4月が終わるというのに、旅日記が未整理のままだ。
旅から帰れば、日常茶飯が待っていて、なかなか整理に至らなかった。
以前は、これほどルーズではなかったように思う。
これも老いのなせる業か?
月が改まる前に、簡単に、旅の日記をまとめておこうと思う。
写真で辿る旅日記として。
眼の前に、京都タワーの見える部屋で、4泊した。
<ホテルグランヴィア京都>は、駅構内にあり、とても便利である。
京都を楽しむときには、最近は、ほとんどグランヴィアを利用している。
今回は、4月6日から9日まで。
今年の春は、全くスケジュールを立てずに出かけた。
体調のこともあり、無理をしないことを第一にして。
日常からの脱皮だけを目的に。
<4月6日>
1時前に京都に到着。
チェックインの後、昼食をとり、近回りをぶらついて来ようと思った時、突然の驟雨。
街歩きをあっさり諦め、ホテルにくつろぐ。
その後、7日から帰宅まで、申し分のない春日和に恵まれた。
<4月7日>
さて、と考え、初日の行き先として決めたのは、宇治の平等院。
鳳凰堂の、屋根の葺き替えや塗装の修理などが、この春完成。
内部拝観もできるようになっていたが、なにしろ2時間待ち。
根気がなく、<ミュージアム鳳凰館>を見学するにとどめた。
お庭歩き、と。
宇治川のほとりで、紫式部の像に逢う。
往時を偲び、長い長い物語に情熱を傾け、執筆に余念のなかった女性に思いをはせる。
京都に引き返し、毎年のことだが、祇園を歩く。
八坂神社にお参りし、円山公園の老桜に、今年も会う。
老木は、あるがままの姿で、枯淡の美しさを保っていた。
<4月8日>
嵯峨嵐山のトッロコ電車に乗る。
どこもかも、どうしてこんなに人が集まるのだろう?
老若男女、様々な人。
老人の割合が、比較的多そうだ。
外国の方も、相当に多い。
トイレに入ったところ、久しぶりに、中国語に接した。
トイレ使用についてのお願いが、中国語で記してあるのだった。
以前、独学で少々学んだことがあるので、そこに書いてある程度は理解できた。
トイレットペパー(衛生紙)の処理の仕方について、具体的に記してあった。
複雑な感想を抱く。
確かに、行くところごとに、中国の人は、実に多い。
言葉で、すぐ、その一団と分かる。
電車の切符を買うのにも、長い長い列。
乗りたければ、耐えるしかなく、しかも、乗車できるのは、2時間先。(事前に乗車券を求めておけば待つ必要はないのだったが、行き当たりばったりの旅には、こうした不都合も生じる。)
喫茶店で、軽食とコーヒーで、時間待ちをする。
待ち時間に比べれば、トロッコ電車の乗車時間は短い。
30分足らず。
わずか7・3キロの距離なのだから。
嵯峨から亀岡まで。
保津川渓谷と、その周辺の春の景色を眺めながら、木製の椅子に坐しての旅である。
亀岡から保津川下りを楽しむ人も多く、車窓に、その船を眺めたり。
帰りは終点の一つ前の駅・嵐山に下車。
竹林の里を歩いて、天龍寺へ向かった。
この春も、そのお庭の花を眺めて楽しむ。
<4月9日>
京都の春を楽しもうと思えば、選択に困るほどだ。
平安神宮に行ってもいいし、哲学の道を歩いてもいいし…などと考えていたところ、テレビの地方版が、<毘沙門堂の桜>を紹介していた。
山科駅からの所要時間は、タクシーで5分、徒歩で20分とのこと。
<毘沙門堂>には行ったことがない。
出かけてみよう、と思った。
山科の駅前で、タクシーを待った。
小さな列は、みな毘沙門堂に出かける人のようであった。
行き先を伝えると、運転手は、
「毘沙門堂? あんなところ、見るものありませんよ。醍醐寺はどうです?」
毘沙門堂に対し、失礼千万なことをおっしゃる。
行き先として選んだ私の意思も無視された形だ。
醍醐寺には、数度出かけている。
「とにかく毘沙門堂へお願いします」
と、話しているうちに、車は動かなくなった。
長い渋滞が続いているようだ。
「こんな調子だから、歩いたほうがましですよ」
と、運転手は儲けの乏しい仕事に気乗りしないらしい。
「歩きましょう」
と、下車して、そこまでの料金600円を支払った。
確かに車両のすれ違いはままならぬようで、歩行者もすいすいとは歩けない。
老いた身には、思いほかの急坂でもあった。
最後の石段を登るには、両手で手すりを持ち、身体を持ち上げなくてはならなかった。
宮島の弥山以来の難行苦行!?
でも、往復を歩けたし、途中、河畔に咲く菜の花と桜を同時に眺めることもできた。
おまけをもらった感じだ。
美しい桜に出会えたことに加え、完歩できた満足感もあった。
京都駅に引き返し、
「美術館「えき」KYOUTO」で、
<日本画にみる「さくら」 展 ― 横山大観から中島千波まで ― >を観る。
これも、とっさの思いつきで入った美術展だったが、十分楽しめた。
大方の日本人は、桜が好きなようだ。私も、大好きだし、日本画に描かれた桜も、それぞれにすばらしかった。
<4月10日>
買い物などして、帰途に就く。
最後に、折り畳み杖を使わずに済んだことを付記しておこう。