ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

12/01/14 新春浅草歌舞伎第二部「敵討天下茶屋聚」で亀治郎を堪能

2012-02-12 21:45:14 | 観劇

今回で亀治郎・愛之助は「新春浅草歌舞伎」を卒業。その二人が芯になる第二部「敵討天下茶屋聚」もしっかり書いておこう。
「新春浅草歌舞伎」の公式サイトはこちら
以下、冒頭に上記のサイトからのみどころを引用。
【猿之助四十八撰の内 通し狂言「敵討天下茶屋聚」】
序幕 四天王寺の場より大詰 天下茶屋村敵討本懐の場まで
第2部は江戸時代に大坂で実際に起きた事件を元にした傑作仇討狂言、猿之助四十八撰の内『敵討天下茶屋聚』を通しで上演致します。東間三郎右衛門に父を騙し討ちされ、お家の重宝を奪われた早瀬伊織と源次郎兄弟は、安達弥助と元右衛門兄弟を供に敵の行方をたずねる旅をしています。
元右衛門は、早瀬兄弟に仕える誠実な家来かと思えば酒乱となり、敵側に寝返った後は残忍さをみせつつ同時に滑稽さや小心さも持ち合わせている見せ場の多い役です。亀治郎は片岡造酒頭とともに二役を勤めます。元右衛門が大詰で客席を縦横無尽に逃げ惑う、熱気溢れる市川猿之助ならではの演出にもご期待ください!
主な配役は以下の通り。
安達元右衛門/片岡造酒頭=亀治郎
東間三郎右衛門=愛之助 安達弥助=男女蔵
早瀬伊織=亀鶴 妻染の井=春猿
早瀬源次郎=巳之助 許嫁葉末=壱太郎
人形屋幸右衛門=薪車 奴腕助=段一郎
「敵討天下茶屋聚」は昨年5月に幸四郎が二役をつとめた舞台で初見。その安達元右衛門と東間三郎右衛門の役は亀治郎と愛之助がそれぞれつとめ、亀治郎の二役目は片桐造酒頭。役者の組合せによって配役も脚本も変えてしまうのが歌舞伎の面白さだ。

この芝居が当たったのは、座頭役者が小悪党の安達元右衛門を面白く魅力的に演じたからで、今回のようなバージョンが主流。亀治郎が金丸座で初演して好評だったということなので、今回一番期待の演目だった。
東間三郎右衛門は、仁木弾正を演るような役者のニンの役。愛之助が好演し、仁木も是非観たいと思ってしまった。片岡造酒頭の亀治郎と遭遇して深編笠をとって二人で極まる場面も堪能。なるほど、こんな風に二枚看板を配役するのかと納得してしまう。

物語の軸になっている敵討ちの主人公の源次郎と許嫁葉末を巳之助・壱太郎の若手コンビがつとめているのが健気な感じでよく、兄伊織の亀鶴とその妻染の井の春猿もよい。早瀬兄弟の郎党の安達弥助の男女蔵が情の深い脇役をみせてくれているのも嬉しい。

しかしなんといっても亀治郎の安達元右衛門がいい。元々は悪人ではない。酒にだらしなく、そのしくじりで成敗されても仕方がないところを赦され、まともに生きようとしていたのだ。その弱点につけこまれ、無理矢理に酒を飲まされて主人を裏切るように仕向けられてしまうところは可哀想でもある。しかしながらそこで開き直って悪の道に踏み込んでいく。
東寺貸座敷の場で、軒の藤棚の上づたいに引き窓から忍び込もうとする時、猫の鳴き声をして誤魔化そうとするが、まさに猫のようなしなやかな動きも感心至極。忍び込んだ末に男女蔵の実直な兄の弥助を殺してしまうことで悪人ぶりが極まる。

元右衛門が東間三郎右衛門にとりたてられて、偉そうになっているところも笑える。とうとう源次郎たちに見つけられ、客席の中に分け入って隠れたりしながら逃げ回る亀治郎に客席は沸きに沸く。ここをたっぷり楽しませるのが澤瀉屋版ということらしいが、楽しいといったらない。ついには源次郎に討たれるが、染の井の袖を離さないので春猿が笑いを堪えきれないでいる。ここはワルノリのしどころのようだ。
そういう人間の弱さ、愚かしさ、滑稽さを体現する人間くささたっぷりの小悪党でどれだけ観客に憎めないと思わせるかというので役者ぶりが試される。この元右衛門を、軽やかに手足の指先まで細やかに愛嬌たっぷりに見せてくれることで、この芝居の面白さもぐっと増した。

ついに東間に敵討ちをというところで、とりたてられた殿の代参を盾にとられるが、捌き役として片岡造酒頭の亀治郎が颯爽と登場。敵討ちができるように取り計らい、見事に敵討ちがなり、「本日はこれぎり~」と居並んでの幕切れ。
愛之助を東間にしての二枚看板的な配役ではあるが、やはりこの演目も亀治郎が座頭格ということで、浅草の卒業+猿之助襲名披露に向けての大きなステップとしての舞台となっていた。
いよいよ6月の猿之助襲名が楽しみになってきた。

1/8の「新春浅草歌舞伎」第一部の記事はこちら


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