ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

迷子の警察音楽隊@シネ・リーブル神戸

2008-02-24 10:23:28 | 映画感想
むふふ。タイトルが良い。惹かれる。惹かれるがままに神戸まで引かれる。

予告編で見てたまらなく行きたくなった映画なのだ。

警察音楽隊が呼ばれた旅先で迷子になっちゃう。
しかもエジプトの警察がイスラエルでだ。
人種的・政治的わだかまりは当然ある、だろうけどにしてもそもそも迷子なのだ。
道に迷って困っている、頼りにできる相手もいない迷子に、無下に刃を向けるような事は人としてありえない。
その設定の妙。

で。
見てきました。

なんと静かな映画。
期待に反して終始落ち着いたトーン。
もっと感動的な展開やメッセージめいたものを期待していた儂は、正直言って見終わったときは物足りなさを感じましたが、そうじゃない。そんな映画じゃないのだ。
味わい深く、そしてゆっくり噛みしめる。そんな映画なのだ。

仮に期待していたようなドラマティックな展開があったり、心温まるようなストーリーだったとしてだ。見たときは満足するかもしれないけれど、この「迷子の警察音楽隊」を見てしまった儂からすればそれはなんとうそくさい。いかにもなものにチープな感動を与えられるなんて、そんな安っぽい感動で満足するなんて事になら無かったことに感謝する。

ん、ちょっと大袈裟かね?

ホントに生身の人間なんてそんな単純なものではない、でも人種が違おうが立場が違おうが同じ臆病な人間なのだ。その素朴でぎこちない人間味に触れられることがこんなにも切なく有難く暖かいものなのか。

警察音楽隊の中の人間関係も、迷い込んだ寂れた町の人々のやるせなさも、恋愛に対して純粋な若者の焦燥も。別に遠い国の特別なことじゃない。
そして異質なものが入ってきたときのなんともいえないあの気まずさ。きっとみんな経験のあるであろうそんなシチュエーションの単純なドラマなのである。だけどそこで少しずつみせる人間模様の機微。このもの静かなトーンの映画だからこそ出描き出せる味わいなんじゃなかろうか。

団長と副団長、それからトランペット吹きのプレイボーイの3人を物語の中心においているけれど、8人いる団員のそれぞれも物語を秘めているかのような期待感がある。
いや、違うなぁー。
本来みんな持っているやん、それぞれの物語を。でも映画では中心人物以外の物語性は無視されるのが普通だと思うのだ。これは判断が分かれるだろうけど、この映画ではその他のメンバーも味わい深く映し出され、彼らののストーリーを感じされるのだ。もちろんそこまでやっちゃうと映画としてはやりすぎやけど。

映画では決して触れられることは無いけれど、政治的なスパイスは効いている。意外だったのは、イスラエルの人達がエジプトの映画や音楽に実は親しんでいたという話。
政治的な齟齬と、文化的な親近感。微妙な空気感はそこにもある。ぎくしゃくした空気が一瞬で溶解するようなことはないにしても、人間と人間が生身で触れ合えば、少しずつ理解は生まれるのでしょう。この映画の登場人物のように。だって同じ人間だからね。

希望的観測に過ぎませんかね?

迷子の警察音楽隊@シネ・リーブル神戸の画像