Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

ビゼー「美しきパースの娘」日本初演 批評(No.1561)

2008-07-12 20:44:51 | 批評
本日、標題のオペラが日本初演された。記念すべき初日公演の批評を掲載する。

抜群に良かった ロマ女王マブ役 = 大隅智佳子


 東京オペラプロデュース 前代表 = 松尾洋 が亡くなり、竹中史子(前代表妻)が代表を引き継ぎ後の初のオペラ公演である。
 「カルメン」が世界中から愛されているオペラ作曲家 = ビゼー であるが、他のオペラは「真珠取り」がごく稀に上演されるだけである。(日本だけでなく、世界的な傾向!)オペラ作品が他に無いワケではなく、

  1. ミラクル博士

  2. ドン・プロコーピオ

  3. イワン4世(未完)

  4. 真珠取り

  5. 美しきパースの娘

  6. トゥーレの王の盃(未完)

  7. ドン・ロドリーグ(未完)

  8. ジャミレ

  9. カルメン


と多作。CDでは聴けるものが多いのだが、舞台に接することが可能になったことには、東京オペラプロデュースに感謝するばかりである。ちなみに「ミラクル博士」日本初演も東京オペラプロデュースである。



曲自体は美しい曲が多く、聴き易く、心に残る曲が多い


 超有名曲が2曲もある。

  1. 「小さな木の実」の歌詞で有名な歌曲 ← 第2幕 スミスのアリア

  2. 「アルルの女」組曲第3曲「メヌエット」 ← 第3幕 マブと公爵の2重唱


 他にも、第2幕終曲 ラルフ のアリア などを始めとして、ビゼーの長所が生き生きと表された曲が続く。少なからぬ曲が「カルメン」に直接を与えているので、「おお、カルメン!」と聴こえる瞬間も多い。

台本は支離滅裂に近い


 東京オペラプロデュースの方針である 出来る限り作曲者、台本作者の意図通りにオリジナルな型で分かり易く紹介し、作曲の真価を問う に従い、原台本(サン・ジョルジュ & アドゥニス)の意図を再現しようとしていたが、「イタリアオペラの中で台本の出来の悪いモノ」や「ワーグナーの中後期」に比較しても「容易には理解できない込み入った筋書き」であった。 この台本で「オペラの筋を理解できる聴衆」は数が限られているので、世界中で上演が少ないのもやむを得ないかも知れない。

八木清市演出 は好感持てるが、「歌手の歌い易さ」にもう一工夫ほしい


 極めて難しい台本を下に、八木の演出は「高度を巧妙に用いて分かり易い演出」を目指している。第4幕で男声合唱を右手袖、女声合唱を左手袖 に配して「エコー効果」を用いたり、台本の「矛盾点」をうまく補完する演出であった、と感じる。これで「歌手の歌い易さ」をもう少し気を配ってもらうと、聴衆に「声」がさらに満たされるように感じる次第である。2重唱を腹這いのママ、長々と歌うのは相当に体に負担があるだろう。

ベルリン帰りの 松岡究 指揮は「カルメン」指揮以前のアーティキュレーションが薄くなった?


 ビゼー「カルメン」を2年前に東京オペラプロデュース公演にて、同じ東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団を振って、名演を聴かせてくれた 松岡究 の指揮だったが、「カルメン」の時の冴えは感じられなかった。オケの音量が相当に控えめで、各楽器のソロの時に不安定な演奏もあったので、松岡の解釈なのか? オケの技量の問題なのか? は判断できない。声楽陣は良かったので、「カルメン」時の演奏が聴きたかった、が偽らざる気持ちである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする