パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

ハイドンセット 井上太郎「モーツァルトのいる部屋」

2009-01-31 | music/classic
ベートーベン、ブラームス、ブルックナー、マーラーと交響曲は長大にそしてエネルギッシュに進化していく。
そんな中、ふと心休まる対極にあるのが、ソナタや室内楽曲である。

モーツァルトの弦楽四重奏曲は、まさにその代表選手だ。

弦楽四重奏曲を音楽評論家の志鳥栄八郎は、フランスの文豪スタンダールの言を用いて「第1ヴァイオリンはいつも話題を提供してスマートに会話をリードする、中年の才知にあふれた座談の名手。第2ヴァイオリンは第1ヴァイオリンの控えめな友人で、自分を抑えて友人を引き立てる役。ヴィオラは紅1点で、彼女のおしゃべりは、会話に花を添え、やさしさをもたらす。チェロは、学識の深い、格言好きな紳士といった感じで、一座の引き締め役」と紹介している。

1756年生まれのモーツァルトは、その36年の生涯の中で、20曲余りの弦楽四重奏曲を作曲した。特に有名なのが、1784年28歳の時の作品、K458の「狩」変ロ長調だ。
これは交響曲の父、弦楽四重奏曲の父と呼ばれた、1732年生まれの父のようなハイドンの作品を手本にし、捧げられた、6つの弦楽四重奏曲K387ト長調、K421ト短調、K428変ホ長調、K464イ長調、K465ハ長調「不協和音」の一つである。それゆえに「ハイドン・セット」と呼ばれる。

1000曲近いモーツァルトの水先案内人として頼りにしているのが、井上太郎氏の「モーツァルトのいる部屋」(ちくま学芸文庫:1995年)である。
巻末の作品を一覧を紐解く時、どんな評論に出会えるのか、本当に楽しみな、ロングセラーである。

氏の「狩」評を紹介する。
6曲の中で最もポピュラー。明るく親しみやすいからであろう。
第1楽章はアレグロ。生き生きした主題で始まる。1点の曇りもない。心弾む音楽。
第2楽章はメヌエット。チャーミングな旋律で、誰にも好かれるであろう。
第3楽章のアダージョは、この局の中で最も深い表現を持ち、聞く者を感動させずには置かない。このあたりはベートーベンに強い影響を与えたのではなかろうか。
第4楽章はハイドン調の軽快な曲。その中に対位法の技術の見事な展開が見られる。爽やかなフィナーレである。


1982年録音のスメタナ四重奏団によるデジタル録音で聞く。少数楽器ゆえのクリアな音質は、まさにデジタルならでは。弦の美しさとふくよかな響き、そして、鍛え抜かれたアンサンブル。
1楽章8:35 2楽章4:13 3楽章6:59 4楽章6:11 30分も満たないが、みずみずしく美しい。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冬将軍と水菜大根サラダ | トップ | ブルックナー 5 映像のヨッフ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

music/classic」カテゴリの最新記事