見た瞬間、強烈な印象を残す写真がある。ディープ・パープルが73年6月25日に
日本武道館で行ったコンサートは演奏終了後に暴動があり、翌日の公演が中止に
なったのだが、その暴動の後を写した1枚は私には実に印象深い写真として記憶に
残った。
公演終了後に暴動が起こったなんていう現場にはいたくないし、そういう行為を
行った観客を擁護することは何一つないが、起こってしまった事実を捉えた写真の
出来は素晴らしい。絶妙のアングルで会場の荒れた様を見事に伝えてくれる。
そんな写真を使ったレコードがあるのを知って、それを欲しいと思わないほうが
どうかしているわけで、最初にその写真を使ったレコードの存在を知ったのは
ブートレグであった。(掲載写真右)とはいっても、熱心に探したわけでもない
ので手に入れることはできなかった。
後に80年に英国で再発された7インチ「BLACK NIGHT」や02年にリリース
されたボックス「LISTEN LEARN READ ON」で同じような写真が使われるのだが
それらも入手できずにいた。
先日、その写真を使ったCDがコンサートの全曲と終焉後の荒れた様子を短い
ながらも捉えたブートレグとして登場したので、衝動的にジャケ買いしてしまった。
アナログ・ブートレグ「CHAOS AT A CONDERT」の復刻版も添付されて、これは
もう絶対に欲しいと思ったのだ。
熱心にディープ・パープルのブートレグを集めているわけではないのだが、この
写真の魔力には勝てなかった。
73年6月に行われたパープルの日本公演は、前年の公演と代わり映えしない
セット・リストであったことで熱心なファンの間では賛否両論あるようだが
イアン・ギランが日本公演後に脱退したことや、暴動があったことで重要な
位置づけにあるツアーであることは間違いないだろう。
暴動の原因はバンドがアンコールを行わなかったことによるものと言われている。
バンド側は、観客のノリが悪かったからアンコールをしなかったということで
あるが、『SMOKE ON THE WATER』を演奏中に客席から投げ込まれた花火が
バンドの気分を害したという話もある。
アンコールに応えるのが当たり前というステージの流れも、よくよく考えると
おかしなものだが、それはともかくステージにメンバーを不快にさせる物を投げ込む
という行為は褒められたものではない。
花火が投げ込まれた場面というのは、演奏を聴いている限りではよくわからないの
だけど。
音質は当時の会場録音として、何ら不足の無いもの。勿論、何の不満もない。
でも、そんなことよりも。私はこの写真が好きなのだ。この写真を使った音盤を
手にすることができたというその事実だけで満足している。