ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/10/30 『サラ~追想で綴る女優サラ・ベルナールの一生』

2005-10-31 01:46:28 | 観劇
この作品は、1977年カナダの劇作家ジョン・マレルによって発表され、同年オンタリオで初演された二人芝居。以来、世界16ヶ国語に翻訳、35ヶ国で上演されている。日本では2001年の初演以来、麻実れい・金田龍之介で上演されてきた(演出は宮田慶子)。

私のサラ・ベルナールとの初めての出会いは、宝塚月組での『ベルばら』初演の後、同じ月組で上演された『ラムール・ア・パリ~サラ・ベルナールの恋』(サラ:初風醇、ジュリアン:大滝子)だが、観てはいない。観劇したお茶屋娘さんが買ってきた録音のLPレコードを借りて観たつもりになったのだった。その後は、ミュシャの芝居のポスター絵などに描かれたサラを見て、一度どんな人だったのかをきちんと知りたいものだと思ってきた。
この作品も2001年初演時から観たい観たいと思っていた。2003年の再演のチラシは今までしつこく持っていた。今回の再々演のチラシの写真は表も裏も前回と同じというのが予算節約を感じたけど(笑)。さて今回公演は北海道・東北の地方公演もあるようだが、池袋サンシャイン劇場の最終日、3列目センターというお席で観てきた。

お話の内容はプログラムから一部抜粋の上で補足。
1922年夏の遅い昼下がり、ブルターニュ地方のベル島にある別荘。7年前に舞台上での事故が原因で右足を失った女優サラ・ベルナール(麻実れい)がテラスで一人ソファーに横たわっている。サラはこれまでの自分の生きてきた意味を明らかにしようと老いた秘書のピトゥ(金田龍之介)に口述筆記をさせているが、思うようにはかどらない。そこでサラはピトゥに回想中に出てくる人物に扮させてやりとりをする中で、回想をまるでお芝居ごっこのようにすすめていく。
最初は、母に似た妹の方を溺愛した母親との確執、修道院での7年間、コメディ・フランセーズでの成功から男装しての『ハムレット』主演をイギリスまで持っていったこと、アメリカ公演まで端役で連れて行った妹への憎しみ、マネージャーとの対立、愛する夫との死別。そして忌まわしい『トスカ』幕切れの身投げ場面での転落事故。治療しながら女優業を続けたけれど壊疽のおそれから膝から2cm上のところで切断せざるをえず、それでも女優業を続けた日々。晩年のオスカー・ワイルドとの親交も語られる。
途中の休憩後は、翌日の早朝から起き出していた場面から始まるが、話の高揚の中で発作を起こして失神するサラ。頼まれた物を取りに屋内に戻っていたピトゥはてっきり死んでしまっていたと思い嘆き悲しむが、息を吹き返し彼の温かさに感謝するサラ。
一緒に住む息子や孫たちには明かさない心の奥底もピトゥにはさらけだすサラ。私生児として生まれユダヤ人顔というハンデを持った娘がその負けず嫌いな性格から努力してスターの座をつかみとり、母の愛にめぐまれなかったことから奔放な恋愛を繰り返し、その時その時で必死に懸命に生きた姿が二人のやりとりの中からくっきりと浮かび上がった。
一番の友は太陽だったのか?ラストシーンは太陽に語りかける。
「太陽!お前はいつも自分だけは永久不滅だとでもいいたげな顔をしてすましている。まるで暗い夜だの迫り来る死などは、子どもだましの幻想だとでもいいたげに(昂然と顔を上げ朝日を睨みつける)でもお前、本当に怖くないの?白状してごらん、本当は少しばかり怖いんじゃないの?(間~まるで太陽から肯定の答えが返ってきたかのように)そうでしょう、ね?」

私はもう滂沱の涙。私自身がこれから老いて死へ向かう恐怖=万人誰もが味わうだろうものとのたたかいが始まっていることを深く感じてしまっていた。
カーテンコールも素敵だった。麻実れいはまるでサラも同じようなカーテンコールをしただろうなあと思わせるような日本人離れしたような大きなジェスチャー、観客との一体感を楽しみ感謝するような表情で拍手にこたえていた。金田龍之介は控えめながらあったかいしぐさで。そうしてふたりは舞台上でお互いを慈しみあうようにハグをして舞台の奥に消えていった。
うーん、今日もいい舞台を観ることができて幸せだった。

以下、キャストへの感想。
麻実れいの最後の台詞の「間」のところの表情の大きな動き、目を大きく見開いたかと思うと嬉しそうにくしゃくしゃの顔になる。彼女の日本人離れした大きな顔の造作が見せるこの魅力あふれる変化をこんなにまじかに堪能することができて至福だった。
この我儘放題の女主人としての言葉を投げつける長身の麻実れいの全身の演技を、縦横に巨体の金田龍之介がふわっと受けとめ、ふわっと投げ返す。
ふたりの老人のある時はかなりボケが入ったやりとりの中で、ある時はその時の人物になりきって活き活きと、またある時は高揚の中で涙しながら心が通いあわせる芝居。その中でふたりの役者の心も通い合っているのが伝わってきた。

さらにちょっとミーハーな感想。
麻実れいが宝塚退団後に男装して演じたハムレットを観ているが、その時を彷彿とする場面があって、かなり喜んだ。相変わらずバシッとかっこよかった。金田龍之介がサラの母親役をやらされる場面の芝居がもう本当に女方だった。新派で花柳章太郎などの女方芸を身近に見ていた人だものと痛感。(全くの余談:それと金龍さん、実は小学校の同級生のお父さんだったのでした。)

写真は前回公演のチラシの写真(これは裏側)を載せたどこかの地方公演のサイトより。
関連してミュシャ展を観てきた感想の記事はこちら


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは! (merryjapan)
2005-10-31 10:19:06
コメントとTBありがとうございます。

サラ、ほんとによかったですね。

ぴかちゅうさんの記事を読んだらまた記憶がよみがえってきて、いい舞台だったなぁと改めて思いました。
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トラックバックしました (urasimaru)
2005-10-31 14:38:40
こんにちは。サラの感想を検索して来ました。

お久しぶり、ですよね?

アホな感想でスイマセンが、トラックバックさせてもらいました。ほんと、いいお芝居でしたね。
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Unknown (cocomama)
2005-11-01 16:26:00
宝塚ネタ、見てね♪
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皆様、TB、コメントありがとうございます! (ぴかちゅう)
2005-11-02 00:24:32


★merryjapanさま

gooブログの中でサラの感想を検索して飛んでいかせていただきました。早速TB返しいただきまして有難うございます。学生時代に劇場のバイトというのはいいお仕事ですね。楽しみながら頑張ってくださいね。

★urasimaruさま

本当にいい舞台でした。ストレートプレイで久々に内容で大満足したなあ。同じサンシャイン劇場の『獅子を飼う』も観たくなってきてしまいました。三津五郎さん、平幹二朗さん、火花散るでしょうねえ。

★cocomamaさま

gooブログにはBBSがないからねえ、こちらの記事にお呼びがかかりましたか(笑)なあるほど、宝塚ファンをオペラにお誘いするにはいいですねえ。

タイトルを聞いたことのあるヴェルディの「イル・トロバトーレ」とはこのようなお話でしたか。宝塚の「アイーダ」の翻案は観たのですが、オペラも劇団四季でやってたブロードウェイ版ミュージカルもまだ未見です。比較好きの私はどれも観たいですが、なかなか機会がないです。

今体調があまりよくないので11月の観劇予定は2回しか入れてないくらいです。もう少し元気になったらオペラ観劇第二弾をいってみたいものです。

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はじめまして (孔雀)
2005-11-02 22:05:34
足跡返しです。

gooブログが直通できて良かったですね。

自分も舞台には興味があるので、読ませていただきます。
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Unknown (かつらぎ)
2005-11-03 01:37:18
ターコさんは、偉大です!

今回は見にいけませんでしたが、

次回はぜひぜひ!



ともかく、私にとっては偉大なひとです!
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孔雀さま、かつらぎ様 (ぴかちゅう)
2005-11-04 01:04:16
★孔雀さま

次の記事に書きましたが、ミクシィの「足跡帳」、gooでつくってつなげてみました。教えていただいてありがとうございました。これからも是非遊びにきてください。お待ちしています(^O^)/



★かつらぎ様

>ターコさんは、偉大です!

同感です。あまりに強烈な個性をお持ちなのでどんな役でもオールマイティという芸質ではないと思いますが、こういうハマリ役にあたるともう追随を許さない感じですね。これはもうライフワークにしていただきたい役です。金龍さんもずっとお元気でおふたりで再演を重ねて欲しい作品です。

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(*^^*) (midori)
2005-11-05 12:12:01
初演、再演と観たので、今回は他の予定が立て込んだこともあり見送りました。

麻実さんでなければ、実現しなかったであろう舞台。

又、あのお二人ならでは素晴らしいものだと思います。

再演を観た時、つくづく思いました。

“サラを観る事は出来なかったけど、この人をオンタイムで観る事が出来るのが幸せ!”と。

ぴかちゅうさんの感想を読みながら、再び感動が甦ってきました…。

(*ーー*)
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