今年の当ブログ認定ロック大賞の選出を終えて、そのリストを見てしばし後悔。
というか、こういう選び事をして「これで完璧。」と思えないのが私の優柔不断なところ。
私はミキサーには向いていないだろう。(笑)
掲載写真は佐野元春の「NO DAMAGE」30周年を記念する組物で、CD2枚と1枚のDVDで
構成されたデラックス・エディション。以前も書いたが、この時期の元春はあまり得意でなく
このベスト盤も個人的には退屈に思えた。それは、「こんなものじゃないだろう、元春の提示する
べき音はもっともっと格好いいはずだ。」という期待が大きかったが故なのだが。
御存じの通り、ベスト盤である「NO DAMAGE」を置き土産にニューヨークに行ってしまうのだが
その成果が傑作「VISITORS」に結実した時は「これだぜ!」と小躍りしたものだ。
あれから30年。10代の潜水生活はとっくに過去のものとなったのだが、今改めて聴いて
みるとその印象がどう変わるのか、ちょっとした楽しみが聴く前にあった。果たして聴いてみると
ボーイズ・ライフ・サイドとガールズ・ライフ・サイドというアルバム2面の分け方が今でもよく理解できず、
それはそのまま私のあまり幸福でない当時の不器用な恋愛事情(笑)故なのだろうが、それも
今となっては美化された思い出だ。
思い出というのは都合よく美化されてしまうものだ。
それでも、私が元春の書く歌詞、いや選ばれた言葉の数々を気に留めていたのは間違いない。
今でもそれらは有効に私の胸に響き、脳裏に焼き付けられている。
「NO DAMAGE」をBGMに楽しい一時を過ごした思い出のある人には及ばないだろうが、
私も30年前よりは、このアルバムを好きになれそうである。
今回は83年3月のライブを14曲約70分を超える尺で収録したCDが付いている。
当時の実際の音質がどうだったかは知る由もないが、このライブCDは低音の出方が
私好みで、若かりし元春が大放出するエネルギーの量に圧倒される。単体でアルバムとして
リリースされても十分に通用する内容だと思う。
問題はDVDだ。音だけならまだしも実際のステージを記録した映像は、彼が当時参考に
したであろう何者かを明確に想起させてしまう。83年当時、ロックの映像を頻繁に目にする
機会は無かっただろうが、今や何でも見ることができる時代である。それが私のような
自称ファンにもこそばゆい感じがするのに、門外漢には何を言われるかわからないとか、
無駄な心配をしてしまうのだ。(笑)
まあ、それは余計なお世話である。若さゆえの気取りや気負いが随所にうかがえる映像が
眩い光を放つ瞬間は確実にある。この映像を見て気付いたわけでも何でもないが、
今回の3枚を一挙に見聴きして改めて、佐野元春は日本のロックのリズム、ビートといった
ものを確実に一歩前に進めたと思った。先達を超えたとは言わない。先達の遺産を消化し
更に一歩前に進んだのだ。もっと大袈裟にいえば時代を前に進めた、のかもしれない。
さて、私はこの3枚組に満足している。しているのだが、気に入らないのは添付された
DVDに対して「日本初の長編ロック・フィルム」と宣伝していることである。映像は演奏シーンと
移動シーンやバック・ステージの様子、その他様々なシークエンスの組み合わせで
70分強の尺で構成されていて、撮影されたのは83年である。時代を考えてもこれが
「日本初の長編ロック・フィルム」ではないだろう、というのがひっかかったのだ。
例えば原田真二の78年の「OUR SONG AND ALL OF YOU」はどうだろう。100分を
超える収録時間だが、これは「ロック」ではないのか。ゴダイゴの79年の「MAGIC CAPSULE」は
どうだろう。これは50分程の尺だから、「長編ロック・フィルム」ではないのか。
というか、狭義の解釈で二者を「ロック」でないとするのなら、79年の「ロッカーズ」はどうだ。
これは70分越えである。
というように、あーだこうだとミュージシャンの本質とは違う、レコード会社サイドの用意した
「コピー」に文句をつけてしまう。ああ、俺は最低。(笑)
文句を書き連ねたので、改めて書くが今回の組物は実に面白かったし入手する価値がある。
さて、冒頭に戻っての話だが、今年の「新譜セレクション」に元春の「ZOOEY」を入れなかった
ことを少し後悔しているのだ。
「NO DAMAGE」の頃から比べると声は
変わっているが、ポジティブな姿勢は不変だ。曲も近年のアルバムの中でも粒ぞろい。
やっぱり、これは入れるべきだったかな。(笑)
やはりロックは「刹那」を生きないと・・・・ね。