ドアーズのキーボーディスト、いやオルガニストと呼ぶべきか、何れにせよ
名プレイヤーであったレイ・マンザレクが5月20日、肝外胆管がんにより亡くなった。
享年74歳。
ドアーズは、ともすればジム・モリスンばかりがクローズ・アップされたバンドである。
まあそれはバンドの、解りやすい「ロック的」なところの半分以上は、ジムのルックスや
デビューから死亡するまでの真偽入り乱れた伝説込みのジムのキャラクターによるところが
大きいからなのだが、「バンドの音」として全体を見れば見事に4人のメンバーの個性や趣味が
良い意味で混ざり合ったバンドだったと思う。
歌唱担当の男だけでなく、全てのパートが魅力的であった。そんなバンドでオルガンを
担当していたのだから、レイの個性や楽器のメロディーからトーンに至るまで後進に与えた
影響は大きいだろう。それが演奏者であっても、聴き手であっても、似たような音色やメロディーを
見つけると「ドアーズみたい」と言われたり言ったりするのだから、。
それは他ならぬレイ自身にも同じように返ってくることであって、例えば掲載写真のアルバム
「THE GOLDEN SCARAB」収録の『DOWNBOUND TRAIN』のピアノを目隠しで聴かされれば
「あっ、「L.A. WOMAN」の頃のドアーズ?」なんて言われそうだし。
74年にリリースされたこのソロ・アルバムは、サンバ風の曲があれば、シンセ・ソロを弾きまくる曲もある。
今の耳で聴くと時代がかっているが、時代が何重にも回った今だからこそ面白かったりするのだ。
ジム亡き後のドアーズや、自身のソロ・アルバムでレイが聞かせる歌唱は、どことなく
ジム・モリスンに似ている。レイがジムを意識しているのか、或いはドアーズ結成前夜におそらく
歌ったこともなかったであろうジム・モリスンに歌って聞かせたレイの歌唱をジムが参考にしたのか
今となってはどうでもいいが、ドアーズのメンバーとりわけレイ・マンザレクは、ドアーズという呪縛を
喜んで受け入れていたのではないかと思うと、何だか全てが美しく思える。
近年のメンバー間のちょっとした諍いは、気持ちのいいものではなかったが、今は、素晴らしい
演奏家であったレイ・マンザレクの冥福を祈りたい。