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シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルトの「初期ピアノソナタの魅力」は誰が語るのか?後編(No.2052)

2012-05-05 09:34:22 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 「後編」では『シューベルト大全集』を録音した盤3種類から開始する。「ピアノソナタ全集」でも無ければ、「中後期作品全集」でも無い「大全集」ですよ!

  1. シュヒター盤 → 「世界初のシューベルト大全集,鮮明な音 & 素晴らしい解釈の初期作品録音!」1970-71


      世界初の「シューベルトピアノソナタ全集 = ケンプ盤」が出て間もなく、マイナーレーベル2社から「ベーゼンドルファーインペリアルを使用してのシューベルト全集」が企画された。その1つがスイス「Tuder」レーベルに拠る 「シュヒター : シューベルトピアノ曲大全集」である。録音技師は「ウィーンの ヨーゼフ・カミコフスキー」が起用され、録音技師と調律師の関係で ウィーン で録音されている。ちなみに「ブレンデル第1回録音」がこのシュヒター大全集の録音開始前に2枚収録されており、この2枚は「ベーゼンドルファーインペリアル」で録音されている。(D960,D760,D959,D790) 狭いウィーンで情報が駆け巡ったことだろう、ブレンデルは「3枚目以降はセッション録音は全てハンブルク・スタインウェイ」起用で録音し、名声を得ることになった曰く因縁のある録音である。

    シュヒター盤は、全ての「シューベルト全集」中、録音が最高!


      録音後40年以上経過しているが、「ベーゼンドルファーインペリアルの音色を絶妙に捉えた」のは他には無い。演奏は、「1曲入魂」で初期ソナタは特に素晴らしい。「未完成楽章の扱いに統一性が無い」「舞曲を勝手に間引く」が難点。後、「超絶技巧」を有していないので、D760 とか D850 は「技巧不足」、D157第3楽章でさえ技巧不足が聴こえる。だが、『シュヒター大全集』に拠って多くの「シューベルト弾き」が曲の魅力を知った。

    声部進行が極めて明瞭で、美しいベーゼンドルファーインペリアルで綴られるのが魅力。あたかも弦楽四重奏団が演奏しているかのよう!


      ブレンデル、ダルベルト、ヴァイヒェルト、ビルソン、ヴィンケル の少なくとも5名は、シュヒター盤 を見据えて音楽作りをしている。現在廃盤なのが残念でならない。

  2. ダルベルト盤 → 「日本コロンビアが世に送り出した全集。初期ソナタの水準は高い」1989-95


      上記シュヒター盤に見習い、「ソナタは全曲、小品も完成曲全曲、舞曲は抜粋」で録音した大全集。シュヒター盤に次いで規模が大きい。枚数はこちらの方が多いが、40分収録してないCDが2枚あるなど、いろいろと難点あるよ。
      D537,D575 は結構弾き込んでいて水準が高い。ただ、スイスの ラ・ショードフォン のハンブルク・スタインウェイ録音なのだが、録音が日本コロンビア録音にしては、切れが無い。ペダリングの問題なのだろうか? 尚、未完成楽章は「シューベルトの残したママ」演奏する「リヒテル・タイプ」でこれは好みが分かれるところ。

  3. ヴァイヒェルト盤 → 「主観的にロマンティックに歌い上げる!」1984-86


      ロマンティックに歌い上げるが嫌味が無いのが最大の特徴。技巧も相当にある。未完成楽章は、演奏しない楽章と補筆版を演奏したソナタがあり、その基準は「残った楽章で纏まる」とヴァイヒェルトが思った曲は省略、「纏まりは悪い!」と思った曲は補筆版演奏のようだ。結構針を刺したハンブルク・スタインウェイでタッチも強い。ややオフマイクが特徴の1つ。

  4. ビルソン盤 → 「フォルテピアノで弾いたシュヒター盤を目指し成功!」1994-98


      これまで挙げて来た盤は全て「モダンピアノ」演奏だ。佐伯周子 はモダンピアノ奏者だからなあ。

      5種類のフォルテピアノを弾き分けての録音で

    ビルソンが、未完成楽章は適当に「抜いて」録音する対応は「まさにシュヒター盤直系」!


      D840第4楽章を抜いた、なんて完全にパクり。D459+D459A や D625 でも驚異の「楽章抜き」をしている。「シューベルト時代のフォルテピアノ録音」としては、あまり収録が良い方には聴こえない。オランダやら、ニューヨークやら、トロントの「グレン・グールド スタジオ」やら、北カルフォルニア音楽大学 やら、トロント「CBCスタジオ」やらを、ハンガリーの「フンガロトン」スタッフがかけずり回ったのが原因の1つだろう。「ホールトーン」が全く感じられないんだよね > スタジオ録音といえども。とにかく「残響不足」。私高本 は「オンマイク好み」なので、残響不足に感じる録音は少ないのだが、その数少ないのがこれ。「フォルテピアノでシュヒター盤直系」聴きたい人向け。
      
  5. ヴィンケルプロデュース「ブリリアント11枚組」 → 玉石混交だが「素晴らしい ヴュルツ盤2枚 + バール盤」2000


      2000年たった1年で「シューベルト大全集CD11枚組」をリリースすることを決意したのが、プロデューサー = Pieter van WINKEL。本人もピアニストで D946全3曲 と D947 を演奏しているんだが、D947 の方は「ドイチュ番号」間違えて記載されている(泣
      ピアニストは9名で、内1名はフォルテピアノを演奏する! と言う一見すると「何だ?こりゃ??」状態に見えるのだが、きちんと統一されている稀有な例である。
      ピアニスト9名で11枚分を分けているが、漫然と見ると分かり難いが、相当に「依怙贔屓の強い」選曲になっている(爆

    1. 「モーツァルト:ピアノソナタ全集」をリリースさせた 大お気に入りピアニスト = ヴュルツ に2枚『最優先』呈示


        結果、D960 + D537,D575,D664 を選択した。録音を聴く限り、「D960 では ブレンデルの影響最大、D537,D575,D664 では、シュヒター盤を想起させる 声部進行の流れ」が素晴らしい演奏!
    2. 次はおそらく Frank van de LAAR に優先的に2枚。D959 と D850 と言う「技巧的な大ソナタ」2曲!


        おまけとして、余り興味ない3曲も付いて来たようだ。(D557,D566,D840) 技巧的な2曲の仕上げは「普通」。特に良くも悪くも無い。
    3. 次はおそらく Martijn van den HOEK に優先的に2枚。『即興曲集全曲 + さすらい人幻想曲』!


        おまけとして、ほとんど興味無い「舞曲集」を押し付けられたようだ(爆
    4. 残りの配分は不明。バール に来たのは「残り」だった様相


        この辺は全くわからん。『バール 補筆&演奏』は(好みに合うかどうかは別として)『世紀の補筆』だ。この1枚を聴くだけで価値のある「大全集」である。バール はリリースを見ること無く死んでしまったんだよねえ(瀑涙

     こんな感じの「大全集」である。

  6. プリュデルマシェール(プルーダーマッハ)盤 → 「ライブ感」を楽しむCD 2001-02


      若き日には「精密なベートーヴェン、シューベルト、ドビュッシー」を聴かせてくれた プリュデルマシェール が「ライブ録音」レーベル = トランザール にて「CD復帰」してくれた。「そこに聴衆がいて楽しんでいる臨場感あふれる録音」であり、ミスタッチは無いのが驚異的!
      ライブ録音としてこの水準を確保している安定度は信じられないが、あくまで「ライブ録音として」なのだ。やや安全運転になってしまっているのは、「ライブ録音の宿命」なんだよねえ、、、

  7. クリーン盤 → 「シュヒター盤と並ぶ ベーゼンドルファーインペリアル録音の規範」1971


      主要連作小品集 + 「さすらい人幻想曲」をブレンデルに先に録音されてしまった後で出てきた企画らしい。おそらく DGの「ケンプ盤」の成功を見て、VOX のメンデルスゾーン社長(← メンデルスゾーン一族だよ~ん!)が企画した。この頃には、ブレンデルは離れていたので、おそらくクリーン に行った、と推測される、実態はわからん(爆
      VOX録音中でも「出色の出来」の演奏 & 録音。これは1人でも多くの人に聴いてほしい。確実にベーゼンドルファーインペリアル録音で、おそらく「ウィーン録音」。録音技師 = カミコフスキー だと推測するが、記載が全く無いのでわからない(泣

  8. バドゥラ=スコダ盤 → 「フォルテピアノのシューベルトの到達点!」1991-96


      バドゥラ=スコダ2回目の「シューベルトピアノソナタ全曲録音」との伝説を伝え聞いているが、1回目の録音 = ベーゼンドルファーインペリアル を見たことも聞いたこともないので、本当に2回目なのか? は確認していない。

    シューベルト初期ピアノソナタをセッション録音で2回録音したのは、バドゥラ=スコダ ただ1人!


    だと記憶している。(猫頭なので、ツッコミ入れ無いように!) 初期ソナタの「切れ」と「冴え」は最少に言って「フォルテピアノ奏者」では抜群であり、「モダンピアノ奏者」でも ヴュルツ や シュヒター クラスである。
      5種類の フォルテピアノ を弾き分けているが、他の フォルテピアノ録音 とは比較にならない「録音の良さ」も指摘しておく。

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