rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

反戦?映画今昔「未知への飛行(Fail safe1964)」と「5デイズ( 5 Days of War)」

2018-04-09 23:38:58 | 映画

CS放送で対照的な2つの反戦?映画を最近見て、印象に残ったので備忘録的に記しておこうと思います。

 

1)5デイズ(5 days of war)2011年(米国) レニー・ハーリン監督 ルパート・フレンヅ、エマニュエル・クリキ、ヴァル・キルマー主演

 2008年、北京オリンピック開会中に発生したグルジアー南オセチア紛争において、グルジア側から取材に入った西側の戦場ジャーナリスト達が、ロシア軍がグルジアの村々に爆撃、侵略をして戦争犯罪と言える虐殺を起こす様をフィルムに収め、世界に発信しようとする努力を描く内容。

 あくまでグルジア側は善い者として描かれ、ロシア軍は無力なグルジア市民に一方的に武力攻撃をし、特に正規軍でなく「傭兵」として一線で戦う「コサック兵」達の残虐ぶりが強調されて描かれます。サーカシビリ大統領はNATO、米国に軍事的な救援を要請しますが相手にしてもらえず一方的な休戦によって何とか独立は保たれます。

 ロシア軍は圧倒的に強かったのですが、映画では余りに「ロシア=悪逆」で描かれ、主人公達が危機に陥る度にいかにも都合良く「救援」が入るというご都合主義が娯楽映画的で鼻につきます。サーカシビリは「ジョージア(グルジア)の自由と独立が守られた」と最後に演説をするのですが、初めに南オセチアの自由と独立を認めたらそもそも紛争が起きなかったのでは?と突っ込みたくなります。

 この南オセチア問題を始め、ウクライナ、クリミア、シリア、トルコにおいて、そして現在の英国スパイ暗殺事件においてもロシア(プーチン)は悪の権化として打倒するべき対象とされています。ロシアは本格的な西側との戦争を避けようと自重をしていますが、ロシアとの戦争の恐怖を米国、西側の人達は忘れてしまったかのようです。

 

グルジアへのロシア軍の砲撃(本物)  ロシアの爆撃による犠牲者

 

2)未知への飛行(Fail Safe1964) 1964年 米国 シドニー・ルメット監督 ヘンリー・フォンダ、ダン・オヘイリー主演

 核を搭載した戦略空軍爆撃機が正体不明の侵入機(UFOと表示)に反応してソ連との核戦争準備に入るのですが、コースを外れた民間機と判明。しかし1グループのみがソ連の妨害無線によって警報解除の指令が届かず、そのままモスクワへ水爆投下に向かってしまう。大統領(ヘンリー・フォンダ)はソ連の議長とのホットライン、国防総省などと協力して攻撃命令の中止、爆撃機の撃墜を計るのだが・・。Fail safe機構というのは失敗しても安全な方に自動的に導かれる仕組み、或は最小の損害で済むように導かれる仕組みの事を指す専門用語で航空機や医療の世界では日常的に使われる言葉です。この映画におけるFail Safeとは機器の誤作動で核戦争が始まってしまう状態になった時のFail Safe機構が自軍の戦闘機による撃墜、人間の声による命令、そして最後は自国の爆撃機をニューヨークに飛ばして自ら水爆をニューヨークに落とす事でモスクワに水爆を落とした事と釣り合わせて世界破滅の核戦争を防ぐ事をソ連の議長と約束する、というショッキングな内容です。

 ソ連との戦争が人類の破滅に直結すると言う危機感を世界が共有していた時代の作品。「論理的に最後の最良の選択がこれなのです」という厳しいメッセージを当時の米国市民達はどのように受け止めたか。最近の米国における、安易なロシアとの敵対をあおる風潮に私は危惧を感じます。何故何の証拠もないの元スパイ殺害容疑で世界中からロシアの外交官を追放しないといけないのでしょう。もう一度世界、特に米国民はこの作品の重み、何度も人類を滅ぼせるだけの核を持ってしまっている自分達への厳しさを確認するべきだと思いました。またこのような自国民に対して厳しい問いかけをする映画を作れていた当時のハリウッド、現在のセレブと体制リベラルに媚を売り、低俗な映画しか作れなくなったハリウッドとの明暗を感じざるを得ません。

コメント (3)
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