ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/01/08 歌舞伎座昼の部③幸四郎の「勧進帳」

2007-01-11 01:00:22 | 観劇

「勧進帳」はようやく3回目。今回は昨年通算900回を超えた幸四郎の弁慶だ。
昨年11月花形歌舞伎の「勧進帳」の感想はこちら
これまでまともに聞き取れたことがないので、内容的には今ひとつ楽しめないできた。ようやくネット検索で下記のところにたずね当たった。
こちらのHPをご紹介
能の「安宅」を踏まえた作品でつくづく言葉が難しい。高校の古文の教科書のようだ。なかなか耳からは理解できない。初心者には字幕があった方がいい作品だ。明治以降、歌舞伎が高尚なものにされていく流れの中では上演されやすい演目だったのではないかと推測。九代目團十郎・五代目菊五郎・五世歌右衛門で天覧歌舞伎になったのもこの演目ではなかったろうか。
前日にしっかりと目を通してから、三度目の正直のつもりで観る。幸四郎の弁慶は口跡がよいとも聞いているので今度こそ内容的にもしっかりと楽しみたかった。

4.「歌舞伎十八番の内 勧進帳」
今回の配役は以下の通り。
武蔵坊弁慶=幸四郎  富樫左衛門=梅玉
亀井六郎=高麗蔵   片岡八郎=松江
駿河次郎=宗之助   常陸坊海尊=錦吾
源義経=芝翫
これまでの富樫は富十郎と菊之助。今回の梅玉は登場からなかなかいいかもと思わせた。強力姿の芝翫の義経が網代笠を上げて顔を見せるとものすごい拍手。とにかく立派な義経だ。四天王は松江を除く3人がPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」の顔ぶれ。宗之助は立役もなかなかいいと思う。染五郎との共演から高麗屋に馴染んでいるのかなとも推測。
最後に登場の幸四郎の弁慶。なかなか立派である。ところが.....やはり何をしゃべっているのだか聞き取りにくい。なんだいつもの時代物の幸四郎のこもってしまう台詞まわしのままだ。「幸四郎、弁慶もか!」の気分でがっかり。梅玉も山伏問答でどんどんと声を張るところにさしかかると聞き取りにくい。こうしてみると富十郎の富樫は立派だったなぁと思い出す。

また幸四郎の弁慶は、たっぷりときめてほしいところがきまらない。「俊寛」で吉右衛門のたっぷりを観たあとだから尚更物足りない。手馴れた弁慶だから流れてしまうのか、それとも幸四郎流の「歌舞伎進化論」にのっとった弁慶なのか。昨年のNHK「新春桧舞台」で観た「連獅子」でも踊りがうまくないことがわかったが、その舞踊がしっかりと身についていないことから幸四郎の身体の動きは新劇っぽいと言われるのだろうか。
届いて間もない歌舞伎会の会報『ほうおう』の「歌舞伎爛漫」で幸四郎が登場。こう語っている。「歌舞伎の楽しさが60歳を過ぎてようやく分かってきました。息子の染五郎のように小さいころから歌舞伎が好きでしようがない子もいれば、僕のように60過ぎてからどんどん面白くなってくる人間もいる。芝居って本当に不思議です」
父である先代幸四郎が東宝に移籍して松竹に戻った時にはいい役が回ってきにくい立場になったという経過もあって高麗屋の歌舞伎界での位置というのはなかなかよくはないのだろう。その影響か幸四郎は東宝ミュージカルや現代劇での活躍が若い頃からめざましかった。その分、歌舞伎に力を入れる時間の積み上げは他の同世代の役者に比べるとどうしても少なくなるはずだ。息子に真面目にライバル心を抱くタイプでもあるらしいので、息子ともどもしっかりと修行を続けていただけると思っている。台詞回しがこもって聞き取りにくいのは七代目幸四郎もそうだったらしいが、遺伝だからと言わずにしっかり聞こえるように発声してほしい。

またHPで内容に目を通してからビデオに録画してあった1/2「初芝居生中継」松竹座の團十郎・海老蔵・藤十郎の「勧進帳」を観た。團十郎は時に間延びした台詞回しになってしまうところが気になるが個性的な声にも慣れた私はけっこういい弁慶だと思ってしまった。あの大きな目がいろいろに変化するのにもひきつけられる。海老蔵は高い声を張るところはあいかわらず。それよりも流し目にクラクラさせる富樫だと変なところで感心。藤十郎はさすがの義経。うーん、初春「勧進帳」の東西競演は西に軍配を上げざるを得ない。

ここで素朴なお願いをひとつ。口跡のよい弁慶を観たい。菊五郎に富樫ではなく弁慶をやっていただけないだろうか。そして富樫は菊之助という父子共演が観たい。成田屋のお家芸だからできないとかいわずになんとかどうだろうか。

写真は幸四郎の弁慶800回の画像を報道写真画像より。
以下、この公演の別の演目の感想
1/8昼の部①「松竹梅」「喜撰」
1/8昼の部②吉右衛門の「俊寛」


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6 コメント

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小声で... (harumichin)
2007-01-11 15:20:12
菊五郎親子はさておき、私は、そろそろ染五郎の弁慶をみてみたいなあ....と小声でいってみます。
お父さんや、おじさんたちとは、タイプが違いすぎて、ニンとはいえない染ですが、ニザさんタイプの弁慶ならとうでしょうとおもうんですがねえ。
なんといっても弁慶役者の家系の染。
従兄弟二人もすでに演じてるし...残るは染!って
はずれてもいいから、1度は見たいなあ...。ってあくまで小声で。
「勧進帳」 私は、南座で見た、弁慶團十郎、富樫仁左衛門、義経菊五郎が今までで一番です。
TVでも放送されましたが、ライブの迫力には遠く及ばずでしたが、その時の迫力は、忘れられません。
勧進帳が、どうしていいのか?ちんぷんかんぷんだったビギナー時代に、この人すごい!と延年の舞で圧倒されたのは、二世緑松でした。
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★harumichinさま (ぴかちゅう)
2007-01-13 04:08:37
弁慶團十郎・富樫仁左衛門・義経菊五郎とくると昨年顔見世の先代萩の顔揃えじゃないですか!なんか想像するだけで見ごたえ十分だろうなぁと思ってしまえます。
二世松緑は3人兄弟の中で一番台詞回しがよかった方でしたね。口跡のいい弁慶だったんじゃないかしら。その上に舞踊もうまかったときいてますから、本当にいいものを観られてますね。私も何かの機会に観たいものです。
えっ?染五郎の弁慶ですか?「車引」の松王丸だけで声をつぶしてしまっていたのを観てますから、まだまだなんじゃないでしょうか。TVのドキュメンタリーで見たのですが吉右衛門に指導を受けている時に「喉をしめている」と言われてました。私も常々そう思っていたところでした。変に喉に力が入ってしまっている発声を抜本的に変えないと喉をやられそうで心配です。
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夏雄ちゃん (かしまし娘)
2007-02-05 12:59:19
ぴかちゅう様、まいど!
キュェエエ~!起きていられることがエライ!です。
成田屋のお家芸だけど、「演らせて下さい~」って言ったらOKでるから大丈夫ですよ。
夏雄ちゃんイイ人だもん(笑)。菊五郎にお願いされて断るわきゃない(笑)
私は誰で観たいかな~「勧進帳」という作品自体があまりツボにはまらないので…
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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-02-05 21:41:56
TB、コメント有難うございますm(_ _)m
>「勧進帳」という作品自体があまりツボにはまらない.....実は私もあんまり好きじゃないんです。でもなんでこんなに上演されるのかわかりたいと意地になってます(^^ゞ
>夏雄ちゃんイイ人だもん(笑)。菊五郎にお願いされて断るわきゃない(笑)
関容子さんの「海老蔵そして團十郎」を1月の新刊の文春文庫で読みました。本当にイイお人です。父の海老さまと全く違うタイプなんですね。お元気になっていただいて本当に有難いとこの本を読んであらためて痛感しました。
是非是非、菊五郎弁慶が観たいです~。
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宜しくお願い致します (dream)
2007-05-06 09:05:49
>これまでまともに聞き取れたことがないので、内容的には今ひとつ楽しめないできた。ようやくネット検索で下記の所にたずね当たった。こちらのHPをご紹介

私も台詞が気になっておりました。ぴかちゅう様が紹介されていたHPを私も同じように紹介させて頂きました。事後報告ですが御承知頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。
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★dreamさま (ぴかちゅう)
2007-05-06 23:17:01
私の方はかまいませんが、ご紹介したサイトの名前がわからないのが気にかかってます。ブログの記事のご紹介だとTBできるのですが、サイトで連絡できなかったりするとお断りできていなかったりします。
パリオペラ座公演の5/4のNHK教育TVの留守番録画は失敗したみたいで、友人から回ってくるのを待っているところです。團菊祭の「勧進帳」も楽しみにしています。
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