Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

境港妖怪シンポジムが示唆するもの

2011-02-25 18:04:13 | Weblog
ソーシャルメディア研究ワークショップに次いで,第二回境港妖怪シンポジウムに参加した。第一部は,『大ヒットの方程式』の著者の一人,鳥取大学の石井晃先生による講演。水木しげるロードと世界砂像フェスティバルの事例を中心に,ブログ上の書き込みと集客の関係に対するモデル分析が紹介された。詳しくは,以下の文献を参照のこと。

大ヒットの方程式
ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する
吉田 就彦,石井 晃,新垣 久史
ディスカヴァー・トゥエンティワン

次いで,同書の共著者であり,数々のヒット曲をプロデュースしてきた吉田就彦氏を司会とするシンポジウム。ソーシャルメディア研究WSに参加された東北大学の澁谷氏(マーケティング),大阪大学の松村氏(仕掛学)に加え,境港市観光協会の桝田知身会長,水木しげるや境港に深く関わってこられた編集者の梅沢一孔氏がパネリストとして登壇される。

このなかでも,最も強いオーラを放っていたのが桝田さんだ。水木しげる,あるいはゲゲゲの鬼太郎をコアにした境港の観光開発は,「ゲゲゲの女房」で突然変異的に盛り上がったのではない。10年以上前から様々な仕掛が行われ,その集大成として昨年の一大ブームが起きたのだ。それを推進してきたのが桝田氏を筆頭とする地元の経済人や行政である。

水木しげるロード熱闘記
桝田 知身
ハーベスト出版

もちろん「ゲゲゲの女房」自体は一過性のイベントなので,今後境港市が集客を続けるために様々な施策が検討されている。その1つがソーシャルメディアだということで,何かお手伝いできないかと,この分野の研究者がシンポジウムに参加した。集まった150人近い聴衆の方々に少しでも満足いただける議論になったとすれば,研究仲間としても嬉しい限りだ。

境港市にとって,ゲゲゲの鬼太郎というコンテンツが日本のみならず世界を標的にし得る大きな資源である。これまでは低予算ながらスマートなPR活動で成功を収めてきた。その延長線上に Twitter に代表されるソーシャルメディアがある。それはすでにブームに寄与してくれたが,今後それを持続させるにあたって,どこまで御することができるかが鍵となる。

個人的には,人口最小県である鳥取で,さらに端っこの境港というのテールが,水木しげるという誰もが知るヘッドと結びついたというダイナミズムに興味がある。こうしたロングテール型地域活性化モデルは,今後他の地域に応用されるだけでなく,かつ自身としても進化していくだろう。すでに「妖怪」というキーワードで他地域と連携する動きが生まれている。

いろいろ考えなくてはならないことは多い。それにしても,鳥取にしろ境港にしろ,再び訪れてもっと深く探ってみたい街だ。それだけではなく,米子から西へ向い,松江,出雲といった地域も旅してみたい。地域経済とロングテールについては,すでに塩沢由典先生の論考があるが,コンテンツや観光という視点を加味すると,さらなる展開があるものと予感する。

関西経済論―原理と議題
(シリーズ関西の創造)
塩沢 由典
晃洋書房