12年に往年のロック・レジェンド達がザ・フーの楽曲をカバーした「AN ALL STAR
TRIBUTE TO THE WHO」というアルバムを取り上げたが、今回も同趣向のアルバムを。
掲載写真は「A CLASSIC ROCK SALUTE TO THE DOORS」と題された盤。
今回もなかなか豪華な面子が参加している。
歌い手によって大きく印象が変わるのがカバーの常だが、今回も多くのボーカリストが参加していて
各人の個性がジム・モリスンという不倒の礎にどう対峙するかというのが楽しみの一つ。
そういう意味では『L.A. WOMAN』を歌ったジミ・ジェイマスンはジムを彷彿させながらも
上手く歌いきった一人だろう。といっても私はこの人のソロや参加したバンドには全く興味が
無いのだが。(笑)
『PEOPLE ARE STRANGE』を歌ったデヴィッド・ヨハンセンは、最早スクリーミン・ジェイ・
ホーキンスの域に達した、ある意味「脅かし」の歌唱で迫る。ジョー・リン・ターナーとスティーヴ・
クロッパーの組み合わせというのは普通なら想像もできないが、取り上げた『RIDERS ON THE
STORM』は曲自体の仕上がりが良かった。
同じく元レインボー組のグラハム・ボネットはこれもスティーヴ・ヒレッジとの驚きの組み合わせ。
取り上げた曲が『THE SOFT PARADE』と実に渋くて、これも良い出来。
密かに期待したクリス・スペディングとエドガー・ウインターの『THE CRYSTAL SHIP』は
まあ、あんなものか。(笑)クリスのスライドは情感たっぷりの演奏なのだが、エドガーの歌唱との
組み合わせは今回は不発だったかも。
他にもケン・ヘンズレー、トッド・ラングレン、マーク・ファーナーといった人の名前もあるので
それぞれのファンは要チェック。
1曲目から順にパーソネルを見ていくと更に面白いことに気付く。
1曲目の『L.A. WOMAN』にパトリック・モラーツ、5曲目の『RIDERS ON THE STORM』に
トニー・ケイ、13曲目の『ALABAMA SONG (WHISKY BAR)』にジェフ・ダウンズ(この
曲のギターはズート・ホーン・ロロ!)の名前を見つけ「これはもしや」と思ったら、やはりありました。
15曲目の『LIGHT MY FIRE』にリック・ウェイクマンの名前が。(笑)
で、プロデューサーの名前を見て「なるほど」と。イエスのツアーやレコーディングに参加した
ビリー・シャーウッドの仕切りだったのか。とすれば、これはドアーズ・トリビュートに名を借りた
イエス・ファンへのプレゼントという趣があるのも納得である。『LIGHT MY FIRE』には
スティーヴ・ハウの名前もあるし。
しかしながら、その『LIGHT MY FIRE』を何の前情報も無しに聴かされて歌っているのが
誰かと問われたら、私は正解できなかっただろう。今のイアン・ギランって、こんな声なのね。(笑)
天国のジムとレイがどう思っているかは誰にもわからないが、一聴の価値があるカバー集
である。