ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

バーバー吉野@京都シネマ

2007-09-30 01:07:13 | 映画感想
以前見逃した映画だったのでえいやっ、と見に行く。
旧作なのに満席って。。。うん、上映ギリギリに行けばそうなるのか。きっと「めがね」とセットで見てる人多いんだろうな。

この町では小学生までの男の子は「吉野刈り」と呼ばれる髪型にカットすることが決まっていた。伝統的に。
田舎の話だから、だれもそれに疑問を抱かなかったわけだけど、東京から茶髪の転校生が来たことで自意識に目覚めてしまった男の子達の革命譚。

重いようで軽い。
深いようで単にノスタルジー。
そんな感じでしょうか。

散りばめられた少年時代のトピックス。
クラスにたいていいる人気者の女の子、転校生、妙な正義感とエッチ本、そして秘密基地!

冒頭の山の祭りでハレルヤを歌うシーン。
なんなんでしょうね?
わからないから「ん?ん?ん?」って引き込まれちゃうっていう所ではうまい導入なのかしらん。しかし脈絡が。。。皆が同じ髪型をしている事に必然性を持たせるためかな、やっぱり。
直接的に映画の中で転校生が指摘しちゃう事で茶化しちゃってるけど。

ちなみに転校生が持ち込んだ
「髪形が決まっているなんて人権侵害だ!」というテーマはここではただのきっかけでしかないわけです。
そんな事よりもそれに端を発した少年たちの小さな冒険の物語。

そう、今のオトナになってしまった儂らからみたら決して大冒険じゃぁない。
でも、親に反抗して髪をカッコよくしようとする事が彼らにとってなんと勇気のいる冒険であった事か。

家出をして髪型を変えて颯爽とみんなの前に現れて宣言する
「よく聞け、くそばばぁ!・・・  」「   ・・・髪型はイヤだけど、お母さんが悪者になるのはもっとイヤだ。。。」
うっわ、抱きしめたくなるくらい可愛い!!!

そう、君達の冒険は所詮大人の手の中からでることは出来なかった。
けれどもね、大人たちに十分なダメージを与えることは出来たのだ。
おめでとう、君達は大人の階段を確実に上がっているのだ。

個人的には折角のテーマなので伝統の大切さをもっとわかりやすく提示してもらうことも期待したんだけど。それは片手間に語れることじゃないからね。「天狗にさらわれるから」でも実際の暮らしレベルでは問題ないことだけど。
ん~、何が言いたいかって言うと吉野刈りにはやっぱりきちんとした理由があるって事です。きっと。

最後の最後でのちょっとした皮肉がニヤリとさせる。
隣町の女子高生が浴びせる黄色い声にもっと反応してもよかったのにね。

いくつかの大事なことを敢えてスルーして、少年達の視点に重点を置いたところは、むしろこの映画のテーマを絞るために必要だったと思います。
おかげでほら、こんなにほっこりと懐かしい手触りの映画になったわけだから。