスキーとビンラディン
2001年9月11日から22年が経過しましたが、ケネディ暗殺事件と同様、イスラム教テロリストによる複数の同時民間航空機ハイジャックとペンタゴン、ニューヨーク世界貿易センタービルへの航空機突入事件についての真実は全てが明らかになった訳ではありません。911はアルカイダの首魁であったウサマ・ビン・ラディンの計画指示で行われたとされていますが、このテロを起こした理由は「湾岸戦争でイスラム教の聖地(サウジアラビア)に米軍が駐留したから」という物でした。米軍は十字軍ではなく、米軍内にもイスラム教徒、ユダヤ教徒もいます。そもそもソ連のアフガン侵攻を駆逐するジハードの目的で米国の援助で作られたのがアルカイダであり、米国自体を異教徒と定義するなら援助を得る事自体が神への冒涜になったはずです。1979年にCIAトップのブレジンスキーとビンラディンが並んで写っている写真もあるし、ブッシュ一族とビンラディン家(元はユダヤ系サウジアラビア人)は長年のビジネスパートナーであった事もマイケルムーア監督の華氏911で暴露されています。
旅客機が突入した映像自体はおかしくないが
旅客機が突入したツインタワーが不自然に倒壊した状況もさることながら、多くのメディアが事件後触れようとしない「47階建ての世界貿易センター第7ビルの倒壊」について、20年経過した現在も不明のままである事が不思議です。このビルには東部CIAの本部の他、エンロンファイルを保管する証券取引委員会、内国歳入庁が置かれ、ニューヨーク緊急事態管理局の本拠地でもありました。このビルが倒壊したことで、多くの都合が悪い証拠品が消失、何よりここから911事件という緊急事態の指揮を執るべきであったのに、当時のNY市長ジュリアーニ氏は「ビルが崩壊すると言われたから事前に(本部を)移した」とテレビインタビューで答えており、BBCやCNNはビルが崩壊する前に「崩壊しました」と報道してしまっています。
頭の左に健在な第7ビルが映っているのに「倒壊した」と言ってしまったライブ映像
2) ウクライナ戦争をドネツク・ルガンスク共和国から見る
以前のブログで「侵略されたウクライナが常に攻撃していて、侵略したロシアが防御しているのでウクライナが負け続けている」と解説しました。しかし視点を変えてロシアが併合したドネツク・ルガンスク共和国側から見ると、2,014年の独立宣言以降ずっとウクライナ側に攻撃され続けていると言えます。ロシア軍が昨年2月に一時キエフ近郊に迫った時を除くと、3月の自主的撤退以降はロシア軍を含めて両共和国の支配地域に重厚な防御線を構築してずっと守備をしている。しかも攻撃するウクライナ軍の10倍の火力で防御しているのがこの1年のウクライナ戦争の実態です。これではウクライナに100%勝ち目はありません。ナラティブの視点を変えると見えるストーリーがかなり変わると思います。
ちなみに、8月末からウクライナはロボティナ地区で春季攻勢開始から数万の兵力を失い、2か月以上破れなかったロシアの第一防衛線を突破したと大はしゃぎですが、戦術を「機甲部隊の後ろを歩兵が続く」のを戦車・歩兵戦闘車がことごとく破壊されるので「まず歩兵が進んで道を確保してから戦車を進める」に変えただけです。対戦車濠やコンクリートの堡塁は闇にまぎれた歩兵ならば超えることができるから第一防衛線を突破したと言えるのですが、後続の重車両が超える事ができないのでいつまでも第二防衛線にたどり着きません。ロシア軍は車両には効果が薄いけど歩兵には強力なクラスター弾で攻撃してくるので後塵の防御がない歩兵部隊は非常に悲惨な結末になります。しかもウクライナ軍の展開は平地に沿ってロボティナの南東に進んでいるだけなので高地の塹壕から狙うロシア軍の圧倒的な有利が続いています。昨年2月以来のウクライナ軍の戦死は40万名、対してロシア軍は5万名と言われていて、既に若い男性がいないウクライナは女性や学生の徴兵、海外にいる徴兵適齢男性の帰還命令を出しました。
ロボティネでは攻撃するウクライナ軍がロシアの第一防衛線を超えたと言うが ロ軍のクラスター弾と思われる切れ目のない激しい弾幕が車両の防御がない歩兵たちを襲う
私は気の毒なウクライナ国民のためにも一刻も早く停戦、休戦を行うべきと考えますが、米国には米国兵が犠牲にならずロシアを攻撃できるこれ以上の効率的軍事費の使い方はない、と豪語する議員もいて、平和を希求する動きはありません。皆さんは戦争を続けるべきと考えているでしょうか。
戦争を止めるために早くトランプを大統領に復帰させよとタッカーカールソンとの対談で話すハンガリーのオルバン首相