ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

11/05/11 小曽根真プロデュース「井上ひさしに捧ぐ」で落涙(T-T)

2011-05-13 23:59:14 | 観劇

井上ひさしが亡くなって1年。4/9が命日。私の父の命日が4/10と大切な人を失った日が続く。小曽根真プロデュースで「井上ひさしに捧ぐ」という追悼コンサートが企画され、その5/11は東北大震災からちょうど2カ月という日になってしまった。
文楽公演を観た国立小劇場から半蔵門線でかけつける。Bunkamuraオーチャードホールはマシュー・ボーンの「白鳥の湖」をアダム・クーパー主演で観て以来だ。
Bunkamuraのサイトからこの企画の項はこちら
以下、上記よりほぼ引用。
「小曽根真は2009年10月に上演された井上ひさし氏の舞台「組曲虐殺」の音楽・演奏を担当し、第17回読売演劇大賞、最優秀スタッフ賞を受賞するなど、生前の井上氏とは深い繋がりがありました。
第一部では小曽根真を中心に、井上氏主宰のこまつ座ゆかりの俳優たちとともに、音楽面から井上氏の功績を振り返ります。また第二部では井上氏の委嘱により小曽根真が作曲し、2003年山形県国民文化祭にて初演されたピアノ協奏曲「もがみ」をオーケストラとともにお届けします。」

第一部は、井上ひさし作品に登場する音楽を、ジャズトリオ=小曽根真(ピアノ)・中村健吾(ベース)・高橋信之助(ドラムス)の演奏で、こまつ座ゆかりの俳優(井上芳雄・大竹しのぶ・神野三鈴・木場勝己・辻萬長・剣幸)が歌うという肩のこらないもの。
さらに、客席にいるゆかりの俳優に呼びかけて急遽舞台に上がってもらって一緒に歌わせるという予想以上の楽しさに会場は沸きに沸いた。植本潤、山崎一、久保酎吉が巻き込まれていた。
ただ、井上ひさしと長くコンビを組んだ宇野誠一郎作曲の作品「ひょっこりひょうたん島」のコーナーで泣けた。今回の大津波で被災した岩手県大槌町の大槌湾の湾内にある蓬莱島がひょうたん島のモデルとされているのだが、島も津波をかぶって灯台が流されてしまったという。このコーナーで被災地支援カンパとメッセージを幕間にロビーで受け付けると案内があり、その島の被災前の写真をバックに客席も一緒に歌ってくださいということになった。ところが、その前にひとつお知らせということで「作曲された宇野さんが4/26に亡くなった」ということを聞かされた。そうなると目頭が熱くなってまともに歌えなくなってしまう。小曽根さんにバトンタッチされる前は長く宇野さんの音楽で楽しませてもらったんだもの。井上さんに続いて宇野さんもかと、私は合掌しながらの合唱になってしまった。「こまつ座の音楽」というCDを以前の観劇時に買っているので、それを聞いて追悼させていただくつもりだ。

冒頭のジャズ演奏の「マック・ザ・ナイフ」は井上さんが愛したクルト・ワイルの作品。2つの舞台の音楽の作曲を小曽根真が担当したので、その「組曲 虐殺」「日本人のへそ」(今年の再演版)からの歌が続く。

小林多喜二を主演した井上芳雄が歌わない「豊多摩の低い月」を井上さんが好きだったというエピソードで芳雄くんがヤキモチ発言も飛出したり、石原さとみが歌ったのを大竹しのぶが「さとみちゃんよりずいぶんふけててごめんなさい」とおどけたり、共演者どうしの仲のよさがにじむトークとハーモニーが心地よかった。やはり歌は井上芳雄(さすがに東宝ミュージカルのプリンス)と剣幸(さすがに宝塚元トップ)が飛びぬけて聞かせた。
さらに生きることへのエールがこもったものが選曲されていたようで、満足した第一部終了。

少々気が重い第二部のピアノ協奏曲「もがみ」。小曽根真の弾き振り予定は変更になってジョシュア・タンの指揮で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏。ピアノコンチェルトというと最近では「のだめカンタービレ」劇場版のTVオンエアで聞いたくらいで普段なじみがない。
ところが冒頭に民謡「最上川舟歌」の三味線と独唱が始まってびっくり!民謡を習っていた父がよく唄うのを聞いていたのだ。冒頭の「エーエンヤラエーエンヤラエー、エーエー、エンヤラエット、ヨイコラマカセ、エンヤコラマカセ」という節は頭にしみついてしまっている。その後の歌詞は方言がきつくて耳からだけだと内容がよくわからなかったものだ。今回も同様だが、父の唄う表情が浮かんできて、またまた落涙。

その後で3楽章までのオーケストラ演奏だったが、ジャズのビッグバンド的な演奏になるところもあったし、舟歌の冒頭の旋律が出てきたりして、なるほどなぁと思って聞いていた。

演奏後にこの曲に関わるエピソードも紹介された。小曽根さんが井上さんから舟歌を聞かされて、「これをもとにピアノコンチェルトをつくってください」と頼まれ、ビッグバンドには書けるけれどフルオーケストラには書けないと断ると「3年あるから大丈夫です」とのダメ押しで引き受けさせられてしまい、すぐにオーケストレーションの本を買って勉強して作ったという。今回は女声合唱がついたが、国立音大でジャズを教え始めたので学生さんたちに出演してもらって3演目にして初めて実現したとのこと。

最後に第一部の俳優陣が登場(大竹しのぶは次の舞台の稽古へ)。「組曲 虐殺」から「胸の映写機」がオーケストラをバックに歌われた。贅沢な企画を堪能させてもらって幸せだなぁと思えた。冒頭の写真は、今回のコンサートでも舞台の上方に掲げられた井上さんの笑顔の写真の画像。

Bunkamuraは今年長く改修工事が入るのでオーチャードホールも大きく変わるようだ。3階席などに階段だけしか行けないのはなんとかしてほしいなぁ。感謝しつつも、お願いである(^^ゞ

最後に、井上ひさし関連の記事をいくつかリンクしておきたい。
昨年4月の追悼記事
月刊『文藝春秋』の昨年7月号に掲載された井上ひさし「絶筆ノート」の言葉に関しての記事


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2 コメント

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Unknown (hitomi)
2011-05-14 21:11:26
悲しいけれど行くことが出来よかったですね。宇野さんもお亡くなりになって‥
今の状況を井上さんがご覧になったらなんとお怒りになるでしょう。
スワンレイクをもご覧になったのですか、私は録画で観て気に入り、クーパーの危険な情事は芸術劇場で見ました。
あの王室批判もみものでした。
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★hitomiさま (ぴかちゅう)
2011-05-15 02:20:47
>今の状況を井上さんがご覧になったらなんとお怒りになるでしょう......がん闘病後にお亡くなりになったのですから、日本の惨状をご覧にならなくてすんでご本人のためにはよかったように思えます。
hitomiさんがお読みになった『だまされることの責任』(佐高信×魚住昭)の角川文庫版を私も古本屋で見つけて読みました。だまされている多くの国民もその多数派の世論を変えられない少数派も結局は一緒に責任をとらなければならなくなるのですよね。原発問題も然りだと思っています。だまされない人を増やしていけるかどうかが問われています。
「スワンレイク」はピンチヒッターでの観劇でしたが、王室へのパロディが効いてました。今回のロイヤルウェディングを日本の報道もかなり好意的に取り上げていましたが、イギリスでは半数以上の国民が「感心がない」という世論調査結果が出ているようです。
それでも王室制度をなくすというのは国王がかなりひどい専制をしない限りは難しいようです。最近ではネパールの王制が無くなったのもそれですね。社会保障先進国の北欧諸国も王室が残っていますから、民主化=共和制への移行ともならないということがようやく私にもわかってきました。このあたり、なかなか難しいです。
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