HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

MR. MOJO RISIN

2011-01-29 11:17:12 | ROCK

ドアーズというバンドは、思索を巡らせば巡らすほど深みに填り、思い入れを
込めれば込めるほど、仕掛けられた罠に嵌る。16歳の時に朝のFMから流れてきた
「水晶の舟」を初めて聴いた時から30年近く経った今でもそれは変わらない。

オリバー・ストーンが監督した91年の映画「THE DOORS」を現存する3人のメンバーは
気にいらないという。私にしては珍しく映画館まで見に行ったのだが、「まあ、あんなもんだろう」と
いうのが見た後の気分だった。バル・キルマーも可愛らしいメグ・ライアンも、それぞれ
ジムとパメラに雰囲気が似ていたし、別に題材がドアーズでなくとも伝説の多いバンドを
演じて映画を撮るという条件では、できる限りのことをしていたと思う。
ジョニー・キャッシュやジェリー・リー・ルイスを題材にするより叩かれやすいだろうし、
「ドリーム・ガールズ」や「キャデラック・レコード」のようなわけにもいかないだろうということは
了解した方がいいかもしれない。
エスカレーターの中でジムとニコが映画で描かれたように絡んでいたかどうかは知らないが、
ドアーズにまつわる有名なエピソードはわかりやすく網羅されていた。ただ、その個々事柄の演出が
大袈裟だったと言われれば、そのとおりだが。

トム・ディチロ監督、ジョニー・ディップのナレーションで綴る映画「WHEN YOU'RE STRANGE」は
当時の映像のみで構成された、ドアーズ公認ドキュメンタリーということでDVDを見るのが
楽しみだったのだが、85分の尺が短く感じられるほどの期待通りの優れたドキュメンタリーだった。
数々の伝説に彩られたバンドとヴォーカリストの短い歴史を、淡々と過剰な演出も無く紐解くのが
好感が持てた。

思うにジム・モリスンは単なる快楽主義者だったのだ。詩作に没頭するのも、酒を飲んだり
セックスをするのと同等に全てが自分が気持ちよくなるためだったのである。
ただ、一般人より詩作の能力が優れ、それが評価されたため社会に向けて放たれたことが
ジムに幸福と不幸をほぼ同時進行でもたらしたのだ。そして何よりの不幸はジム自身が質以上に
過剰に「量」を求める人だったということなのかもしれない。

日本盤DVDにはドアーズ研究の第一人者である、野沢収氏の解説があって映画を見る上で
非常に役に立つ。例えばあのマイアミ事件を扱うシーンは、スチール写真と映像で構成され
「映像があるのか」と驚いたのだが、スチールは当日の物で当日の映像は無く、別の日の映像が
使われている、ということが書かれてある。

それにしても、コンサートの警備をするのが主催者に雇われたバイトとかじゃなく、本物の警官が
それもかなりの数で警備にあたるというのが、ドアーズのおかれた危うさを如実に表わしている。
エンターティナーという以前に扇動者と目されたジム・モリスンとドアーズのスリルを、一度は
目に焼き付けておくべきだろう。まあ、今の時代でも「本当のことなんか言えない」のは
変わりないけれど。



掲載写真は相方が89年にジムの墓参りに行った時の写真。銅像はもう無かった。
それにしても何故に墓石が動かされているのだろう・・・・。

コメント (4)
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