掲載写真はタイガースの5枚組DVD「ザ・タイガース・フォーエヴァー」。
過去にテレビで放送された映像や、VHSで発売されたものを中心に編まれた
ボックスであるが、ここまでの映像を個人レベルで所蔵している人の数を思えば
今回のDVD化は快挙以外の何物でもないだろう。
勿論、収録された映像のほとんどはDVD化に相応しいレベルの画質である。
田園コロシアムなんていうと、今でも私は「鶴田VSミル・マスカラス」や「アンドレ・ザ・ジャイアント
VSスタン・ハンセン」といったプロレスの試合のことを直ぐに思い起こすのだが、タイガースは
70年8月22日に田園コロシアムでコンサートを行った。
タイガース解散の1か月後に2枚組アルバムとしてリリースされたのだが、この時の模様は
テレビ放送もされた。今回のDVDは放送された物の短縮版とのことだが、そんなことは関係なく
貴重な映像を見られただけで、私は大満足だ。
解散報道の中の微妙な空気がバンド内にあったはずだが、演奏は客を楽しませることに徹した
プロの演奏であったことがよくわかる。時折、走る東急電鉄の映像が差し込まれ、「電車の中から
コンサートが行われているのを見た人もいるのだろうな。」とか思いながら見るのも楽しい。
瞳みのるが歌う時にジュリーがドラムを叩いている映像を初めて見たのだが、やはりこういう
シーンは音だけを聴いた時以上に、情報量が多い分だけ感慨深い。ただ、やはりジュリー以外が
リードをとる場面というのは、今見るとファン・サービスとはいえクオリティーに疑問を感じるのは
仕方あるまい。
あと、余計なお世話なのだが、加橋かつみのレパートリーを岸部シローが歌うということに
拒否反応を起こす人はいなかったのかなあ、なんてことも考えた。本当に余計なお世話です。(笑)
タイガースの解散コンサートは71年1月24日に日本武道館で行われた。この日の模様も
テレビ放映され、バンド解散後の半年後に「ザ・タイガース・フィナーレ」と題されたアルバムが
リリースされる。アルバムも映像もコンサートの全貌を捉えたものではないが、こうして
DVD化されたおかげで、先に聴いていた2枚のアルバムの「画」を見ることができるように
なって、本当に嬉しい。
コンサートの中盤あたりからジュリーの目に涙が光っているのがわかるのだが、声が揺れる
ことなくしっかり歌いきるところに、ジュリーの魅力を改めて感じる。
81年の「サヨナラ日劇!最期のウエスタン・カーニバル」82年の「同窓会記念コンサート
THE TIGERS A-LIVE」では共に『シーサイド・バウンド』が演奏されるのだが、何故か
この曲でジュリーはミスしてしまう。まあ、ミスした後の仕草が女性ファンには堪らないのだろう
けど。(笑)
81年の『シーサイド・バウンド』では間奏で行われる振付を、加橋かつみだけが行わない。
それが妙に格好良いのだが、82年の「同窓会」ではしっかり飛び跳ねているので、「あれ?」
と思ったり。82年にストーンズの『UNDER MY THUMB』を演奏したのは、やはりあの映画の
印象が強烈だったのかなぁと思うのは、私が単なるストーンズ・ファンだからだろう。
「秘蔵映像集」と題された1枚は、貴重な映像が多く集められているのだろうが、画質は
厳しい映像が多い。20年以上前のVHSの時代に、何度もダビングを繰り返した画質が滲んで
おまけに酷く歪んだロック・ミュージシャンのブートレグ映像を散々見たものだが、正に
そんな感じ。DVDの後半から画質は安心して見られるレベルになるが、こういったボックスでも
編まれなければ目にすることは無かった映像だけに、ここは貴重さを優先すべきだろう。
それにしても、ここまでの映像集を出してもらえるタイガースも、タイガースのファンも
幸せだなと思わずにいられないボックスである。