残りの苗も捨てるに忍びずと、小鉢に放置した朝顔が、真っ先に花をつけたのだ。(写真)
土壌に恵まれないのに、蔓を家横の柵に絡ませて伸び、花を咲かせるとは、植物の命は強い。
妹が今年届けてくれた鉢と、私が植え替えした大きな鉢の花は、まだ咲く気配がない。朝夕、水やりをするたびに、花芽を確かめるのだが、その芽は小さい……。
昨夕、買い物の帰り、線路を跨ぎきったところ、Tさん宅に上がる法面に、緑の葉色も威勢よく、色とりどりの花が美しく咲いていた。
私は、「オシロイバナ」だと思い込んでいたのだが、Tさんは昔から「チョウセンアサガオ」と言っている、とのことだった。
私は、植物に疎い方なのでよく分からないが、ネットで両名の花を調べたところ、「オシロイバナ」に近いように思える。
ひとまず、「オシロイバナ」として、投稿しておくことにする。
花色の文様(絞り)が面白い。(写真)
この系統の花は、散歩道でもよく見かける。が、昨夕、見た花は、ことさら美しかった。「オシロイバナ」だとすれば、メキシコ原産で、花色は、紅色、白、黄、絞りなどがあるそうだ。
花の後には黒い大きな種子ができるという。その中には粉状の胚乳があり、それをつぶして、子供たちがお化粧ごっこに使うことから、この花の名はつけられたという。私には、その遊びの経験がないし、それほど身近な花だったような気もしない。
別名として、「ユウゲショウ(夕化粧)」というきれいな名前もあるようだ。
黒い実ができるかどうか、できたらその実の中を覗いてみたい。
お化粧用の粉に似たものが存在するかどうか……。
昨夕、夕翳る道を買い物に出かけた。
午前中は、ぼんやりと過ごし、午後は幸田露伴関係の書をとりとめもなく読み、ふっとわれに返って、食材の乏しくなっていることに思い至ったのだった。
<スタミナ、スタミナ! 夕ご飯くらい、きちんと食べないとな>と呟きながら、お店に向かったのだ。
家は少し高手にあるので西日をまともに受けていたが、国道に出ると、太陽は山の背に隠れ、歩道は陰になっていた。夕風が吹いて、蜩の鳴きやまぬ道は、妙に淋しい。
持ち重りしない程度の買い物をし、その朝も理由なく散歩をサボってしまったので、少し遠回りして帰ることにした。
田圃の道を通り、山陰本線の鉄路を跨いで、知人のTさん宅の傍を通った。
夕方の七時近くだったし、声をかけずに帰るつもりだった。が、偶然、Tさんが庭に居られ、つい仕事のお邪魔をしてしまった。
その庭で、不思議な植物を見つけた。Tさんも、正式な名前は分からない様子だった。
活け花にも使われ、花材として求めれば高値のする植物だと聞いた。
父の残した植物の本の『洋花』『和花』(講談社)は、<花の事典>とはなっているが、中を見ると、花の紹介と同時に、活け花のための指南の書ともなっている。活け花にも使われる花と聞いたので、帰途、あの本には出ているだろうな、と思った。
先刻、やっと本を開いてみると、予想通り載っていた。
Tさんが、「トウ(唐)」が付いていたようなと言われたとおり、その名は「フウセントウワタ(風船唐綿)」であった。別名「フウセンダマノキ(風船玉の木)」ともいうそうだ。
どうせ覚えられはしないが、学名は「ゴンフォカルプス・フルティコスス」の由。
花もかわいい。いくつもの花が寄り集まって咲き、白い花冠は少々反り返り気味になっていて、中心の淡紫色が目立つ。本によれば、それは副花冠なのだそうだ。
薄緑色の実は、まさに風船だ。
花から実への移ろいの様も見てみたい。小さな風船が、やがて膨らんでゆくのだろうか?
一度見たら忘れられない植物である。(写真 花と実)