今年に入って、消費者行動に関する教科書が続々と出版されている。1月には、松井剛先生を始めとする研究者たちの尽力で、Nichael Solomon による消費者行動論の教科書が翻訳・出版された。かなり分厚い教科書なので、合冊版とともに、教科書で使われたときの学生の便宜を考えて、三分冊版がある点がまずユニークである。
消費者行動の本格的な教科書は、欧米で何冊も出版されてきたが、なんせ分厚い。それを英文で読み通すことは、日本人にとって二重の意味で至難の業であった。今回、翻訳版が出ることになって救われた人は多い。一方、出版市場がシュリンクしていることを考えると、この本を出した丸善は偉大である、と賞賛せざるを得ない。
これから本格的に消費者行動を研究する人には『ソロモン』は必携の書だが、一般学生やMBAの学生は、そこまでの時間と労力を割けないだろう。その点、3月に出版された田中洋先生による『消費者行動論』は非常にコンパクトかつ平易に書かれていてお奨めだ。本格的な教科書であった『消費者行動論体系』をベースに大幅に改訂されている。
『ソロモン』と『田中』で共通するのは、心理学・認知科学を基礎とする従来型の消費者行動論を踏まえつつ、ポストモダンと呼ばれるような、もう1つの流れにも目を配っていることである。『ソロモン』でいえば、社会階級とライフスタイル、サブカルチャー、文化、『田中』では自己と他者、消費者文化に関する章がそれである。
私自身は、マーケティング研究者としてはどちらかというと「計量派」(いま風にいえばクオンツ)の側にいるが、消費者行動論において「文化」の研究が進展していることに大変興味を持っている。それは、消費者を独立した存在として見るのではなく、ネットワークを構成する者、社会的な存在として見る立場につながっている。
したがって、心理学的な消費者行動研究が、社会学を通じて、場合によっては複雑系的な社会科学(いま風にいえば計算社会科学?)と結びついていく可能性を予想している。それがあながち妄想でなさそうなことを、この2つの教科書は示唆しているように思う(そこまでいうのは、かなりの我田引水であったかもしれない・・・)。
消費者行動の本格的な教科書は、欧米で何冊も出版されてきたが、なんせ分厚い。それを英文で読み通すことは、日本人にとって二重の意味で至難の業であった。今回、翻訳版が出ることになって救われた人は多い。一方、出版市場がシュリンクしていることを考えると、この本を出した丸善は偉大である、と賞賛せざるを得ない。
ソロモン 消費者行動論 [上] | |
Michael R. Solomon | |
丸善出版 |
ソロモン 消費者行動論 [中] | |
Michael R. Solomon | |
丸善出版 |
ソロモン 消費者行動論 [下] | |
Michael R. Solomon | |
丸善出版 |
これから本格的に消費者行動を研究する人には『ソロモン』は必携の書だが、一般学生やMBAの学生は、そこまでの時間と労力を割けないだろう。その点、3月に出版された田中洋先生による『消費者行動論』は非常にコンパクトかつ平易に書かれていてお奨めだ。本格的な教科書であった『消費者行動論体系』をベースに大幅に改訂されている。
消費者行動論 (【ベーシック+】) | |
田中洋 | |
中央経済社 |
『ソロモン』と『田中』で共通するのは、心理学・認知科学を基礎とする従来型の消費者行動論を踏まえつつ、ポストモダンと呼ばれるような、もう1つの流れにも目を配っていることである。『ソロモン』でいえば、社会階級とライフスタイル、サブカルチャー、文化、『田中』では自己と他者、消費者文化に関する章がそれである。
私自身は、マーケティング研究者としてはどちらかというと「計量派」(いま風にいえばクオンツ)の側にいるが、消費者行動論において「文化」の研究が進展していることに大変興味を持っている。それは、消費者を独立した存在として見るのではなく、ネットワークを構成する者、社会的な存在として見る立場につながっている。
したがって、心理学的な消費者行動研究が、社会学を通じて、場合によっては複雑系的な社会科学(いま風にいえば計算社会科学?)と結びついていく可能性を予想している。それがあながち妄想でなさそうなことを、この2つの教科書は示唆しているように思う(そこまでいうのは、かなりの我田引水であったかもしれない・・・)。