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ゴースト・フリート −知られざるシーフード産業の闇− @ エージェンシーアシスト(SOCIAL GIFT THEATER)

2024-01-24 15:13:28 | 映画感想
「知られざる」って。。。
本当に知らなかった、こんな事。

「タイには、人身売買業者に騙されるなどして漁船で奴隷労働者として働かされている『海の奴隷』が数万人存在する」(HPより)

搾取なんてもんじゃない、低賃金労働でもない。
気づいたら船に乗せられ、ひたすら労働させられる。もちろん無賃。眠くなったとしてもドラッグを打たれ、鉄パイプを持って殴ってくる船長に抵抗することも叶わず、周りは海だから逃げられず、人権どころか命さえも蔑ろにされる。そんな人たちが数万人!?
ほんでそんな労働環境で働かされる人が獲った魚を私たちが消費している!?
もう30年以上も。。。



ソーシャルギフトシアターで映画を観始めて6本目。
1番キツいのきた。

いや、そんなフザケタ事言っている場合じゃないな。

なんだ、これ。

儂らがSDGsの話なんかでも馴染みがあるのはフェアトレードとかね。そういうのはよく聞くし知っている。でも、これ、完全に埒外の話だ。
だって、完全に奴隷だもの。人として扱われてないのだもの。

映画はそんな奴隷労働から命からがら逃げ延びてインドネシアにいる人たち(労働者はタイやラオス、ミャンマーから集められるのだけれど、操業する場所は遠洋で、インドネシア沿岸だったりするのですよ)を故郷に帰す活動をしているパティマ・タンプチャヤクルさんのドキュメント。

映画では、実際にインドネシアに行って、奴隷労働から逃げてきた人を探す様子を追いかけていて。
でも、それは当然簡単な事じゃないわけで。
違法操業してる業者にとっちゃパティマさんたち捜索者は邪魔者なのであって。
なんやったら殺し屋雇って捜索者を殺しにくるって話もあったりして。
さらに地元の警察や軍もグルだったりする場合もあるわけで。

そこもまぁ観ながらドキドキしなくちゃいけないの。
それでも行くパティマさん。さすがノーベル平和賞候補になるだけのことはある(←エラそう)

さて、問題はどこだ?
「そんな大問題を放置して、タイっつー国はひでぇな」
で済む話じゃない。

違法操業で獲られた魚を消費するのは儂ら日本人を含む先進国の人間だ(まぁ、日本が先進国かどうかは最近だいぶアヤシイが)。ならば、その安い魚を消費する儂らにも倫理的な責任がある、というのはフェアトレードの話と同様。
なんだけど。。。。
そもそも、この話、日本で報道されているの?
みんな知っているの?
儂は知らんかったし、映画の後で話をした時もみんな知らんかったみたいやけど。。。

HPの解説によるとヨーロッパではパティマさんたちの活動が報じられた事で、EUからタイに「違法操業対策せな、もう魚買わんで」という通告があり、アメリカでも「あんたんとこ、人身取引を放置してるん最低やな。経済制裁するかもなー」って評価を出したとの事。
これでタイ政府は一応、対策に取り組んだらしい。
(映画の最後にタイ首相がパティマさんのNPOを訪問したシーンがあるけど、多分そういう事なのだろう)
じゃ、日本は?
なんかこの件でタイになんか言うた?

さらに日本。そもそも外国のことをとやかく言えるのか?という話。
技能実習生の実態を見てみればいい。現代の奴隷労働なんて言われているじゃないか。
今回、参加者のお一方が、水産にも関連する仕事をしていて指摘してくれた。漁業の場でも技能実習生が働いているのだけれど、海に出てしまったら管理のしようがない、何かあった時に有耶無耶にされてしまう事も容易に想像がつく、と。

ガビーン。
なんだその話、怖すぎる。
そんな酷い事が日本で?想像したくないけれど想像できてしまう。
技能実習生の置かれている状況についてのドキュメンタリーとか、何本か観たけれど、おおよそ人として扱われていない職場が一つや二つではない。日本人に対してだって奴隷とまでいかないにしても、いまだにブラック企業ってのがのさばっている現実もある。

一方、タイにとってみたらどうなのだろう。
その企業が、どんなに人権を無視していようと、どんなに酷いやり方で操業していようとも、国際競争力のある「安い魚」を提供しているには違いない。それは国の輸出高を押し上げることに貢献しているのだ。国からしてみれば外貨を獲得してくれる優良企業なのかもしれない。勿論、世界の方向性はそれを許しはしない。が、世界や世論が強くその問題性を指摘しなければ、為政者は目の前のオトクな餌に飛びつくだけの話なのだ。
その「安い魚」という言い訳にしがみつく日本の姿もそこにあるのだ。

同時にそれによって成り立つ物流もある。
というか、市場規模を考えれば簡単に済む話ではないことくらい容易に想像できる。
言ってみれば地球全体のシステムの問題、ということになるのかも。

途上国の問題と切り捨てるのは容易いが、それを支えているのは世界規模のシステムであり、恩恵に浴する儂等だ。
それを忘れる無責任にはなりたくはない。

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