パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

恋するハンバーグ

2017-01-15 | book
同年代の作家、山口恵以子の人情小説、「佃 はじめ食堂 恋するハンバーグ」を読んだ。2016年7月刊行。おもしろい。ドキドキさせて、ほろっとさせる。かつて、1970年代前後のホームドラマを見ているよう。

舞台は、昭和40年、東京オリンピック直後の東京、下町で開店する洋食屋が舞台。孝蔵は、38歳、すし屋の息子でホテルの副料理長を務めた、ハンサムボーイ、一子は32歳でラーメン屋の娘。岸恵子似の美女。美男美女の2人は、24歳、18歳で結婚し、小2の息子の高がいる。

登場人物は、その厨房を手伝う、松方英次25歳、日室真也22歳。東北から出てきて1話の「覚悟のビフテキ」で無銭飲食をし、孝蔵・一子夫婦と深い因縁を持つことになる西亮介18歳、孝蔵のホテルの兄弟弟子、後にホテルの料理長になる涌井直行、ホテル勤務時代からのお馴染み、都市銀行の頭取の勝田、病院の女医で一子と同年代の佐伯直。個性ある善人だらけの登場人物が、各物語に絡んでくる。

ウルトラのもんじゃ
亮介が住み込みで店を手伝うようになる。ウルトラQの登場。高がいなくなる騒動。栄次に若い女性の影が。

愛はグラタンのように
孝蔵と一子の馴れ初め。昔、一子に言い寄る慶応ボーイの金持ち息子、不動産屋の時任恒巳。英次と付き合っている風間紗栄子は銀行に勤めるOL。25歳でそろそろ英次との結婚を考えている。紗栄子が英次に、一人立ちのためにいい物件があると相談を持ち掛ける。どうも恒巳が紹介しているらしい。怪しく思う孝蔵。

変身! ハンバーグ
涌井が有名なフランス料理の賞をもらう。忙しくする涌井は、はじめ食堂にやってくる。心なしかやつれたように見えた。

さすらいのコンソメスープ
70歳前後のうらぶれた老人が、はじめ食堂にやってくる。住所不定でお金もないらしい。

昭和45年、1970年万博開催。栄次と紗栄子の結婚式。栄次の後釜で富永亘という青年が来る。はじめ食堂の近くに喫茶店がオープンする。その若い店主、樋口玲子は美女で銀座のクラブで働いていたという。その顔を見て孝蔵はびっくりする。孝蔵と玲子の関係は。亮介の一人立ちの日が近づく。

あの頃を知っている人たちには、空気がまざまざと蘇る。テレビと団らんが直結していた日々。隣近所がほんとうに近かったなあ。孝蔵と一子の周りに起きるいろんな出来事。そこを夫婦で乗り切る。料理小説は、料理の温かさとともに読めるので本当に温かい。まさに人情小説だ。展開も早く、構成もみごと。センテンスが短く、二度読みしてしまった。

コメント
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